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BookExpo 最終日

こんにちは。

石渡悠起子です。NYのBookExpoとNY Rights Fairに参加して来ました。

三日間開催されたBookExpoの最終日のパネルでは、本当に刺激を受けたので少しでもそれをお伝えできればと思います。

YAとは

翻訳に関わる人の多くはYAという言葉に馴染みがあると思います。最近になって出版翻訳のことを深く勉強するようになった私は、恥ずかしながら先日知りました。

YAはヤングアダルトの略で、その名の通り10代の若者を対象としたジャンルです。ノンフィクションでも、小説でもgraphic novelでもYAに向けた作品が沢山存在します。そうした作品は、もちろん大人も読んでも素晴らしいものばかりです。

日本を出る前に、翻訳の勉強の中でYA作品に触れる機会があったので、三日目は、YA関連のパネルに参加しました。

LGBTQ+とYA

一つめのパネルは、LGBTQ+である著者たちを迎えた「Progress in LGBTQ+ Books and Authors in 2019」というパネル。パネルの題名はあくまで"LGBTQ+の本と著者たちの躍進"という切り口でしたが、登壇していたパネリストは、Mariko Tamaki氏、Grace Ellis氏、Phillip Stamper氏など、皆YAを手がける作家さんでした。

自分が10代の時に読みたかったものを書く

パネルのトピックが、作家自らのアイデンティティと深く関わるものでもあり、このパネルは本当に胸を打つ言葉を沢山聞けました。

すでに小説作家としてデビューしているStamper氏は、今年初めてYA向け小説を出版するのですが、彼は「自分が10代のころ読みたかった本を書くつもりで書いている」と言っていました。YAにおけるLGBTQ+の本は「(LGBTQ+である)ティーンの助けとなるような、安全な場所を作り出している」という趣旨のことを言っていました。

これを聞いていて、つい涙が出てしまった。

自分が本が好きになったのも、あまり人付き合いが得意じゃなくて図書室や図書館に入り浸って本を読む中で、本の中に自分と同じように孤独を感じる人たちに慰められていたからだった。

その本の中の人たちは、いずれもっと大人になって現実の世界で出会う志を同じくする友人たちと同じくらい、10代の私にとっては本物の友人であったと思う。

今の若者にとっての、そうした心の友を生み出している作家たちが、客席からわかるくらい本当にきらきらした瞳で、決意と本への愛を持って仕事をしているということを知れて、本当に嬉しかった。なんなら思い出し泣きしながら書いています。まじだぜ。

YA全般のトレンド

午後には、YA市場全般のトレンドについてのパネルに参加。出版社の編集者たちが集まっていました。

そこで、なんと「エブリデイ」というYA小説の著者であり、出版社の編集ディレクターでもあるデイビッド・レヴィサン氏が登壇していました。ジェンダーと愛について大きな視点で描いてたこの小説は、三辺律子さんの翻訳も本当に素晴らしくて、原作も一気に読んでしまいました。何より、この小説のおかげでYAに興味を持ったので、ここでまさかのご本人に会えて本当に純粋にミーハーに感激しました。

トレンドよりも本当に良いと思うものを世に出せ

パネルが始まり進行役から「まず今のトレンドってなんでしょう?」というような質問が上がったところ、Rosemary Stimola氏が「トレンドってものがあっても、結局は良い本だって惚れ込まないと無理だから。その本を愛してないのに、売る事できないから。そこ大事だから!」としょっぱなからぶっ飛ばしてました。でも、他のパネリストも深く頷いてて、このパネルでもみんな本当に上っ面でなくて、心から本を愛しているし、情熱を持って本を作ってることが話の端々から伝わってきました。

人の本気って胸を打ちますね。

一応トレンドとして、強い女性の指導者(strong female protagonists)のものがフィクション、ノンフィクション問わず伸びているし、ジャンルとして確立され残っていくだろうというようなことを言ってる人もいました。

現実世界への門を開く

それから、「Gatekeeper(門番の意)」の問題として、大人が先回りして子供たちやティーンに「これは刺激が強すぎるかな?」「これはトラウマになってしまうかな?」みたいなことを心配しすぎて、届けるべきものを遠慮して出版しない、という潜在的な問題についても触れていました。

これは本当にそうだな、と。子供の世界ってタフだし残酷なことたくさんあるし、子供の感受性をなめたらいけない。大人が意識して勇気を持って、何より若者を信じて、届けるべきものってたくさんあると思います。

翻訳者としてー終わりに

まだ出版翻訳を手がける前ですが、でも自分も「みんなに良さを伝えたい、きっと自分以外の人の心に勇気をくれると信じる訳したい本があって、翻訳に取り組んでいる」ということを絶対に絶対に忘れないでおこうと思いました。









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