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運動会徒競走 そのスタート指導 子供が「損」して遅くなっています!

 運動会では、徒競走を行う学年が多いと思います。
 そのスタートのさせ方についてです。
 運動会に限らず、日常の体育でのかけっこ、リレー(遊び)、短距離走など、「走」に関する全てのスタート指導に共通します。

 「位置について」「ヨーイ」「どん」の時に、子供にどの位置に足を置かせることが、適切な指導でしょうか。

その指導は、次の二つに分かれるはずです。

A: 
「位置について」で、スタートラインから一歩下がった位置に立つ。
「ヨーイ」で、片足を前に出す。足の先をスタートラインに合わせて構える。
「どん」で、地面を蹴って走り出す。

B
「位置について」で、スタートラインぎりぎりの位置に立つ。
「ヨーイ」で、片足を下げる。構える。
「どん」で、地面を蹴って走り出す。

二つのスタートの足の位置と動かし方

 さて、どちらが適切な指導でしょうか。

 「正解」は、Bです。
 Aはやらせてはいけません。
 また、ちゃんとした指導を受けていない子は、放っておくと、Aのスタートをしがちです。

 なぜ、Bでないといけないのかを説明します。

 それは、Aのスタートでは「一歩分の時間」遅れて損をする・速いスタートが切れないからです。

 Aのやり方で、「ヨーイ」と言われた時に、スタートラインぎりぎりの位置に出す前の足は、ほとんどの場合、「利き足」になるはずです。

 なぜなら、「利き足」とは、そういうものだからです。動き出そうとした時、先に出す足が「利き足」です。「利き足」は、もう一方の足、つまり「軸足」に比べて、動かしやすく、かつ速い動かし方ができます。だから、「ヨーイ」で、「利き足」が前に出てしまうのです。

 そして、次の「どん」の時に、どちらの足を一歩目として前に出すかというと、これも「利き足」です。動かしやすいからです。

 するとどうなるか、もうお分かりだと思います。
 もともと前に出ている足をさらに前に出そうとするので、ほとんど動かせません。靴半分くらい踏み出す程度がやっとのはずです。つまり、一歩分「たたら」を踏んだようになるのです。その後で、後ろにあった二歩目の軸足が、実質の一歩目として、前に出ます。一歩分時間が遅れて損をしたのです。バランスも少し崩れて、スタートの勢いが付きにくくもなります。

 逆に、Bでは、「ヨーイ」で下げたのは、「利き足」のはずです。動かしやすいからです。
 そして、「どん」で、地面を蹴って出した一歩目も、その下げた「利き足」のはずです。合図とともに、すぐに一歩目を踏み出せたことになります。

 だから、Bのやり方を指導するべきなのです。

 しかし、Aのスタート指導は、<私の周りでは、>かつてずっと行われていた気がします。少なくとも平成の中頃までは、「一般的」な指導だったのではないでしょうか。もしくは、そんなことまで考えていなかったという教師が、多かったのかもしれません。

 最近は、Bの指導が広まりつつあると認識していますが、皆さんの周りはどうでしょうか。
 とっくにBで指導していたというなら、今回の記事は、無用でしたね。

 ところで、「利き足」を意識させ、上記の原理を指導した上で、Aのスタートを行わせるというなら、それは問題ないでしょう。その場合は、前に出す足は「軸足」でなくてはいけません。しかし、「利き足が…」とか、「軸足がとか…」の指導をしても、子供にはなかなか伝わらないと思います。
 だから、Bの指導をすればいいのです。子供は、自然に、気持ちよく「利き足スタート」をすることができます。

 ただし、高学年の場合、「利き足」そのものについての指導は、必要だと思います。
 走り幅跳びや走り高跳びの踏切指導があるからです。
 また、6年生に対しては、中学校でのクラウチングスタートにつなげるために、「利き足を下げて」スタートすることを理解させることは、意味があると思われます。