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No,69.「自分に甘くて他人に厳しい人」について考察ー行為者ー観察者バイアスからー

「自分に甘くて他人に厳しい人」についてつらつらと書いてみる。

背景

学校や仕事場、友達の間でも、自分に甘く他人に厳し人っていますよね。
結論でいえばどんな人もそうなんですが、なぜ自分を高く見積もるんだろうな?

落語の世界で昔からよく言われていることで、「この落語家は下手だ!」と思ったら自分と実力は同じくらいと思え。と言われる。

行為者‐観察者バイアスについて

自分に甘くて、他人に厳しい人ということは、つまり自分と他人の間に正確に評価できないバイアス(偏った見方)があるということになる。

自分 ーーーーーーーーーー 他人

こういった現象を「行為者‐観察者バイアス」という

Jones&Nisbett(1971)は、「同一事象の原因帰属において、行為者はより外的な原因帰属(事象の原因を行為者以外の環境や他者などに帰する)を行い、観察者はより内的な原因帰属(事象の原因を行為者に帰する)を行う傾向がある」と述べている。

たとえば、試験結果が不合格だったとする。

本人は、「会場の雰囲気が異様で、試験内容が難しかったから不合格になった(外的要因)」と思うけど、

親や周りの人たちは、「本人の努力不足や、実力が発揮できない性格だから落ちるんだ(内的要因)」と思う。

ざっくり言えば、自分の失敗は周りや環境のせいにして、

周りの人は本人の能力や性格が問題だと判断する。

① 本人:試験内容や会場の雰囲気などの環境を実体験している。

② 周りの人:①のことはわかるわけないので、性格などをもとに原因を探る(本人じゃないのでそれしか探る術がないともいえる)。

何故かというと、失敗した結果から判断する(原因帰属)時の、見方(視点)が違うからと言われている。

行為者と観察者が知覚する人格特徴の数人は他者の行動を手掛かりとして、行為者の性格を手掛かりの限界以上に正確に捉えようとする願望があり、そのため、事象に対する行為者の寄与を過大に、そして状況要因の寄与を過少に知覚している可能性がある(Nisbett et al., 1973)。

行為者ー観察者バイアスについての研究(小野寺、2007)

実験内容

実験者に交通事故をした場合、それぞれの立場について想像してもらった。

①加害者本人

②偶然にも事故を目撃した人

③加害者の親

④被害者の親

4つの立場によって、本人が原因(内的要因)で事故を起こしたのか?

それとも、交通状況などの環境が原因(外的要因)で事故が起きたのか?について検証した。

結果

① 被害者の親は純粋な目撃者に比べて、加害者の内的要因が原因だと評価した。

② 加害者の親は他の立場の人と比べて、加害者の内的要因が原因ではないと評価した。

考察

被害者の親は性格(内的要因)が問題で事故を起こしたと思い、加害者や加害者の親は性格が直接的な原因ではないと思うことを考えると、

自分におこなった出来事(事象)に対して、本人の性格が原因だと思う人は距離がある人であり、環境や運によると思う人は距離が近いといえる(図1)。

図1 ポジショニングによる知覚の差異

画像1


                              筆者作成

最後に

「自分に甘くて他人に厳しい人」になる理由は、その場の状況や環境を経験しているので、自らの内的な部分ではなく自己防衛的になり甘く見積もる(紹介した研究からも、親は心理的距離が近いからだろう)。

けど、周りの人は状況など知る由もないので判断できない。それ故、単純に気持ちが弱いやら、性格が原因(今まで見てきた中からの判断)と厳しく見積もるんだろうね。

最後まで読んで頂きありがとうございました。


参考文献

小野寺哲夫(2007)「行為者‐観察者の差異とポジショニング理論を比較する」『日本心理学会大会発表論文集』第71巻、第0号、pp 1AM022-1AM022

山本俊磨(1989)「いじめの対人認知」『島根大学教育学部紀要』 第23巻、第1号、pp.21₋29

Jones,E.E,&Nisbett,R.E.(1972) The actor and observer:Divergent perceptions of the cause of behavior In E. E ,Jones&et a1(Eds),Attr1bu-tion:Perceiving the cause of behavior.New York:General Learning Press.


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