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「アルムナイ」がカタカナ英語として定着したら『ISO通信』第91号

卒業生や同窓生を意味する「alumni」という言葉が、企業を退職した社員に対しても使われるようになってきました。カタカナで表記すると「アルムナイ」になります。日本では同じ学校を卒業した人の集団や同じ企業を定年退職した人の集団は「同窓会」や「OBOG会」と呼ばれてきました。もしかすると「アルムナイ」というカタカナ英語は、転職によって企業を「卒業」した人たちのネットワークを表す言葉として定着するようになるかもしれません。最近ではアルムナイとのつながりを積極的に維持しようとする企業も増え、ときには自社に戻ってくるように促すケースもあります。

かつては終身雇用が当たり前で「ムラ社会」のような閉鎖的なカルチャーの強い会社では、定年前に転職した人に対して「裏切者」や「脱落者」のレッテルを貼ることも珍しくありませんでした。しかし「裏切者」ではなく「アルムナイ」と呼び、自社を離れた人の先にあるネットワークを活用したり、社外の知見を得たアルムナイの意見を取り入れたりすることで、自社のビジネスを拡大しようとする時代になってきました。アルムナイの「出戻り入社」が普通のことになってくると、社内に残っている人の意識も変わってきます。
“出戻り入社が許されるくらいなら、転職を考えていることも伝えた上で異動の希望を出しておこう”と考える人も出てきました。
転職相談の段階で「実は今の会社に対して異動の希望も出しています。異動の希望が通らない場合は、転職するつもりですが、そんな状態で応募してもいいですか」と言われることはたまにあるのですが「異動希望が通らない場合は転職するつもりであることを会社にも伝えています」と聞いたときは少し驚きました。昔の考え方なら「裏切者予備軍」であることを自ら公言しているようなものですが、出戻りOKの企業なら「アルムナイ予備軍」であっても問題ないのでしょう。

かなり昔のことですが、ある先輩から「転職を考えているなんて部長にバレたら終わりだそ」と言われたことがあります。その先輩は、私の昇給や昇格が遅れたり、左遷されたりすることを心配してくれたのだと思いますが、今ではその会社もキャリア採用に積極的で、出戻る人も珍しくなくなりました。
私がその会社を離れて10数年になりますが、今では会社の成長を外から応援しています。
以前はその会社を「中退」した感覚だったのですが「アルムナイ」という言葉のおかげで、卒業した人も中退した人も「アルムナイ」と思えるようになりました。

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