よもぎ

踊れもしないのにステップを踏んで

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  • よもぎのたからもの

    ぼくをかたちづくる、スキあふれちゃうnoteをあつめました。人の宝箱はかんたんに見ちゃいけません。

  • よもぎの他己紹介

    ぼくがnoteを続ける理由のひとつです。

  • aikoに捧げる愛

    ぼくが愛してやまないaikoに関する文章です。

記事一覧

固定された記事

五月雨【短編】

 いつからだろう。こんなにも閉じ込められた自由のなかにいるのは、いつからだろう。もっと言えば、私はいつまでこのなかにいるのだろう。  昨夜仕込んだビーフシチュー…

よもぎ
3年前
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「合わせたら死んでいくもん」

春を迎え、歳を重ねる。恋人ができる。後輩が増える。同期が辞める。親がまるくなる。友だちが結婚する。コミュニティが失われる。春が過ぎ、また歳を重ねる。私の意思や解…

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よもぎ
1年前
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日記(0513-0613)

5月13日金曜日 華金。会社の人と飲む。自分が手塩にかけた後輩と、炎上案件を一緒に乗り越えた仲間。やっと打ち上げができてうれしい。仕事の話はほどほどに、終盤は恋愛話…

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よもぎ
1年前
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かつて天才だった俺へ

負けたと思った。そして同時に、そのときの"俺"は何にでもなれた。 2021年2月11日、Creepy Nutsのライブに行った。密を避けるためにパイプ椅子がお行儀よく並べられたZepp…

よもぎ
3年前
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【2020】よもぎ的読めてよかったnoteと、今年のかんがえごと

臆面もなく【2020】なんぞ題名につけては鼻息荒く書き出しています。昨年こんな記事は書いていないし、来年書くかもわからないシリーズ的記事を今年は書いてみましょう。よ…

よもぎ
3年前
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『文活』運営メンバーの、はんぶんの想い

今月からあるメディアの運営にたずさわることになった。 それは、ノベルメディア『文活』のことだ。ざっくりいうと、noteの小説家たちが、毎月小説を持ち寄ってつくる文芸…

よもぎ
3年前
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夢と現実の狭間、あなたが光りかがやく歌詞14選

人と会う機会が減り、音楽に酔いしれる夜が一段とふえた。歌詞と音に没頭して、ちょっとだけほほを濡らす。ちょっとは嘘。まあまあな枚数のティッシュが必要。 近ごろ、自…

よもぎ
3年前
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正義がひとりを揺らす。

自分の人生が映画化したら、主題歌はYUKIの「誰でもロンリー」にする。 弾けるメロディとYUKIの伸びやかな歌声は僕のギアを上げてくれる。何といっても歌詞がすきで、YUKI…

よもぎ
3年前
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夢は締め切りがあるから叶えられる。

昨年末あたりから描いている夢がある。 具体的には言えないのだけど、僕ひとりの力では成すことができない夢である。この夢の厄介なところは、叶えたい意志は持続するもの…

よもぎ
4年前
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没頭こそ、最強。

今月で会社を辞める人がいて、僕はその人の後任としてこの4月から客先に常駐している。その引継ぎや実務の指導を(テレワークではなく)直接行う必要があるため、僕とその…

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4年前
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呪いと言わせないaikoの歌詞30選

去年の春頃、「aikoの歌詞は呪い」という内容がトレンド入りした。そして先日のライブでもaiko自身が「歌詞なんて呪いみたいなもんやから」とトークしていた。呪いとはWiki…

よもぎ
4年前
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恋愛はタイミングって言うけれど。

大学時代にひどく好きだった人と会った。 自分が辞めてしまった大学の友人から「大学を辞めたから就活の相談に乗ってほしい」と言われ、1年間もフリーターだった自分に何…

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4年前
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イヤホンをつけられなくなるとき。

二つある。 一つはたのしいひと時を過ごしたとき。余韻を残す充足感は、あれほど好きな音楽やラジオという媒体を僕の身からはがす。本当に、昼夜を問わず、何かしらを聴い…

よもぎ
4年前
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傷つけない笑いが面白いお笑いなのか。

取り急ぎ、書く。 M-1グランプリは観たか。観てたら読んでほしい。全部観てなくもいい。 ぺこぱという芸人の漫才だけでも観てから読んでほしい。 彗星の如く現れた7組の…

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4年前
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嘆きのキスを味わえなかった僕は。

aikoの曲に「嘆きのキス」という曲がある。aikoがデビューから11年を経てオリコンチャート1位をやっと獲得した「milk」との両A面シングル。2009年にリリースされた曲だ。も…

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4年前
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Close【短編】

紙コップが熱く、手で持っていられなくなる。思わず机に置いてコーヒーから漂う香りにぼんやりしていると、いつも優太が座る僕の左隣に麻衣子が着席した。手にはさっき僕が…

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4年前
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固定された記事

五月雨【短編】

 いつからだろう。こんなにも閉じ込められた自由のなかにいるのは、いつからだろう。もっと言えば、私はいつまでこのなかにいるのだろう。  昨夜仕込んだビーフシチューを火にかけ、濃く煮つまる汁をみつめながら私は考える。角切りの大きな肉が浮かぶ、深いとび色のソース。牛肉の旨味が溶け込んだソースは動物的で香り高く、私の鼻を簡単にくすぐる。  無性にビーフシチューがたべたかった。その考えは、深夜のキッチンに私を陽気に立たせた。だからビーフシチューの勇ましい香りがいま生きている私の輪郭を

「合わせたら死んでいくもん」

春を迎え、歳を重ねる。恋人ができる。後輩が増える。同期が辞める。親がまるくなる。友だちが結婚する。コミュニティが失われる。春が過ぎ、また歳を重ねる。私の意思や解釈や納得は遅延したまま、すべてが淀みなく進行する。 恋人と別れて一か月が経とうとしている。

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日記(0513-0613)

5月13日金曜日 華金。会社の人と飲む。自分が手塩にかけた後輩と、炎上案件を一緒に乗り越えた仲間。やっと打ち上げができてうれしい。仕事の話はほどほどに、終盤は恋愛話で盛り上がった。四人も居合わせれば渋滞する人の恋愛観だが、各々の価値観それ自体を否定するような人はいなかった。 ただ同期の何気ない冗談に傷ついてしまった。それは本人からすれば攻撃性は感じられなく、他意や含みをもたない、混じりけなしの冗談として言ったようだった。私はこういう時、へらへらする。それがもっとも無難で淀みの

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かつて天才だった俺へ

負けたと思った。そして同時に、そのときの"俺"は何にでもなれた。 2021年2月11日、Creepy Nutsのライブに行った。密を避けるためにパイプ椅子がお行儀よく並べられたZepp Tokyoの会場は、私の知る"ライブ"会場ではなかった。 何度も訪れたことがあるZepp Tokyo。最後に行ったのはたった1年前の2020年2月8日であったのに、私はライブという劇薬をひどく欲していた。 音を浴びてカラダから放出される汗と熱、翌日の筋肉痛すべてを久しく感じていない。ライ

【2020】よもぎ的読めてよかったnoteと、今年のかんがえごと

臆面もなく【2020】なんぞ題名につけては鼻息荒く書き出しています。昨年こんな記事は書いていないし、来年書くかもわからないシリーズ的記事を今年は書いてみましょう。よろしくお願いします。 *** よもぎ的読めてよかった2020年のnoteこういう暮らしが好きで好きでしかたないな。わたしはずっと暮らしていきたいだけなのだ。 青い朝こときょんちゃんのエッセイです。こんなにも等身大の文章は久しく、読後感が心地よかったのを感覚ごとおぼえています。そんな飾らない生活をいつもみせてく

『文活』運営メンバーの、はんぶんの想い

今月からあるメディアの運営にたずさわることになった。 それは、ノベルメディア『文活』のことだ。ざっくりいうと、noteの小説家たちが、毎月小説を持ち寄ってつくる文芸誌をおとどけする活動をしている。すこしでも気になったらこの記事を読んでほしい。手前味噌ではあるが、すてきな取り組みであると自負している。 文活の運営メンバーは、noteのなかではたらいているなみきかずしさんと、よもぎである。何を隠そう、文活の運営陣はたったふたりだ。もはや陣と呼んでいいのかさえわからない。 な

夢と現実の狭間、あなたが光りかがやく歌詞14選

人と会う機会が減り、音楽に酔いしれる夜が一段とふえた。歌詞と音に没頭して、ちょっとだけほほを濡らす。ちょっとは嘘。まあまあな枚数のティッシュが必要。 近ごろ、自分の力ではどうにも変わらない現実に対する不甲斐なさでわんわん泣いてばかりの毎晩です。そういうときは音楽に力を借ります。 イヤホンを耳から外したときに少しだけ前を向けるような、そんな歌詞を紹介させてください。 * time will tell/宇多田ヒカル 泣いたって何も変わらないって言われるけど 誰だってそん

正義がひとりを揺らす。

自分の人生が映画化したら、主題歌はYUKIの「誰でもロンリー」にする。 弾けるメロディとYUKIの伸びやかな歌声は僕のギアを上げてくれる。何といっても歌詞がすきで、YUKIの口から発せられるからこそ意味をもつ詞が綴られている。 楽しそうに笑って 誰でもロンリー 悲しいかな、誰にでも孤独の波は打ち寄せる。 無我夢中で追いかけた夢。過度に応えようとした期待。改札口で別れた直後に死ぬ表情筋。家族が寝静まってから始まる参加者自分だけの晩酌。バラエティを観てこぼれる不気味な笑み

夢は締め切りがあるから叶えられる。

昨年末あたりから描いている夢がある。 具体的には言えないのだけど、僕ひとりの力では成すことができない夢である。この夢の厄介なところは、叶えたい意志は持続するものとして、夢を咲かすにはおおむね時間の経過に託すほかないのが心苦しいところだ。 涙ぐましい努力によって叶えるものではなくて、娑婆の空気を求める受刑者のような、忍耐的なことなんである。サマージャンボにでも当選すればすぐ叶うのだけど、あいにく宝くじに夢を叶えられたくはない。 おまけにこの世情で受けたい資格試験が中止にな

没頭こそ、最強。

今月で会社を辞める人がいて、僕はその人の後任としてこの4月から客先に常駐している。その引継ぎや実務の指導を(テレワークではなく)直接行う必要があるため、僕とその先輩だけはリモートワークをしていない。 自社も原則リモートになったため、毎日その先輩と普段は人口密度が高いオフィスで過ごしている。いつもは狭いと思う場所も二人しかいないと、前途洋々ベンチャー企業気分なオフィスである。 たまに上司が来ることもあり、僕らしかいないためその時はお昼を奢ってくれたりする。この間は、お店ではじ

呪いと言わせないaikoの歌詞30選

去年の春頃、「aikoの歌詞は呪い」という内容がトレンド入りした。そして先日のライブでもaiko自身が「歌詞なんて呪いみたいなもんやから」とトークしていた。呪いとはWikipediaを参照すると「人または霊が、物理的手段によらず精神的あるいは霊的な手段で、悪意をもって(以下略)」とある。 aikoってそんなに恐ろしいアーティストだった? 1年越しに怒りがこみ上げてきたため、その検証も兼ねて僕がすきなaikoの歌詞を紹介していく。 aikoの詞を読む事=簡単な事? 切りすぎ

恋愛はタイミングって言うけれど。

大学時代にひどく好きだった人と会った。 自分が辞めてしまった大学の友人から「大学を辞めたから就活の相談に乗ってほしい」と言われ、1年間もフリーターだった自分に何が言えるのだろうと思いながら頼られるのはうれしくて二つ返事で応じた。 その友人(異性)と僕が好きだった人(以下A)は仲が良い。友人が大学を辞めるという話になり、会話のなかで僕の名前が上がった。 どうせならAにも声をかけたところ、「気が向いたらいくね」と返ってきた。いつだって曖昧さしか持ち合わせてない人だった。 ど

イヤホンをつけられなくなるとき。

二つある。 一つはたのしいひと時を過ごしたとき。余韻を残す充足感は、あれほど好きな音楽やラジオという媒体を僕の身からはがす。本当に、昼夜を問わず、何かしらを聴いている。だからイヤホンを忘れると簡単に不機嫌になる。 もう一つは、かなしみが溢れたとき。 いつもイヤホンをつけているものだから、移動中にイヤホンをつけていないとすぐにはっとする。だから例えば、たのしい時間を過ごした帰りの電車でイヤホンをしていない自分に気づく。それは充実した時間の裏返しだなと、その事実に気づかされ

傷つけない笑いが面白いお笑いなのか。

取り急ぎ、書く。 M-1グランプリは観たか。観てたら読んでほしい。全部観てなくもいい。 ぺこぱという芸人の漫才だけでも観てから読んでほしい。 彗星の如く現れた7組の決勝初出場者。決勝経験者はかまいたちと見取り図のみ。3年連続準優勝の和牛ですら蹴落とされた2019年。みんな面白かったと思う。アンタッチャブルが復活した年のM-1でミルクボーイが史上最高得点を更新したのは皮肉なのか、それでも優勝して伝説になった。かまいたちが1本目にUFJのネタをぶつけてくるのはガチ感が滲み出て

嘆きのキスを味わえなかった僕は。

aikoの曲に「嘆きのキス」という曲がある。aikoがデビューから11年を経てオリコンチャート1位をやっと獲得した「milk」との両A面シングル。2009年にリリースされた曲だ。もう10年も前である。 この曲ほど僕を救った曲はなかった。 僕が中1のとき、今は閉店した近所のTSUTAYAで購入したシングルだった。レンタルCDから中古に格落ちしてしまったカートの中で見つけた。たぶん300円とか500円とか。色んなシールが貼られて。 当時はA面B面の概念もわからず、1曲目はシ

Close【短編】

紙コップが熱く、手で持っていられなくなる。思わず机に置いてコーヒーから漂う香りにぼんやりしていると、いつも優太が座る僕の左隣に麻衣子が着席した。手にはさっき僕がコーヒーを買ったお店のカフェオレと個包装のチョコレートを持ち、彼女はチョコレートを1つ渡してきた。 「ねえ、先週の西洋建築史出た?」 「出たよ」 「プリント見せて」 「そのためのチョコレートか」 友人が少ない僕と麻衣子はこうして助け合い、この大学で互いのことを頼っている。 会えばどことなく会話が始まり、特に何を言わ