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医療機器の人間工学設計バリデーションテストの特殊性①:実査編

▪️人間工学原理主義

FDAがガイダンスを発行して米国市場への上市製品に適用し、世界標準となりつつある医療機器のHuman Factors Engineering / Usability Engineeringの妥当性確認テスト(バリデーションテスト、総括的評価)には、かなり特殊なところがあって、通常のユーザビリティテストに慣れたリサーチャーでも(というか、むしろ慣れたリサーチャーだからこそ)実査や分析のやりかたが難しいので、2つの記事に渡ってまとめておきます。

まずは、人間工学原理主義的な実査のやりかたについてです。人間工学原理主義と表現したのは、自然主義的 naturalistic である点と、なるべくヒューリスティクスを排除してハードエビデンスに依拠しようとする点です。

▪️自然主義的手法

まず自然主義的である点についてですが、バリデーションテストの実査シナリオは周囲の環境や想定状況を含め、医療機器の使用を可能な限り現実に近づけて模擬することが求められます。医師・看護師・患者など、想定されるユーザーを募集して調査に参加してもらいます。部屋の明るさや環境音も実際の使用状況を再現するようにし、医療従事者には人体模型(マネキン)を使って手技を行ってもらうこともよくあります。

モデレーターは調査参加者の操作中は、一つのシナリオが完結するまで介入しません。

▪️ハードエビデンスへの依拠

次に、ハードエビデンスに依拠する点です。通常のユーザビリティテストであれば、調査参加者が起こしたのがデザイン変更にはつながらないような軽微なuse errorで、その原因も経験則からよく理解できるとリサーチャーが思ったら、深く追求しない場合が多いのですが、バリデーションテストでは、リサーチャーの経験則よりも客観的な根拠が求められます。録画や録音に残るかたちで調査参加者に質問を繰り返し、use errorの原因を突き止めます。

これをすべてのuse errorについてやるとなると、時間がいくらあっても足りないのですが、バリデーションテストでは、事前にリスク分析で特定されているクリティカルタスク(use errorを起こすと当該機器の医療効果が発揮されない、あるいはユーザーに危害が及ぶ結果となるタスク)を重点的に評価することになっています。

以上は、主に実査での注意点でした。次回の記事に続きます。

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