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積読本物語(3)ーH.R.F.・キーティング『ミステリの書き方』を読んで、「ミステリ」含めた文字表現をちょっとだけ想う!

今回の積読本

H.R.F.・キーティング『ミステリの書き方』(1989、早川書房)

読書のエントリー領域としての「ミステリ」

一般的かは自信はないので、自分事として綴るのだが、わたしがさまざまな作家を手に取る習慣を身につけたのは、間違いなく「ミステリ」というジャンルである。昔話をして恐縮だが、わたしの青春時代、島田荘司とその若い追随者たちにより「本格ミステリー」の復権が声高に叫ばれており、本屋にはそれら作家たちのハードカバーや文庫本が平積みにされていた。その現象に付随し、海外ミステリーも数多く紹介されることになり、古典と目される有名作家の著作がこちらも数多く復刻され、海外のコンペを勝ち抜いた最新刊を含め、百花繚乱の品揃え。『このミス』等の出版業界的なプロモーションも大々的に展開され、それがいまも脈々と続く。「ミステリ」は読書をエンタメたらしめている代表格と言える。面白くなければ読まれないし、そのためには時代を切り取る機知が不可欠になる。そういう意味では、「ミステリ」は現代を、意欲ある個人が切り取った、格好の風俗誌と捉えられるのかもしれない。そして、国内ミステリだけでも、読んでも読んでも終わらないという、無限積読地獄にわれらを誘うのだ笑 では、これら大量生産されるミステリの工程はどうなっているのか。それを一覧的に示そうとしたのが本書である。

あなたは「ミステリ」を還元しつくし、枚挙できますか?

わたしは少なくともMECEではなかったです笑 キーティング氏は「ミステリ」の7つの構成要素、6つの種類、10つの形式に分け、執筆の3つの順序(書き出し、進め方、終わらせ方)を語り、最後は作家たる心構えで締めくくる。この形式は科学論文の書き方そのものである。そう考えると、理系的な還元主義で、現象をバラバラにして再構築するという営為は「ミステリ」とは相性が良く、ひいては世情もそのような理系的なアプローチを深層心理として求めているのでは?と勘ぐりたくなる(たしかに森博嗣さんはサイエンティストですね)。このようにして、俯瞰的にパーツをバーっと広げてみると、こんなわたしでも1作くらいはいけるんじゃない?という大きな気持ちになります笑

センス・オブ・ワンダー

ただ、世界はグローバル化し、SNSの発達によってみんながインフルエンサーになることが潜在的に可能な昨今、「インスタ映え」に代表される、視覚的な、刹那な、寿命の短い「驚き」ではなく、文字を脳裏で再現することで得られる、自分だけの再生可能な「センス・オブ・ワンダー」は求められている気はする。それこそ、ここ20年間、本は売れないと言われてるし、実際マスコミ市場は見てからシュリンクしてるけど、「物語る欲求」だけはサイバー空間に溢れまくってるわけだからね笑

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