2021年、大晦日の夜。

各人出払い、家にいるのは私と長男だけ。

年越しそばいっしょに食べる？　

と聞けば

「おん」

と答える長男ボー（20歳）。

10代はいろいろややこしい時期でした。

学校は無意味で理不尽な世界。

到底、自分の居場所ではなかった。

感情がウーッとなってワーッとなって大型家具類が派手に倒れたりもしましたさ。

が、高校を卒業してから少しずつ表情が軟化し、話しかければ返事がかえってくるようになった。

暗いトンネルにわずかに光が差してきたのかな。

そんな長男のエピソードをまとめた「長男トンネル抜けたのかい？シリーズ」⏬⏬⏬お時間よければ周ってみてね。

長男と2人きりでご飯を食べるのなんていつぶりかしら。

いそいそとおそばを拵え食卓へ。　

いっただっきまーす。

っと。

さて、ここで大問題よ。

2人でいったいなに話す？？

向こうから話しを切り出すことはまずないから、最初の一手はこっちからよな。

脳内の『互いの共通項』の引き出しを片っ端から開け、話しをつなぐ。

じーちゃんの前立腺の調子が悪いこと

ばーちゃんの耳が遠くなったこと

秋に私がやらかした足のケガのこと……

あかん！！

身内の健康不良の話ししかしてへん！！

ｺﾎﾝ
それではですね

冬休みのバイトのシフトの確認と、年末年始のゴミの収集日の確認と……

あかん！！

ただの業務連絡やないか！！

しかも

こんだけネタ絞り出した段階でまだ

おそば半分以上残っとるがな！！

「お母さま。そんなにムリをして会話しようとしなくても良いのでは？？」

とのお声もあろうかと思います。

が、久方ぶりの母と息子、水入らずなのです。

なんとかこの時間をハートウォーミンにしたいじゃないの。

その時ピコン💡と閃いた。

あの話しは？？

長男が最近ハマってるサバゲーについて。

それそれそれ！ええネタあるやんか。

実は

長年にわたる筋金入りのインドアー（室内人）の彼が、最近、休日に出かけることが増えてきた。

なぜならサバゲーに行くからさ♪

いつも日中はおっそい時間まで寝てるのに、部屋もぬけの殻やん？と思ったら

サバゲー行ってました。

※出先からLINE入るパティーン

奈良とか

京都を駆け巡る。

最初、彼の部屋でエアガンを見つけた時は、ガチの銃やと思って気絶しそうになった。

撃たれる。

_:(´ཀ`」 ∠):

でもそれはガチ銃ではなく、サバゲー用のエアガンであり、バイト代をコツコツ貯めて買ったということがわかりました。

だから、ピコーン💡

サバゲーの話しぃようっと。

急いで脳内の『サバゲー』の引き出しを開けてみる。

サバゲー情報、スッカスカ。

が1個だけ『この前、可愛いらしいサバゲー女子がテレビに出ていた』という情報が。

その話しをすると、長男ボーの目がわずかにキランと輝きまして。

勢いづいてたたみかけるかーさん。

その女の子の名前なんやっけ。そや！確かリリアンっつってたわ。

「ちゃう、りりあんぬ」

りりあんぬ？……そー！りりあんぬ！！

てかあんた、今日初めて「おん」以外の単語言うたよね！？

さらに勢いづくかーさん、『りりあんぬ』を広げるべくがんばる。

りりあんぬってえらい綺麗な子ぉやったわ。

サバゲー男子やったらみな好きやろこんなもん♡あんたかて好きやろぉぉぉ？？♡

とかイジリ風味を足すの絶対NGの息子です。

お口チャック。

慎重に話しをつなぐ。

えーとえーと、あれやで

そん時のテレビでは、山下真司とサバゲーやってたで！

山下真司、70歳やいうてたわ！

70歳には見えへんわぁ。やっぱり元・刑事やからな〜〜〜えっ、山下真司しらんの？？ほな『太陽にほえろ！』は？？

慎重なわりに話しの広げ方をまちがい、道に迷う。

※『山下真司』の引き出しは情報そこそこ有

そっか〜あの女の子

りりあんぬっていう名前か〜。

……はっ、かーさん、さっきなんつった？

「リリアン」て！？www「リリアン」いうたらあれやんか、たかじんさんと仲良かったゲイバーのママさんやんか。

リリアン面白かったなあ〜えっ、リリアン知らんの？ていうか、えっ？えっ？たかじんも知らんの？

リリアンとたかじん2人そっくりやいうてさ、「リリアンよ〜」てモノマネしてさ、知らんの？そっか〜世代的に知らんかそうかそらしゃ〜ないな〜あっはっは〜〜〜

て、ワシの会話がもう
サバイバル。

※『リリアン』と『たかじん』の引き出しは情報パンパン

気を確かにもって話しをつなぐ。

ほで、あのエアガンってさ、弾は何使うん？

「BB弾」

BB弾。

急いで脳内の『BB弾』の引き出しを開ける。

こちらもひとつ情報が出てきました。

あれは長男が幼稚園の頃。

当時から彼は銃のおもちゃが好きで、空き箱には集めたBB弾がぎっちり入れてありました。

ある夜、長男といっしょに湯船につかっていた時のこと。突然

クシャン！！

と、くしゃみをした彼の鼻の孔から、ポロポロポロッと３つほどBB弾が飛び出したではありませんか。

ぎゃーーー！！なんじゃこりゃーーー！！なんでこんなん鼻に入ってたん！！？？

「自分で入れた」

ケロッとして言う長男。

なんでもBB弾を鼻に詰めて遊んでいたら、とれへんようになってそのままにしてたらしい。

そのまますな！！言わんかーい！！しかもこんなたくさんよう詰めたな！！

何事もなかったからよかったものの、ほんっまにあのときは焦ったわ……

などと思い出話しをしていたらふいに長男の口から

「ひゃっ」

と息が漏れて

「ひゃはははー」

という声が。

え。

ちょ。

もすかすて笑ってます？

「ひゃはははー」

笑ってました。

ウ

ウワーン！！

長男が笑ったーーー！！

「あったあった、そんなこと」←さらに文章をしゃべる

え、おぼえてんの？

「おん。なんであんなことしたんやろなあ（笑）BB弾鼻に入れて遊んでたら取れへんようになって、確か何日もそのままにしててん」←さらに長文をしゃべる

何日もてなんでやねん！！

とツッコむ言葉が、鼻の奥がキュンと詰まって

だんでぃちぼでだんでだでん！！

となってもうたんはしゃーない。

さて、おそばもそろそろ食べ終えた。

この会話を大団円で締めようではないか。

じゃあ新年の抱負言うとくわ

「おん」　

かーさん、2022年は

「おん」

サバゲー女子になりたいな♪♪

【暗転】

夜更けに一人、丼鉢を洗いながら思う。

調子に乗りすぎた。

せっかく開きかけた天岩戸を閉めてしまった。

うつむく私の目から、一筋の年越しそばが流れ落ちたのであった。

【SE】除夜の鐘

……は？目からそば？

【エピローグ】

本当の抱負。

2022年は、2人で話す時間がもう少し増えたらいいなと思う。

できるなら、あんたの笑てる顔もたまには見たいんや。

そのために、かーさん頑張って

サバゲーネタ増やすから。

りりあんぬには負けへんで！！

（了）