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ハードル学習はこのアイデアで子供の「恐怖感」をクリア!

体育では、子供の学習を阻害する要因の一つに、子供が教材に対して感じる「恐怖感」が挙げられる。

水泳学習で子供が水に対して感じる「怖さ」は、その典型である。
跳び箱への激突や鉄棒からの落下、また走り幅跳びの着地に不安や恐怖を感じる子も多い。

ハードル学習もその一つである。
リズミカルにハードルをまたぎ越す(ハードルは、「またぎ越す」ものであり、「跳び越える」ものではありません)気持ちよさを感じ取らせたいと、いくら教師が願っても、ハードルに引っ掛かり転倒する恐怖から、上方向に体を持ち上げて「跳び越す」ため、ブレーキが掛かってリズムに乗れなくなる子が少なくない。

学習のねらいから考えて、ハードルの高さは最も低くするのだが、そうしても「怖い」のである。

指導経験のある教師なら誰でも感じていることだろうし、教師でなくても自分の体育での学習経験から首肯される方が多いだろう。

「足が当たっても、痛くなく、転倒をしないで済むハードルがあればいいな。」
「ハードルの板の部分が、足が当たった時に二つに分かれるハードルがあればいいのに。」
そんな思いをもっていた方がたくさんいるなずだ。

そんなハードルが………あるのである。


体育主任は今すぐ「観音開きのハードル」の購入を!

十年ほど前からだろうか。

白と黒で交互に塗られたあの板の部分が、プラスチックのような柔らかい素材でできていて、真ん中で二つに分かれるハードルが、ちゃんと今はあるのだ。

数社の体育教材メーカーが販売している。

私の記憶では、女子陸上短距離界で長くエースであった福島千里氏が、選手時代にコーチとともに練習用に開発したということである。

私が勤務していた小学校では、この「観音開きのハードル」を購入してもらってから、子供たちの恐怖心がほとんど取り除かれ、「低く」「スピードを落とさず」にハードルをまたぎ越そうとする子が激増した。
つまり、学習を展開する準備が整ったわけである。

もし、このハードルがないという学校があれば、今すぐ体育主任が購入手続きを進めるべきだ。

もちろん、一度に全てを購入することは難しいだろうから、数年掛けて必要台数を揃えればいい。

それは何台ぐらいだろうか。

教師は、子供の体力や技能に合わせてハードル間の距離の異なるコースを幾つか設定するはずだ。

私の場合は、高学年なら、多くの場合インターバルを5m、5.5m、6m、6.5m、の4コース用意した。
子供の技能の向上とともに、7mコースを特設したこともあった。

そして、距離は50mが適切だと考えるので、各コースに4台のハードルを並べたいため、最低で16台は必要だということになる。

全台数揃うまでは、ひとまず購入できた「観音開きのハードル」を、各コースの第1ハードルに設置するとよい。

子供がスタートしてからスピードに乗れるようにするための工夫である。
スタートしてから第1ハードルをまたぎ越すまでの局面は、学習のポイントの一つである。

逆さハードルにゴムを張って

「でも、そうすると結局2台目以降からスピードが落ちてしまう」というのであれば、逆さハードルにゴムを張るとよい。

もちろん、「観音開きのハードル」がすぐに購入できないという場合も、逆さハードルにゴムを張った物を使うとよい。

「逆さハードル」とは、言葉通り、ハードルを逆さにして「脚」が上に向くように置いた状態のハードルだ。

高さは、最も低い状態にして普通にハードルを置いた時の高さよりも、少し低くなる。

その脚に幅広のゴムを張るのである。

ゴムが子供から少し見にくいというデメリットがあり、また、「引っ掛かる恐怖」を全て拭うことはできないのだが、それでも、「怖さ」は減少する。

「逆さハードル」の二つの効果

さらに、逆さハードルには二つの効果がある。

一つめが、板の部分を手前に来るように置くことによって、子供たちはその板の部分を踏まないように踏み切るため、「遠くから踏み切って近くに下りる」という、スピードをできる限り落とさないようにハードルをまたぎ越すための重要な技能の一つに自然に取り組めるのである。

二つめの効果は、子供が自分に合ったコースを選ぶ時に発揮される。

私の場合は、ハードルの間隔を変えた4つのコースを用意することを先に述べた。

この4つのコースの中から、自分に合ったコース、すなわちハードルが障害物として並べてあっても、できる限り50m走と同じようにスピードを落とさずにリズミカルに走れる(これが、ハードル学習の目当てになる!)インターバルコースを選ぶ時に、ハードルを全て逆さに置くのである。

この段階ではゴムは付けないので、障害物としての抵抗度がかなり下がる。

そのため、子供たちは、かなりリズミカルに速く走り越すことができる

そうして、それぞれのコースを試して走り、最もリズミカルに(例えば3歩のリズムで)、そして速くまたぎ越して走り抜けられるコースを、自分に最も合ったコースとして子供に選択させるのである。

ちなみに、コースが決まった次の時間は、そのコースで今度はハードルを立てて走らせてみる。

すると、途端に「走りにくい」と子供は感じる。

そこで、「なぜ、走りにくくなるのか」「どうしたらスピードが落ちないようにハードルを超えて走れるのか」を追究していく学習が始まるのである。