見出し画像

日本BLドラマ「ポルノグラファー」&「インディゴの気分」

主演:竹財輝之助、吉田宗洋、猪塚健太
『ポルノグラファー』2018年 全6話(1話約23分)
『インディゴの気分』2019年 全6話(1話約23分)
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=FODフジテレビ公式サイトより)
(2022年5月6日 リンク記事削除)

スゴイ・ジャパニーズBL!
って某サイトの日本BL特集のタイトルじゃないけれど(笑)、いやぁ、ずっと観たかった本作、日本のドラマなので45分X10話ぐらいあると思ってたら、半分の長さとわかってほぼ一気見!韓国BLにうつつを抜かしていたが、日本の作品もやはり捨てたもんじゃないぞ!

作家の苦悩を描く物語

本作の主人公は竹財輝之助演じる作家の木島理生りお。しかし、『ポルノグラファー』(以下“S1”)、『インディゴの気分』(以下“S2”)共に、もう一人の主人公のモノローグによってストーリーが描かれていく。

S1では、猪塚健太演じる大学生の久住春彦からみた木島との関係が描かれる。
久住は自転車で走っているときに、ぶつかってしまった木島に怪我を負わせてしまう。木島が右腕を骨折してしまい、利き手が使えなくなってしまったため、久住はお詫びとして執筆中の作品を口述筆記することにした。
その作品とはなんと官能小説で、久住は筆記しているうちにいろいろな妄想をしてしまい、だんだんと木島に惹かれていくのであった。

S2では、吉田宗洋演じる編集者の城戸士郎からみた木島との関係が描かれる。
舞台はS1より数年遡り、純文学作家としてデビューし、成功したものの、ちょっと浮かれて投資などにも手を出し失敗し、スランプ状態に陥っていた木島。その彼と大学時代のゼミで一緒だった城戸は、恩師のお葬式で再会した際にそんな状態にあることを知り、官能小説を書くことを勧めてみる。
木島は乗り気ではなかったが、城戸の策略で官能小説の大家である蒲生田がもうだ郁夫(大石吾朗演)の元へ弟子入りさせられ、自分のスランプに向き合うことになった。

BLの範疇を超えている物語

本作はとにかく構成がいろいろな意味で面白い。
まず、木島理生という作家が主人公であるにもかかわらず、彼の身近にいる人物、久住と城戸によって語られる物語であるという点。そしてこの二人はどうしようもなく木島に惹かれてしまい、久住はある意味ストレートに、城戸はいろいろと屈折しながらその想いを木島にぶつけていく。木島が何を、どう思っているのかは彼の口からはほとんど語られることはない。

そうでありながらも、二人が語ることにより、木島がとてもミステリアスかつ魅力的、それでいて性的にも色気がある人物像になっており、視聴者も思わず惚れてしまう、そんな不思議な魅力を持った作品になっている。

また、物語の芯は最初は純文学作家としてデビューしたものの、なかなか思うように書けなくなり、官能小説を書くようになる木島の心境の変化、さらに官能小説家としてのスランプについてである。
ただ、時系列の順番が逆転している。S1で先に官能小説家としての木島が描かれ、S2では数年遡って、まだ純文学作家としての彼についてであるにもかかわらず、これがまたなんとも言えず、説得力のある続き物となっていた。

S1が製作、放映されたときにはS2のことは決まっていなかったようなので、当時リアタイで視聴した人は別の感想を持っているかもしれないが、今こうして両作品を続けて観ると、こういう風にストーリーを分けるのも大いにありだと納得であった。

そしてBL的要素!本作はNCシーンがしっかり、豊富に入っているので、苦手な方は要注意かもしれない。『最短距離は回りくどくて、』ほどハードではないが、『消えた初恋』や『きのう何食べた?』などのキュンキュン&ほっこり系のテレビドラマとは完全に一線を画している。
しかし、物語の中で、特にS2での各シーンは進行上とても重要な部分なので、これを端折ってしまうわけにはいかないのである。
これはBLのラブストーリーというよりは、作家に焦点を当てた作品なのである。

官能小説って、日本ならでは?

本作(特にS1)で重要な役割を果たす官能小説。すっかり忘れていたが、そう言えば私も昔何冊か読んだことがある。なんか大企業の男性上司みたいなのが主人公で、秘書とか得意先とヤリまくっていたような。。。
とまあそれはおいといて(笑)、ウィキペディアによれば官能小説というのは「三人称で書かれることが多い」らしい。確かに、劇中で木島の口述は全て三人称であった。しかし、本作はほぼ久住と城戸の一人称、そして木島が最後にやっと仕上げた作品も一人称だった(らしい)。そんな人称の使い方も、本作のバランスとして面白いものだったかもしれない。

官能小説が一つのれっきとしたジャンルとして確立しており、なお、スランプにある作家の起死回生策になっているというのも、もしかしたら日本の出版業界の特徴なのかなとも思ったのだが、どうだろう?

それにしても竹財輝之助、初めて主演作を観たが、めちゃくちゃ色っぽくてびっくり。吉田宗洋と猪塚健太もとてもよかった。
本作にはまだ短いスピンオフが二つと、劇場版があるが、これらは個人的には視聴するか微妙。本作のうちでも、『インディゴの気分』があまりにも良かったので、このままの余韻をずっと味わっていたい感じである。

こちらは漫画原作者の丸木戸マキさんが書かれた記事。彼女からの視点も是非ご一読を!

(2022年5月6日 リンクしていた記事が削除されているため、リンクを外しました。)

主題歌は両作品とも鬼束ちひろの書き下ろし曲で、こちらはS2のエンディング『End of the world』のドラマバージョン♫ その他劇中のピアノ曲もどれもとてもいい。


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文