見出し画像

交通事故シリーズ第5弾『一括請求』とは


交通事故シリーズ早くも5つ目の記事になりました。

これが2021年、最後のnoteとなります。


接骨院で交通事故の患者さんの治療をするためには、保険会社との連絡、連携は必須です。

『この〇〇さんは自賠一括対応でお願いします。』
『この〇〇さんはジンショウで健保一括対応でお願いします。』

この文章を見て?マークが浮かんでしまったあなたは間違いなく知識不足です。

保険会社はこの電話でのやり取りで『〇〇接骨院の先生は無知だな』とレッテルを貼り、その保険会社からの紹介は一切来なくなることでしょう。

保険会社も大切なお客さんを無知のところに紹介なんてしたくないはずです。

そして忙しい保険会社の担当も『それ何のことですか?』なんて言われても相手にしてくれません。

知識武装をして保険会社に信頼される接骨院の先生を目指しましょう。

それでは解説していきます。


1、損害賠償の原則


まずはここから解説します。

損害賠償の原則は『後払い』です。

交通事故による被害者は病院や接骨院に行き自己負担で治療費を支払います。

通院が終了した時点で損害額となる治療費の総額などを加害者に伝え、加害者は被害者が支払った領収書などを調査して通院費用を被害者に支払います。

ですが、

この原則を貫くことで不都合が発生します。

治療が長期化することも稀ではない交通事故では被害者の治療費の持ち出しが多くなりすぎると通院を控えなければいけないケースが出てきたり、

過失割合が0:10の被害者が治療費を支払う負担を負うなどの、望ましくない不都合が発生してしまいます。

また被害者には自賠責保険に請求して賠償金を回収する『直接請求』という方法もありますが、

手続きが煩雑で手間がかかり、支払額も必ずしも満額ではないことから十分な解決とはいかないケースが生じます。

こういった不都合な事案への考慮もあり、加害者側の保険会社が治療費を支払う『一括払い』という扱いが取られています。


2、一括払いは『サービス』扱い


一括払いの『一括』とは、自賠責保険の保険金任意保険対人賠償の保険金任意保険会社が『一括して支払う』という意味です。

一括払いをした保険会社は、被害者に自賠責保険分を立て替えて支払い、後に自賠責保険会社から回収する流れとなります。

こうすることで被害者は治療費の心配が無く、治療に専念することが出来ます。

ここで理解しておきたいのは、この一括払いは任意保険会社に義務付けられたものではないということです。

損害賠償実務の原則からすると例外的な扱いとなり、裁判所判断による法的な位置付けは『サービス』とされます。

このため一括払いには以下のような特徴があります。

1、被害者にも一定程度の過失がある場合には、一括払いは行われない
2、加害者の任意保険会社は、いつでも一括払いを終了できる
3、加害者の任意保険会社は、一括払い開始前に、医療機関からの情報を取得する同意書を取り付ける
4、一括払いの対応することは、加害者の損害賠償義務を認めるものではない


通常、被害者にも3割程度の過失があり得ると、任意保険会社は一括払いの判断に慎重になり対応しない場合もあるようです。

一括払いが『サービス』であることから、事故から一定期間経過すると被害者に打診して治療の終了時期を探るようになります。

接骨院ではおおむね3ヶ月程度を目処にするのが一般的ですから、よくわかりますよね。

治療期間が長期化すると、任意保険会社は医療機関に聞き取りや面談を行い治療の必要性を判断します。

被害者の通院の意思に関わらず、治療が不要と判断すれば治療費の支払いを打ち切る判断も行われます。

保険会社側の唐突な打ち切りなどに不満を持たれ、弁護士を介して揉めたりすることもしばしばあります。

接骨院の先生側もこの一括払いが『サービス』であるという性質を理解しておきましょう。


3、健保一括とは

一括払いの考え方は上記したように任意保険会社が健康保険分も立て替えて支払う任意一括払制度のひとつです。

基本的に交通事故による負傷は自賠責保険を使用することが一般的ですが、健康保険を使用するのはどんなケースでしょうか?

自賠責保険や任意保険対人賠償などは『被害者』に対し賠償するもので、過失割合の高い『加害者』には適用されません。

その時は、加害者は任意保険内の『人身傷害保険:ジンショウ』を使い、健康保険を使用して医療機関を受診し治療を受けます。

原則、交通事故が原因で負傷した傷病に関して健康保険を使用する場合、国保や健保に対し『第三者行為による傷病届』が必要になります。

また自損事故での負傷も第三者行為と同様に保険者に届け出ないといけません。

任意保険会社から『健保一括で』という連絡が来た際には、その患者さんに対し第三者行為の届出の指導をしてもらうように必ず確認しましょう。

以前、健保一括で対応し保険者にレセプトを申請した際に第三者行為の届出が済んでおらず、あとから給付されないというトラブルが起こったことがあります。

出来るだけ早めに手続きなどを終わらせ、治療に集中できるように指導しましょう。

4、まとめ


簡単ですが最後のまとめです。

◇『一括払い』とは、自賠責と任意保険の保険金を任意保険会社が一括して支払うサービスである
◇基本的には交通事故の過失が大きい加害者加入の任意保険会社によって支払われる
◇サービスであるため一括払いの打ち切りは保険会社判断で行うことができる
◇『自賠一括』は自賠責保険と任意保険を加害者側任意保険会社が一括で対応すること
◇『健保一括』は健康保険分を自分の任意保険会社が立て替えて一括で対応すること


そもそもややこしい分野なので、このように簡単に理解しておくといいでしょう。

加害者?被害者?

自賠責?任意保険?

このnoteから読み始めた方の中には用語がわからないという方もいらっしゃると思います。

これまで『保険請求のこと』というマガジン内に交通事故シリーズとして解説していますのでぜひそちらもお読み頂ければと思います。


では今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

また次のnoteでお会いしましょう(^ ^)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?