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おすすめ本紹介『殺竜事件』

小説『殺竜事件』は、上遠野浩平さん執筆の「戦地調停士(せんちちょうていし)シリーズ」第一作目。

上遠野浩平さんの著書といえばアニメ化もされた『ブギーポップは笑わない』シリーズを筆頭に時間軸や場所は違えど同一の世界観が特徴ですが、本作『殺竜事件』をはじめとする「戦地調停士シリーズ」は少し異色で物語の舞台はブギーポップ世界のパラレルワールドが物語の舞台になっています。

現実世界をもとにした「ブギーポップ世界」に対して、科学ではなく代わりに魔法が発達した「戦地調停士世界」。
「鳥はどうやって空を飛んでいるのか?」
「それは重力魔法を使っているからだ。」
と言ったように魔法ですべてを解明する世界です。

ですが本シリーズは、モンスターを倒しまくるような王道ファンタジーではなく、人間同士のいざこざが物語の中心になります。
そしてそれを解決するのが「戦地調停士(せんちちょうていし)」。
“弁舌と謀略で歴史の流れを押さえ込む”と言われる、口先だけであらゆる揉め事を解決に導く特殊戦略軍師。
その「戦地調停士」の一人である、エドワース・シーズワークス・マークウィッスル、通称ED(エド)が『殺竜事件』の主人公であり探偵役です。

そう『殺竜事件』のタイトル通り、この物語はミステリー小説なのです。
被害者はもちろん”竜”。
この世界では単なるモンスターではなく、人間を含めたあらゆる生物の頂点に立つ存在。
人知を超えた力を持ち、不死身と思われていた7体の”竜”の内の1体が何者かに殺された。
しかも殺害方法は、鉄の棒で一刺し。
どんな武器や魔法をもってしても傷つけることができないはずの”竜”がただの鉄の棒で命を奪われているという信じがたい状況。

さらに”竜”の周りに張られた結界が破られた形跡はなく、容疑者は第一発見者である主人公EDと二人の仲間たちの他、直近で”竜”に会う許可を得た6人に絞られます。
現場は密室、殺害方法は理解不能。

もともと休戦協定の話し合いに参加するために村を訪れていたED一行。
”竜”のおかげで中立地帯だったからこそ選ばれた場所なのに肝心の”竜”がいないとなれば会見は何が起こるかわからない。
主人公EDと二人の仲間たちは自らの容疑を晴らすため、謎を解明するために犯人探しの旅に出る。
期限は休戦協定の話し合いが行われる1ヶ月後。

はたして主人公一行は期限内に犯人を特定し”竜”殺しの謎を解くことができるのか。
一見、なんでもありなイメージのファンタジー世界で繰り広げられる推理劇。
一読の価値ありです。




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