衝撃で死ぬと思った。
しかし意外にも、私はふかふかの床で目を覚ました。
どこなのかよくわからない。だけど多分、さっき落ちた箪笥の中だと思う。
今ならなんでもできる気がした。
だけど歩こうとすればするほど、足が取られてとても疲れていく。
だって床が、ふかふかなんだもん。
そしてとても可愛いペイズリー柄の、ピンクの床。
ペイズリー柄は縦横無尽に動き回って、時々私の様子を伺っている。
がむしゃらに動くのをやめて、よくこの空間を観察してみると、ここは広い円錐状のサーカスのテントの様になっていて、とんがった天の先には穴が空いているようで、細くかすかな光が差しているが、そうでなくても壁に描かれた顔のある月や星々が光っているお陰であまり暗くはない。
とりあえず出口を見つけようと、ぐるりと周りを回ってみようと思い立ったが、四つん這いになってもかすかに動くのがやっとでなかなか壁にも近付けない。
子供の頃嫌いだったボールプールを思い出した。友達みんな好きだったけれど、私は動きが制限されるようで、気持ち悪くて、でも友達に合わせないとなんか不安で、ただ我慢してなるべく出口の近くを動かないようにしていた。
子供の頃の不快な記憶は不吉な知らせか、吉兆か。

被験体の動きの鈍りに業を煮やした実験者は、ペイズリーの攻撃性に刺激を加えるために大量の小花柄を放ってしまった。

私は焦った。
急に心がざわめいて、それに反応するかのようにペイズリー柄が床から飛び出して一つの大きな形になり始めてしまった。急がないとやられる。
天井の小さな穴からは、小花柄がこぼれ落ちてくる。美しいけれど、危険になってきた。
「こんにちは。」と声が聞こえた。
この空間では、逃げ場がない。早く出口を探さないと。
声が聞こえたということは、あと数分でペイズリーの攻撃体制が整ってしまう。
月と星々は、いやらしい笑いを向けて成り行きを見守っている。

ムカつく。

ここから先は

0字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?