ニューヨークで最も記憶に残っているのは、地下鉄だ。

日本の鉄道とは全てが違う。まず改札は磁気カード、それも手動でスライドさせなきゃならない。慣れていないと3回に1回は失敗する。

乗り放題のチケットを買ったのだが、乗るホームを間違えて一度出たら、不正防止措置のせいで「Just Used」と出たきり18分後まで使えなかった。
イスはホームのベンチみたいに固いし、車両も日本の綺麗めな公衆トイレくらいにざっくり傷ついている。

特徴を書き出せばきりがないのだけれど、想像を超えていたのは車内でパフォーマーに遭遇したこと！
ホームで電車を待っている時からやけに陽気な若者二人組がいて、僕らと一緒に急行列車へ乗り込んだ。

電車が走り出すと彼らは大声で漫才さながらの掛け合いの後、かぶっていたヤンキースのキャップでおもむろにジャグリングを始めた。ここからがすごくて、持ち込んだスピーカーからKungs & Cookin’ On 3 BurnersのThis Girlを爆音で流し、中央の手すり柱でポールダンスを始めた！ポールの回りを縦横無尽にくるくると軽やかに踊り、挙げ句の果てに天井を歩くようなアクションまで見せた時には思わず声が出そうになった（出ていたかもしれない）。

車内のニューヨーカー達の反応は、眺める人もいれば知らぬふりをする人まで。聞けば急行列車はパフォーマンス列車とも呼ばれているそうで、多くのパフォーマーがチップ目当てに活動しているそうだ。

失くした指輪を探しているという手書きの張り紙が、テープで車内に貼ってあるのを見た日もあった。クリーンに整い過ぎていないが故に、様々なものを内包するニューヨークの地下鉄。

写真は地下鉄で出会ったナイスガイ。ヤンキースのNYロゴに日本の国旗が大きく刺繍されているのが嬉しくて、写真を撮らせてもらった。May I take your picture? は僕が自信を持って使える数少ない英語だった。

New York City Subway