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修了式から始めるのも悪くない ①

 4月6日の修了式をもって、タイタンの学校6期一般コースの全課程を修了した。noteにアカウントをもって初めての投稿が修了式の話というのも少し変だけれど、いまはここが始まりという気持ちが強いから、これでいい。

 この一年は、季節の移り変わりに疎くなっていた。歳を取ったとか、時間が経つのが早いとか、そういう諦念を伴った何かではない。一週間の単位で楽しみな予定が入っていたからだ。夏も秋も冬も、土曜日が来れば心が弾んだ。

 モノンクルの曲の歌詞に「週末までちゃんと逃げ切ってやるのさ」とあるが、毎週そんなリア充みたいな気分にさせられていた。幼く聞こえるかもしれないが、タイタンの学校の授業はそれくらい私の心の大きな部分を占めていた。

 タイタンの学校に願書を提出した時期、いや、それよりずっと以前から、私は仕事のことで悩んでいた。気持ちが乗らないのだ。新卒から同じ会社で営業として働いて、もう15年になる。この先10年20年、この仕事を心から楽しめるだろうか、そんな思いが強くなっていた。

 ありがたいことに評価はされていて、今はそれなりの立場にいる。でも、私はそれが正当な評価だと思っていない。身に余る。評価に値するほどの仕事をしているとは思えない。実にこじらせた精神状態だ。

 私は販売会社に身を置き、営業の職務を担いながら、売上を上げたいという情熱がなかった。このままでは会社に、取引先に、お客様に、誠実であり続けることができない。カッコよく書けば、こう思っていた。

 もっと平たく言えば、会社を辞めたくて仕方がなかった。

 タイタンの学校に入学した時期、私は、かっこよく仕事を辞める言い訳を探していた。いま風に言えば「限界会社員がタイタンの学校でエンタメに開花して限界突破超新人作家になる物語」を夢見ていたのだ。

 学校の講義内容について詳細に書くと話が終わらなくなるので、詳しくは入学案内等を見てほしい。とにかくエンタメに強い。自己表現に関わる分野の授業が揃っている。

 そのなかでも体系的に学べて、コンテストに応募するまでを経験できるのが、動画編集〜CM制作の授業だった。

 動画を使った経験がなかった私でも、わかりやすく丁寧に教えてもらい、ひとつひとつ課題を提出することでスキルを上げることができた。単なる制作手法だけでなく、YouTubeなどのSNSでバズるコツなども聞くことができるので、芸人に限らず表現したいことがある人にはオススメだ。

 ここで毎週締め切りに追われながら動画を作り続けたのが、気分的高揚のピークだったと思う。クリエイティブなことをやっている気分になれたし、スキルとレベルが上がっていくのを実感できた。なにより賞を取れたことが自信になった。

 そう、私は学校を通して応募した「禁煙CMコンテスト」で、2位に入賞した。

 動画編集と並行してCM制作の授業があった。CM作りのノウハウを学び、禁煙CMコンテストに応募するのがゴールなのだが、私は台本を考えた時点で一人では完成させられないことを確信していた。私は一般コースで自分のイメージする声にマッチする人に声をかけ、学外のイラストレーターの協力も得て、イラスト中心の動画を作った。

 自分が座長になって、周りの人に声を掛けてひとつのものを完成させるという経験がなかったので、そんな行動を取れたことにまず驚いた。タイタンの学校の魔力はここにある。そして他の人のパフォーマンスを背負うことで、完成させなければいけないという責任感も生まれた。自分が構想を話して、相手から想像を遥かに超えたものが返ってきた時の脳汁が溢れる感覚は忘れられない。

 だからコンテスト2位入賞は、責任を果たせてホッとした思いと同時に、1位を取れなかった悔しさも強く残った。誰かを巻き込むことの楽しさと責任感は、やってみなければわからなかった。そんなことをだいぶ大人になった今、学んでいる。

 ちなみに、先ほど「学外のイラストレーター」と書いた協力者は、漫画家のドブリンさん。才能溢れる私の友人だ。CMではイラストの比重がかなり高いため、共作という形を取った。このほど、4月26日発売の「アックスvol.158」で特集が組まれる。

つづく。

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