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外国人に「工場を見学させてください」と言われて困ったこと3選

土佐刃物や新潟三条には遠く及ばないもののド田舎の加美町にも外国人の方から「見学させてください」という要望はそれなりにありました。トルコ、中国、英国、米国、フィリピンの方々をコロナ前は案内しました。

言葉の問題については、さほど困ったことはなかったのですが、私の英語力が低かったのと相まって独特のアクセントで話すトルコ人バイヤーとの会話には難儀した記憶があります。

アメリカ在住の中国の方がきたときは、彼らは英語が話せたので問題なくコミュニケーションも取れました。こちらの方は今でも交流しており、バーボンをもらったり、私がお米のひとめぼれを贈ったりしています。

また、工場見学どころか体験させてくれというイギリス人の方もいました。包丁作りが趣味らしく独学で包丁を作っていた方です。しかし、どうにも日本の包丁のような切れ味に仕上げることができなくて、教えを乞いたいとのことで加美町まで来ました。

彼の場合はとても真剣でお金を払うから3日間見学させてくれというのです。最初は石川さんもしぶっていましたが、彼の熱意にほだされ了承しました。

正直なところ、石川さんは英語が話せませんから、会話が成立していなくて満足できなかったんじゃないかと不安でしたが、イギリスの方がすごい研究熱心で近くで作り方を見て、石川さんの身振り手振りの説明でもだいたい分かるということでした。彼は今はイギリスに戻り好きな包丁を毎日作っています。


アンドリューさん

さて、こうしていろいろな方が加美町にやってきていたのですが、工場見学以上に困ったことが3つほどあります。

1:ホテルが無い。
2:他の観光地に案内できない。
3:あまり良い顔をされない。

1:ホテルが無い。

中国や台湾などの近い国から来る観光客と違い、トルコ、アメリカ、イギリスなどはかなり遠くから時間と旅費をかけて石川刃物の見学に来ています。

しかし、残念ながら彼らに紹介できるようなホテルが近くにはありません。「いやいや、あるでしょ」と思われるでしょうけど、逆の立場になって考えてみてください。

もし、私達がイギリスとかトルコとかけっこうな距離の離れた外国にいったとき、どういうホテルに泊まってどういう食事を食べたいですか? きっと出張のビジネスパーソンが使っているようなホテルではないはずです。

彼らもとうぜん「せっかく日本まできたんだから」と非日常の体験を欲しがっています。残念なことに加美町の豊かな自然風景を生かした宿泊施設は無いので、おすすめできる場所がありません。(旧宮崎町の大森温泉あたりに古民家の温泉宿でもあったら最高だったのですが)

まぁそれでも一応来た方々にはこういうホテルが加美町や大崎市にはあると紹介はしましたけど、やっぱりみんな仙台のほうに戻っていきます。わざわざ電車も無い加美町まできて石川刃物だけ見て帰るってとてももったいないですよね。

個人的な意見としては、私はアレックス・カー氏が提唱する分散型観光が加美町に適していると思っています。具体的には下記の通りです。石山町長ぜひご検討を(笑)

分散型ホテル:街全体を1つの舞台と考えて複数の空き家を宿泊施設にし、村全体でひとつのホテルとして機能させる形態です。ホテル以外にも、レセプション、朝食用カフェ、レストラン、お土産売り場などを点在させ、宿泊客は村人にまじってそれらを回ることができます。
大型観光バスの廃止:徒歩で散策しながら目的地へ行くことによって、町にお金をもたらすことができます。歩くことでふれあいや発見があり、売買が成り立ち、それが観光になるのです。これによって町の活性化が図られます。

彼の講演の動画があるのでよろしければどうぞ(日本語訳ありますので字幕ボタンをオンにしてください)

https://youtu.be/kLRanIhp2jg?si=hi2CRNaIeBJePjSo

2:他の観光地に案内できない。

私の知人にはアウトドア好きの外国人が多いのでよくわかるのですが、見学のついでに「どこかいい場所ありませんか?」と言われても「あるけど、そこへいくのにどう説明すればいいのか・・・」という場所がほとんどです。

例えば、やくらいガーデンのような花いっぱいの施設は外国人にとってとても魅力です。あまり花に興味がない男性は知らないと思いますが、仙台のみちのく湖畔公園、せんだい農業園芸センターなどは外国人もよく見かけます。やくらいガーデンの英語の口コミを見ても「どうやっていけばいいのかわからない」「行きたいけどアクセスの手段がない」といった書き込みが多いです。

その他にも加美町のキャンプ場についても、とてもじゃないですが、外国人に説明できる状況にはありません。千古の森キャンプ場などは野鳥もたくさんいるし、いろいろな植物も見ることが出来る素晴らしい場所です。アウトドアが好きな外国人にとってはとても垂涎ものの場所なのですが、いかんせん日本語のパンフレットさえないですから、外国人に言葉だけで説明するのも少し骨が折れます。

簡単に案内できる場所としては、酒蔵があります。旧中新田町という非常に小さい町に酒蔵が3つもあること自体とても珍しいことだと思います。お酒を飲まない人はわからないと思いますが、加美町の3つの酒蔵(中勇酒造、田中酒造、山和酒造)はどの蔵も一級品技術を持っています。

中勇酒造さんは全量限定吸水と呼ばれる管理手法で洗米と浸漬を行っています。これはとても手間がかかる作業です。

山和酒造さんはブレンドという新しい試みもされてる酒造さんです。ワインやウイスキーなんかはブレンドって当たり前に売っているのですが、日本酒同士をブレンドさせたものってほとんどありません。吟醸も純米も1つの樽のものを瓶詰めしたものです。

外国人のとくにウィスキーなどを好まれる方はこうしたブレンデッドと生一本の違いなどを味比べするのが好きな方が多いので、おもてなしの酒としても重宝されると思います。

田中酒造さんは生酛造りを行っている酒蔵です。生酛造りは江戸時代から続く伝統的な製法ですが、近年、この製法を守り続けている蔵元は非常に少なくなっています。生酛造りは稲作で言えば、手刈り、天日干しのような製法で手間も時間もかかります。

どの蔵も非常にレベルの高い技術を持っており、お酒が好きな外国人なら必ずお気に入りの1本が見つかると思います。私が酒蔵をおすすめする理由は海外にお酒を発送することが難しいうえに関税も高く、生産量が多くない酒蔵のうまい日本酒は海外ではまず滅多にお目にかかれないからです。
(ちなみにどの蔵の酒も色麻町の旨い地酒 荒井酒店で買えます)


3:あまり良い顔をされない。

正直なところ、外国人の方にも加美町や大崎市のいろいろなところへ行ってほしいのですが、良い顔をされない場合も多いです。滅多に見ることのない外国人ですから、気持ちは分かりますが、外国人というだけで露骨にジロジロ見る方もいらっしゃいます。

ご飯を食べにいったとき、スーパーマーケットを案内したとき、あるいはとてもちょっとしたことですが、素晴らしい柿の木を持っているお家を眺めていたとき、素晴らしい庭を持ちの家をみたいとき、公園を散歩しているときなど、私でさえも嫌な感じだな~と思ったことが多々あります。

彼らは何も害を与えようとしているわけでもなく、なにか迷惑をかけようとしているわけでもなく、ただ心から素敵だな、面白いなと思って見て回っているだけです。

数年前に知り合った黒人女性の場合は、加美町も案内したことがありますが、田舎での生活は彼女には辛かったらしく「視線が辛い」と行って都会へ引っ越していきました。

我々としてもせっかく加美町にまで来ていただいたのだから、良い思いをして欲しいという気持ちがある一方で、田舎は「村社会」ということをうまく説明できず現在に至ります。

今現在は加美町の小中学校にもALTの先生がいますし、若い世代が中心となる頃にはそうしたことも改善されているのではないかと思っています。

さて、今日は外国人に見学に行きたいと言われて困ったこと3選をお伝えしました。あれれ? 工場見学の話がまったくないぞ?と思われる方もいるでしょう。そうなんです。意外に工場見学に現場に来てもらって困ったことって特にないんですよね。

というのもわざわざ加美町に来るほどの人たちですから、それなりに包丁のことは知っていますから、改めて説明することもさほどないんですね。しいて言えば、工場には扇風機しかないので夏の見学は暑すぎて勘弁してほしいというくらいでしょうか。

それでは、また次回。

書き手:遠藤


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