ヤリ○ンと呼ばれて
数ヶ月前のある昼下がり。
「あ〜チョコ食べたいな〜、チョコチョコチョコ!」と心の声を思い切り出しながら台所の戸棚をゴソゴソしておりました。
ふだん甘い物はあんまり食べない方なんだけど時折、発作的にチョコレートを食べたくなる時がある。
「あ〜チョコ食べたいな〜、チョコチョコチョコ!キットカット的なやつ!」と商品名まで発しながらゴソゴソしてみたが
ない。
そういう時に限ってチョコはない。
結果、戸棚にあった甘い系おやつはかりんとうだけ。
「かりんとうだけてかーい!!」
と、何の罪もないかりんとうに憎々しくツッコミを入れ、面倒臭さが勝って本命を買いに行くこともせず、荒んだ気持ちを持て余して過ごしたがその夜。
バイト帰りの次男ボー(16歳)が
「はい、これ」
つて。
なに?
つて。
見たら
キットカットォォォ!!
どしたんこれ。
「昼、言うてたやん。食べたいって」
え。
言うてたけど。
え。
聞いてたん。
え。
それで買ぉてきてくれたん。
「おん」
パキューン。
↑
ハート射抜かれた音。
その時、母は確信しました。
こいつ、モテよるな。
と。
こんなことサラッとでける男、モテるやろ。
オカンにこんなことでけるんやったら、可愛いガールズにはもっといろんなことしとるやろ。
思い返せば次男ボー、幼い頃からその片鱗はあった。
幼稚園の時、クラスのお母さんから
「うちの娘が、○○くん(次男ボーの名前)のこと、好きなんやて❤︎」
と教えてもらいまして。
早速それを本人に言うたわけですよ。
こんなんすぐ言うてまうねん(オカンあるある)。
「○○ちゃんがな〜、あんたのこと好きなんやって〜〜〜」
って。
そしたらニッコリ笑って、やつぁ言った。
「知ってる!」
知ってるん。
「知ってる!そやから俺、あいつのこと呼び捨てにしたってんねん!」
どんなマウント。
あン時も思ったんだっけ。
こいつ、モテよるな。
と。
だって
好きな男に呼び捨てにされるって、女のキュンツボ。
壁ドンも顎クイもこの流れですやんか。
女は上からこられたいのよね〜〜〜。
なんていう女心を幼稚園児で多分、本能的に知っていた次男ボー。
ちなみに、こちらは、次男ボーが小学生の時に描いた私の顔。
いや、どない見えとんねん!!
と言いながらニヤけてしまうのは、「お母さん」ではなく「えつこ」と書いてあるところ。
ほらね。
きっちりツボ押さえてるでしょ。
時は流れ。
やつは中学生になると早々に彼女デビューいたしまして。
もちろん本人から聞いたわけではありません。
母親が息子の恋愛事情をなにで知るかっつーと、そらもう
ママ友からです。
ママ友グループの中に、おっそろしく情報通な人が数人いる。
別名、工作員。
ってぐらい彼女たちの情報は精度キレッキレなんです。
サッカー部のTくんとバスケ部のAちゃんが付き合ってるとか、別れたとか、三角関係でモメてるとか、とにかく詳しい詳しい。
中にはツイッターで裏アカ作って、自分の娘と同じ中学生になりすまし、我が娘とはもちろん周囲の友達とも交流しながら逐一情報を吸い上げると言う強者もおりました。
震震震。
そうした情報の提供であり交換の場が、
日々のママ友ランチ会なのであります!!
おほほほほほ!!
あ〜こわ。
でね、何がいちばんこわいって、
私の知らないママ友グループの中で、我が息子がネタになってることです。
ある日、スーパーの野菜売り場で、顔見知りのお母さんに声をかけられました。
その人は、ママ友と呼ぶほどは親しくない人。
たまに喋るけど、喋るたびにイラッとする人。
だからできる限り距離おいてる人。
その人に捕まりたくないから、会った時は足を止めないで挨拶だけしてサッと通り過ぎる……と言う技を使ってたんですが、この日は油断してた。
キャベツの選抜に気をとられすぎていたかもしれない。
いきなり右肩後方から
「ひさしぶり〜〜〜」
ときた。
ぐわあ。
ひっ、ひさしぶり。
「元気してた〜〜〜ん?」
彼女は私の買い物カゴの中に素早く視線を走らせて(←イラッとポイント① 他人の買い物カゴの中を覗くのは、一部の場合を除いてマナー違反とみなす)
「最近どうしてんの〜〜〜〜?」(←イラッとポイント② どない答えちゅうねん。質問のセンスなさすぎるやろ)
と、隣に立つ。(←イラッとポイント③ 妙に距離が近いねん)
「聞いたで〜〜〜〜〜」
何を。
「○○くんって……」
はい、うちの次男が何でしょうか。
「女めっちゃいってるらしいやんか〜〜〜〜?」
出た。
失礼やろ。
人の息子つかまえて
「女めっちゃいってるらしいやんか〜〜〜〜?」
とはなんという言い草か。
そらね
こんな人に
「女めっちゃいってるらしいやんか〜〜〜〜?」
って言われるぐらい節操のないことしてる(であろう)息子が悪い。
けどこんな人に
「女めっちゃいってるらしいやんか〜〜〜〜?」
などと、下品な言葉で扱われる覚えはないのである。よしんば
「女めっちゃいってるらしいやんか〜〜〜〜」
やとしても……て、何回女めっちゃいってる言うねん。
このような公の場で。
息子よすまぬ。
しかし、彼女の言葉にムカッ腹の立った私は、
ちょっとあんた!
人の息子つかまえて
「女めっちゃいってる」って
どんな言い方やねん!!
失礼やろ!!
とか言うてもあかんねん。
こういう人には響かへんねん。
なぜなら無神経だから。
無神経な人って、正拳突き入って前歯折れてんのに気づかへんってこと、過去、夥しい数の母親たちと付き合ってきた経験から学んでいます。
で、とっさに言いました。
「そやねん。うちの息子、ヤリチンやねん」
「えっ、ヤ、ヤリ……?」
思わぬワードに彼女がキョドキョドなってる隙に、私はキャベツを抱えスタコラサッサーとその場を離れたのでありました。
息子よ、すまぬ。
よそのオバハンの前でヤリチン呼ばわりして。
あん時はしょうがなかったんだよぅ。
で、あんたの買ってくれたキットカット
食べるのもったいなくて大事に置いときすぎたわ。
今みたら溶けてひとつになってたわ。
それも、すまぬ。
でな、今頃食べてんねん。
……
溶けてても
やっぱおいしいな♪
キットカット♪
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