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試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(天皇杯決勝・柏レイソル戦)

12月9日は国立競技場で第103回天皇杯決勝です。相手は柏レイソル。

 タイトルのかかった大一番を迎えました。今季のリーグは優勝争いを演じることなく8位で終了。ルヴァンカップはグループリーグ敗退と、どちらのタイトルも手が届きそうな距離まで辿り着かずに幕を閉じています。

 しかし、この天皇杯は決勝に舞台まで勝ち進みました。あと一つ勝てば、天皇杯制覇です。ならば、自分たちの力を信じて臨むべきでしょう。百戦錬磨のベテランGKチョン・ソンリョンは胸を張ります。

「ここまで来たのは僕らの力だと思います。優勝経験もあるので、この経験を発揮できるように準備していきたい」

 天皇杯決勝の舞台は、川崎フロンターレにとって3度目になります。
最初は2016年度(17年元日)、2回目は2020年度(21年元日)です。特に初優勝となった前回2020年度の決勝は、バンディエラである中村憲剛さんの現役ラストゲームだったので、記憶に残っている方も多いかもしれませんね。

 そして、ふと思い出したことがあります。
前回(2020年度)の天皇杯決勝を控えたオンライン囲み取材でのことです。この時にその4年前(つまり2016年度)の天皇杯決勝の記憶を鬼木達監督に尋ねたんです。

 というのも、当時の川崎フロンターレの監督は風間八宏監督でした。この2016年度の天皇杯決勝戦は、風間監督のラストゲームであり、言い換えると、鬼木さんがコーチとして臨んだ最後の試合でもありました。

この時の決勝は延長戦までもつれた末に、1-2で鹿島に敗れています。2017年元日の出来事です。そして鬼木監督は、このチームを引き継いで2017年シーズンにリーグ初優勝を成し遂げたわけです。

 あの元日決勝を経て、自分が監督になる際に、チームに何が足りなくて、何を埋めようと思ったのか。コーチとして戦った2017 年元日の天皇杯決勝の記憶を聞いたんですね。そこに鬼木イズムが表現されていると思ったからです。

 鬼木監督は、あの時にこう話してくれました。

「やり続けられるかどうか、戦い続けられるかどうかですよね。あとは一瞬の隙のところ。そういうものは、ある意味、あの試合に限らず、ずっと(チームに)感じていたものでもありました。特にああいう勝負強いチームにやったときは、隙のところや我慢強さの部分が顕著に現れる。そこは自分が(監督就任の)一年目から言い続けてきています。そこを大事にしながら、(2021年の)元日も戦いたいと思います」

 つまり、鬼木監督のチームの作りの根底になったのは、「隙を見せない」、「我慢強さ」という部分を埋める側面だったと言えるかもしれません。ある意味、そこを埋めたからこそ川崎フロンターレはこれだけのタイトルを取ることができたと思いますし、それは鬼木監督の功績です。

 そして、2021年元日のあの初優勝から約3年が経とうとしています。
迎える2023年の天皇杯決勝。現在の川崎フロンターレには、あの時の優勝の味を知る選手達もいますし、ファイナルの舞台を初めて経験する選手達もいます。

現在キャプテンマークを巻いている橘田健人は、当時まだ入団前の大学4年生です。川崎が勝つんだろうなと思いながら、テレビ観戦していたそうです。そんな彼が優勝後に天皇杯を掲げたら、それもまたクラブの新しい歴史です。

 歴史といえば、この人も。
脇坂泰斗は2019年のルヴァンカップ決勝、2020年度の天皇杯決勝と、プロになってから出場した2度のカップ戦ファイナルはどちらも優勝しています。

そして今回は、自身にとって3度目となるカップ戦ファイナルの舞台です。

今シーズンは、チームで唯一ベストイレブンを受賞しました。
現在のフロンターレは脇坂泰斗のチームと言っても過言でありません。言い換えると、過去2回と比べると、今回はチームの勝敗を背負う存在として決勝のピッチに立ちます。

過去2回の決勝と比べて、どんな心境の変化があるのか。決勝戦前のオンラインで尋ねてみました。

「もちろん自分の年齢だったり、チームでの立ち位置っていうのは変わっているので、今までの決勝戦とは少し違った感覚はあります。でも、みんなで勝ち進んできたことには変わりないので、タイトルを獲りたい思いは変わらないです。冷静な気持ちで挑めているのは、自分が成長した証かなと感じてます」

前回の天皇杯決勝の舞台となった国立で、先代の14番である中村憲剛さんは、現役生活を終えてユニフォームを脱ぎました。その14番を継いだ脇坂泰斗として、天皇杯のタイトルを噛み締めて欲しいですね。

タイトル獲得に向けて、語気を強めます。

「2年連続無冠はあってはならないと思います。フロンターレがJリーグを引っ張っていく存在を目指してる以上、タイトルが絶対に必要だと思っています」

では、決勝戦の見どころを詳しく語っていきたいと思います。ここからが本文です。

なお直近のリーグ最終節(サガン鳥栖戦)のレビューはこちらです。

ぜひ試合前に読んで、見どころを整理つつ、気持ちを高ぶらせてください。では、スタート!!


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