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土井隆義『友だち地獄』

このnote記事は土井隆義氏の「友だち地獄」という本を踏まえての文章である。この本は若者の人間関係について述べられた本である。以前では親友とは互いの対立や葛藤を経験しながらも、訣別と和解を幾度と繰り返す中で、徐々に揺るぎない関係を作り上げていけるような間柄を指しているものであったが、現在(この本は2008年に書かれた)では、絶えず場の空気を読みながら、友人との間に論争をつくらないように心がけるような対立の回避を最優先にするような人間関係(「優しい関係」と呼称)となってしまっている。かつては他人と積極的に関わることが「優しさ」であったのに対し、現在ではその意味が反転してしまっている。

人間関係というものは人生において大きな部分を占める。バイトをやめたいと言っている人の理由に嫌な先輩がいるからというのは珍しい話ではない。私は今、大学生をしていてこれまでにあった人生の大きなターニングポイントとして高校受験と大学受験というものがある。受験は私が生きてきた中で最も多く勉強した瞬間であり、学校選びは何時間、何十時間とデータなどを見て決め、合否がわかる瞬間はこれまでにないほど緊張する。そんな大きな選択をしていたわけだが、その通った高校、大学でよかったことは何かと聞かれると、学校の外観がよかったとか立地がよかったとかではなく、今の友達に出会えたことである。膨大な時間や労力を費やしてまで入った高校、大学でも結局あとになって考えてみると、人間関係が学校生活を豊かにするために大きな役割を担っていたのである。

現在についても同様のことがいえる。今、生活をしている中で自分が所属しているコミュニティというのがいくつかあるだろう。家族、部活動、会社、趣味の集まりなど。人生はそれらを軸に進んでいっていると感じがある。

人間関係、人との出会いといえば、出会いという表現は少しずれるが家族について。たまに想像することがあるが、もし家族が今とは違って全く別の人だったらどんな人生になっていただろうと。家族というのは人生で最も結びつきが強い人間関係であり、大体の場合、共にする時間は他の人たちよりも多くなる。家族、特に親が違うかったらまず自分の性格、趣味、価値観、その他さまざまなものが変わっていただろう。まず、幼少期に覚えるであろう言葉遣い、食べ物の食べ方といったものは親に教えられる。また、ティッシュはここに置く、電気はすぐに消す、食事は家族がそろってから、など家庭によって自然と決められているルールも、当たり前のことだと思いがちだが家庭、親によって異なる。友達の家族を、そこに自分がいたらどうなんだろうと考えてみるが、結局、今の家族以外想像するこができない。

この考えを深めて、家族以外の人との関わり合いにも目を向けてみると、友達、同僚、先生、恋人など、人生の様々なステージで出会う人々が自分の性格や価値観に大きな影響を与えていることに気づく。例えば、ある友人に影響されて新しい趣味に興味を持ち、それがきっかけで新しいコミュニティが広がったり、ある先生の言葉がきっかけで進路を決めたりすることもある。私たちは出会った人々との関係を通じて、自分自身を形成していく。ということはこれから先の人との出会いは自分自身に多大な影響を与えていくことになるだろう。

また、人との出会いはときに予期せぬ形で自分の人生に大きな影響を及ぼすことがある。たとえば、偶然出会った人が後の人生の大きな転機になることもあれば、一見些細な出会いが長い時間を経て大きな意味を持つこともある。このように、人間関係は人生において非常に複雑で予測不可能なものである。

さらに、他人が自分に影響を与えるのと同じように、自分も他人の人生に影響を与えていることになる。自分が発言した何気ないひとことが、相手の人生を180度変えることになりうる。そしてその人に影響を受けた他の人がまた存在する。この人間関係の相互作用の連鎖はとても複雑なものだ。

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