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「サッカーはサッカーボールでやるもの」と決め付けると「ボールは友だち」にならない

前回のこの「ヒント帳」では、小学校高学年の体育で、「バスケットボール」を行うなら、ボールは「ドッジボール」を使わせるべきではないかということを述べた。
そこで、今回は、小学校の体育でサッカーをゲームとして行う場合のボール選びについて考えをお伝えする。

結論を先に述べる。

「サッカーだからサッカーボール」という考えに拘るのは、間違いではないか。

中学年のサッカーはドッジボールがピッタリ

前回のバスケットボールに関しては、さすがに中学年の子供たちに対してバスケットボールを使用させている教師は存在しないだろうと考え、中学年については触れなかったが、考えてみれば、4年生では有り得なくもない。そこで、該当する先生に申し上げたい。すぐにおやめになった方がいい。どの子かが、きっと指の骨を折る。

サッカーでは、逆に、多くの中学年担当の教師が、体育器具室にあるサッカーボールをそのまま使わせているように思う。
「サッカーだからサッカーボールでやるものでしょう」
といったところか。

では、そのボールの大きさと重さはご存知だろうか。
学校に備えてあるサッカーボールの多くは、4号サイズだと思われる。
それは、以下の数値になる。
直径 20、5cm
重量 350~390g

これは、サッカースポーツ少年団で使われている人工皮革製のサッカーボールと、全く同じ大きさと重さなのである。
3年生や4年生は、まだまだサッカーに不慣れな子供が多い。
とりわけ女子にとって、このボールが扱いやすいものだろうか。
困難であることは明らかだろう。

ところで、サッカースポーツ少年団であっても、2年生までは、この4号サイズよりも一回り小さくて軽い3号サイズを使わせる。
この3号サイズに近いのが、学校にある「教育用ドッジボールの2号サイズ、中学年用」と言われているものだ。

中学年のサッカーの学習では、どのボールを使わせるべきか、はっきりしたのではないだろうか。

中学年は、「ドッジボールの2号サイズ」が、学習を効果的に進めると、私は思う。

高学年のサッカーはどのボールがよいか

では、高学年はどうだろうか。

やはり、ドッジボールがよいか。
だが、高学年用とされるドッジボールの3号は、サッカーボール4号と比較すると、重さがほぼ同じで、大きさは一回り大きいのである。
つまり、こちらの方が、サッカーボール4号よりも、子供にとっては扱いにくいだろう。
従って、どちらかを選択しなければならないならば、サッカーボール4号であろう。

だが、サッカーボール4号がドッジボールの3号よりは扱いやすいといっても、ボールを足で操作することに不慣れな子、とりわけ女子にとっては、適当であると私には思えない。
ゆえに私は、女子には、ドッジボールの2号サイズを使わせていた。
私は、男女別のチーム編成で学習を進めていた。
女子チームには、これぐらいの大きさと重さがちょうどよいと感じてきた。

盲信を捨ててねらいに迫る

さて、読者の皆様、特に学校教育に携わっている方々は、この主張についてどうお考えだろうか。

『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編』を見てみよう。
高学年の「E ボール運動 (1)知識及び技能」に、こう書かれている。

「ゴール型では、ボール操作とボールを持たないときの動きによって、簡易化されたゲームをすること。」

そして、「簡易化されたゲーム」について、次のように説明されている。

簡易化されたゲームとは、ルールや形式が一般化されたゲームを児童の発達の段階を踏まえ、実態に応じたボール操作で行うことができ、(中略)ボールその他の運動用具や設備などを修正し、児童が取り組みやすいように工夫したゲームをいう。

「ボール」を「修正」することで学習効果を高めようとする意識を、教師はもちたいと思う。

中学年のサッカーでは、ドッジボールの2号サイズを使用させる方が、より適切な工夫であり、高学年の女子においても、頭からサッカーボール4号を使わせるものだと決め付けない方がよいのではないだろうか。

時々、「ドッジボールは足で蹴ってはいけない。手で使うものだからだ」と言う教師に出会うことがある。
それならば、サッカーでは、ボールを手で操作してはいけないことになる。
バレーボールを足で蹴ってはいけないことになってしまう。

教師は、固定観念に縛られがちだ。
あるいは、もしかしたら、子供を言い含めるために、いや、「言い負かす」ために、強弁をふるうことを身体化するのかもしれない(自分を含めて)。

盲信を捨て、学習のねらいに立ち戻って考えるべきだろう。

教師が工夫をしてボール選びをしなくては、子供たちにとって「ボールは友だち」にならない。