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『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか』(ジョン・ムーア)ブックレビュー

前回読んだ『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』でスタバの経営理念に興味を持ち、スタバ繋がりでこの本を読んでみた。この2冊、本当に心が洗われた。読んで以降、自分の中で仕事や人との接し方についての明確なベクトルが定まったような気がして、それに紐づいて会社の中の目指すべき人も定まって、なんだかピタリピタリとピースが一致していくような快感があった。
ハワード・シュルツはスタバを立ち上げ、コーヒーを単なる『目覚まし飲料』から『楽しむ・くつろぐもの』に概念を変えた人物。その奥底にあった信念は、『「物を売る」のではなく「人々の生活に潤いを与える」。いわゆる本の中で出てくる『「ニーズ」ではなく「ウォンツ」を満たす』、だ。第1章マーケティング&ブランディング、第2章サービス、第3章人材育成という構成も非常に読みやすかった。


第1章:マーケティング&ブランディング

ブランディングは評判管理であり、目的を実行すれば必然的に得られる(P43)。
したがって細部へのこだわりがなによりのマーケティングであり、テレビCMでみせかけの評判づくりをするより実際にお客様に体験(よさを実感)してもらうことを優先している(P25)
こだわる部分には手間やコストをいとわない(P32)。『ORの抑圧』ではなく『ANDの才能』を優先し、ロイヤリティを作るべしbyジェームズコリンズ(P33)
※ORの抑圧・・・「A・Bどちらかはできるが両方はできない」という手間やコストを優先する思考
 ANDの才能・・・「A・Bどちらもかなえるにはどうすればいいか」というこだわる価値の実現を優先する思考
「低価格は名案を思いつけないマーケターの最後の手段」byセス・ゴーディン(P59)
最高になるから、結果的に最大になる。(最初から最大を目指すのは間違い。)(P77)
マーケティングのこだわりは①誠実で信頼できる②気分を喚起させる③他社に触れない④従業員のコミットメントを高める⑤約束を守る(=店舗で提供できていないような、絵に描いたような写真を広告に使わない。)⑥お客様のインテリジェンスを尊重する(=『グランデ』などの専門用語を敢えて学んで頂き、共通言語を持つことで一体感を生む)
注目されたいなら注目に値するものでなければならない(P106)
シグモイドカーブではダビデ(中小企業)はゴリアテ(大企業)になったあとやがて廃れる。だから常に挑戦者の立場をとるべし(P116)

→目指すべき道(=『コーヒーを通じて人々の生活を豊かにする』。『コーヒーを売って利益を伸ばす』、ではない。)が明確であるから、そこに必要な店舗づくりやコーヒーのクオリティへの探求心が衰えず、結果的に価格が高めでも自然にお客様が寄ってくる仕組みになっている。。。凄い。。。

第2章:サービス

ニーズ(「~~がほしい」)ではなくウォンツ(「自分の生活を豊かにしたい」という願望)を満たすことが重要。ニーズは必要最低限で合理的だが面白みがないのに対し、ウォンツは感情を満たしワクワクさせる(P130)
サービスマニュアルはないが、根底にあるのは①「きっぱりとYESという」(=お客様の要望が『無理なこと』ではなく『できること』に意識が変わる)②「接する・気づく・対応する」の2つ。(P135)
ロイヤリティはコーヒー自体よりも従業員や店舗とのふれあいから得られる(P153)ため、それが味気なくなるリスクをはらむハイテク化については顧客のエクスペリエンスが向上するかを軸に導入を検討する(P160)
とにかく人ありき、『ビジネスに人間味を持たせる』ことが重要(P161)
旅行者は土産を持ち帰り、探検家は土産話を持ち帰る(P182)。スタバではお客様を探検家としてとらえ、店内で暮らしに深みを与える体験を提供する。

第3章:人材育成


各自で考え裁量を持つという企業文化がある。①ビジョンの共有②従業員同士の交流③適材確保/不適当人材の迅速解雇が大切(P206)
普通以上に従業員を大切にすればビジネスはうまくいく(P214)
サーバメントリーダーシップ(=リーダーは下につく者の奉仕者となる)ことが重要。ポイントは①共感②傾聴③誠実(P228)
本当の上司はお客様(P269)

細かいサービスマニュアルがない中で明確な指針があり社内に浸透させているからこそ、裁量権を持った従業員たちはその場その場で考え人間味のあるサービスが実現できているのだろう。。。

P279にはそこまでに著された珠玉の名文句がおさらいとばかりに列挙されていて鳥肌が立った。
全企業がスタバみたいになるのは難しいだろうけども、「安さ」「手軽さ」「効率の良さ」だけを求める企業よりも、こうした生活に潤いを与えるようなものを目的とした企業が増えると、世の中はもっと楽しくなるんだろうなと思った。
僕も、芯を持った社会人でいよう。

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