宮崎産マンゴー

宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載6】

4.「太陽のタマゴ」ネーミング商標登録


「太陽のタマゴ」の商標登録日は、1999年(平成11年)7月23日。商標登録出願日は、1998年(平成10年)4月15日。商標権利者は「宮崎県経済農業協同組合連合会」となっている。


宮崎産マンゴー栽培開始は1985年、初出荷は1988年。1998年に出願しており、宮崎県では栽培開始からわずか十年余りで県産マンゴーのブランド化を図ろうとしていることがよく分る。
沖縄産マンゴーのブランド名「美らマンゴー」の商標登録日は2012(平成24年)4月27日、出願日2012(平成24年)2月16日。商標権利者は「沖縄県」となっている。


宮崎県から14年(商標出願日で比較)も遅れてブランド名を決定したことになる。


先ほど指摘したように、市場での評価格基準が「太陽のタマゴ」になってしまっているので、「美らマンゴー」でブランディングしようとしてもなかなかトップブランドになるのは難しい。


「太陽のタマゴ」「美らマンゴー」のブランド名を分析してみると「太陽のタマゴ」はネーミングとして優れていることがわかる。
「太陽のタマゴ」の由来は、恐竜のタマゴに似ており、炎のような赤い色が太陽の国・宮崎にふさわしい名称だったことから公募で採用された。確かにマンゴーは恐竜の卵に似ており「太陽」は南国らしいイメージで、分かりやすく語呂が良いので覚えやすい秀逸なネーミングと言って良い。
もう一つ宮崎県のネーミングで素晴らしいのは「完熟マンゴー」というサブブランドネームがつけられているということだ。

◎完熟マンゴー「太陽のタマゴ」

サブブランドネーム「完熟マンゴー」は樹上で完熟させるコンセプトでもあり宮崎産マンゴーの独自性でもある。果皮に貼られるシールにも「太陽のたまご」の下に「完熟マンゴー」のシールが貼られており、消費者にとっても非常に分かりやすい表現になっている。
一方、沖縄の「美らマンゴー」は悪くはないが「美ら」は沖縄の観光名称には多く使われており、「沖縄」ということはイメージできるものの一般的で独自性がない。完熟マンゴー「太陽のタマゴ」と比較するとネーミングとしては弱い印象を受ける。

【三つのネーミングポイント】
◎覚えやすい(長期間記憶)
◎語呂がいい(響き、テンポ)
◎内容、中身が想像できる

よほど記憶力が抜群の人は除くが、一般消費者は新しい店舗名、商品名を一発で覚えない。定番商品でも正確な商品名を言える人は少ない。パッケージデザインを見れば「それそれ」と言えるが「○○メーカーの」「赤いパッケージの」というくらい。例えば「宅急便」はクロネコヤマトの商標で「宅配便」が正式名称。宅配便をおもわず「宅急便」と呼んでしまうのは、宅配便を初めて事業化したのがクロネコヤマトだったので「宅急便」の印象が強く宅配便を「宅急便」と記憶してしまっている人が多いからだ。


「覚えやすい」「語呂がいい」「中身が想像できる」ネーミング、キャッチコピーが必要である。「覚えにくい」「語呂が悪い」「中身が想像できない」のであれば、よほど興味があれば別だが選択肢からはじかれる。


「覚えやすいブランド名」は長期間記憶に残る。記憶に長期間残ると言うことは「覚えやすいブランド名」に長期間接触していることになる。長期間接触することにより「覚えやすいブランド名」は好感度が増す心理効果がある。


米国心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した「単純接触効果」は接触回数が多ければ好感度が高くなる心理効果。
「覚えやすいブランド名」は長期間記憶に残るため長期間接触していることになる。接触回数が増えるため「単純接触効果」により好感度が増していく。


完熟マンゴー「太陽のタマゴ」は印象に残り覚えやすい。つまり「単純接触効果」により好感度が高くなるネーミングということになり、心理的にも優れていると評価できる。

→連載7につづく


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