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ミュージカル『ガイズ&ドールズ』観劇。

関係者にコロナ感染者が出たとのことで、2日間中止となった日があった今公演だが、ギリギリその期間にはかからず、なんとか観劇することができた。

【ストーリー】
1930年代のニューヨーク。スカイ(井上芳雄)と呼ばれる超大物ギャンブラーがいた。彼の仲間のネイサン(浦井健治)は自分の婚約者アデレイド(望海風斗)へのプレゼント代と賭場代を得ようとスカイに賭けを申し込む。「指名した女を落とせ」というものだ。「どんな女でも落とせる」と自信たっぷりのスカイだが、ネイサンが指名した女性は、清純で超堅物な救世軍(※)の軍曹・サラ(明日海りお)だった。サラの伝道所が閑古鳥で困窮しているところに、自分と一緒にハバナへ食事に出かければ、罪深い連中を伝道所に連れて行くと持ち掛けるスカイ。教団を救うため、サラはその誘いを受ける。ハバナで過ごすうちに、スカイとサラは次第に惹かれ合っていく。だが、高揚した気分で伝道所へ戻ると、サラの留守をいいことにネイサンが賭博を開催していた。ネイサンがスカイの仲間だと知ったサラは、スカイが自分を連れ出して仲間に賭博場を提供していたと誤解。彼に裏切られたと思い込み…。正反対のスカイとサラ、14年間も婚約中のネイサンとアデレイド。2組のカップルの恋の行方は?

(※)救世軍…世界各国で宗教活動、社会福祉活動、医療事業などを推進するキリスト教の団体で、軍隊組織、制服を採用している。

東宝公式HPより〈https://www.tohostage.com/guys_and_dolls/〉
18時公演終了後

1950年にブロードウェイで初演されると同時に大評判となり、1,200回のロングラン公演を記録。これまでトニー賞作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞など8部門受賞の栄誉に輝いたという本作。日本においては、宝塚を皮切りに、日生劇場版・東宝版と幾度となく再演されている。

個人的には、今回が作品自体初見。1950年に作られた、1930年代アメリカを舞台にした作品だからか、やはり古めの価値観だったけれど、役者が揃っていたため現代人にも一応受け入れられているのでは、という印象を受けた。井上芳雄さん、明日海りおさん、浦井健治さん、望海風斗さん、という強いキャスティングで、ある意味良かった。もし半端な役者が演ってたらモヤっと感が残ってしまっていたかもしれない。

そんな芸達者な主要キャスト4名について触れていきたい。

※以下、ネタバレを含みます

まず、他のギャンブラーとは肝の据わり具合が一段違う、超大物ギャンブラーであるスカイ(井上芳雄さん)。
スマートでありながら豪快な一面も併せ持つ役どころ。芳雄さんの持ち前の品の良さが反映されていて、ジェントルマンなギャンブラーという印象。冒頭で、「特定の彼女は作らない」的なことを豪語していたが、自分とは正反対の性格の女性、清純で超堅物な救世軍の軍曹・サラに出会い、その魅力に惹きつけられていく様を丁寧に演じていた。言わずもがな、芝居も歌も大変安定しており、作品全体の基盤となってくれていた。

そのスカイと恋仲になっていくのが、清純で超堅物な救世軍の軍曹・サラ(明日海りおさん)。
宝塚現役時代から、男役でありながら女性らしい可愛さを含んでいたみりおさんだから安心感はあったものの、やはりすごく可愛い!とにかくキュートなサラに仕上がっていた。
前半は、日々苦戦しながらも救世軍の仕事に真摯に責任感強く向き合っていて、その健気さに思わずときめく。賭けにはめられているとは知らずスカイと2人でハバナへ訪れた際には、バーでお酒を飲みすぎて酔っぱらい、店内で大暴れ。お酒により固いガードが緩んでスカイに甘える姿がまた可愛く、ここでもまたときめく。終始本当にチャーミングすぎて、みりおさんにピッタリの役柄だった。

スカイのギャンブラー仲間で、彼女のアデレイドと14年間「婚約者」という関係のまま結婚を先送りにし続けているネイサン(浦井健治さん)。
最初に「結婚しよう」と言ってから14年間も籍を入れずに逃げ続けている、とだけ聞くととんでもない最低男のように思えるが、どこか憎めない人柄。アデレイドを遊び相手と見ているわけでは決してなく、アデレイドのことは本当に好きと思っている。でもギャンブル癖とはどうしても縁を切れず、ズルズルと続けてしまっているというダメンズっぷりを、浦井さん持ち前のひょうきんさや人間味で見事に表現していた。アデレイドのようにネイサンのような男性に惹かれる女性からしたら、「どうしても放っておけない」「可愛いところがあるから許してしまう」と思ってしまうキャラクターに仕上がっていた。

ネイサンの婚約者で、14年間も待たされ続けてきたアデレイド(望海風斗さん)。
女性は若いうちに結婚して家庭を築くことが当然、それが一人前になるということ、と捉えられていた時代。その時代に生きているにも関わらず、婚約だけはしたまま14年間も待たされ続けているというのは本当に苦痛だっただろう…なんと女性が生きづらい時代だ…と、一番可哀想に感じてしまった役柄。自身の母親には、安心させるために結婚して子どもが5人もいると伝えていて、ネイサンがいつまでも結婚してくれないことに悩み続けて体調まで崩してしまっている人物ではあったが、悲哀のみならず、コミカルさやチャーミングさも交えて演じていた。
「HOT BOX」というお店のショーのステージに立つ仕事をしているが、普通に衣装を着て出てきたかと思えば、ショーの後半でそれを脱ぎ、かなり露出度の高い衣装に変身。男役時代の望海さんを見続けてきた立場としては戸惑いを隠せなかったものの(笑)腕や肩周り、脚の綺麗さに釘付けに!やはり男役さんでもめちゃくちゃ細くていらっしゃった。

主要4役はかなりキャラ立ちしていて、それぞれ演じた俳優もその役にぴったりハマっていたように思う。

その他にも、田代万里生さん、竹内將人さんを始めとした個性豊かなギャンブラーの面々が作品を盛り上げ、アンサンブルの皆さんも1930年代ニューヨークの世界観に華を添えてくれていた。

本記事冒頭で古い価値観だったという話をしたが、その時代のそれとして捉えれば、特段強い違和感を覚えることもなかった。ただ、やはり古い作品にはなるので脚本が緻密に構成されているわけではなく、ところどころつっこみたくなる点も(笑)スカイとの賭けに負けたとはいえ、ワルなはずのギャンブラー集団が割とあっさり救世軍の集会に参加して各々しっかり発言してくれてるじゃん。とか。エンディングで、スカイ&サラ、ネイサン&アデレイドカップルがどちらも急に結婚したじゃん!とか。笑

結婚するのは良いけれど、スカイもネイサンも長年のギャンブラー。賭博を生業にしているほどの人たちは、本人や周囲が頑張ってもちょっとやそっとじゃ賭博から完全に足を洗うことはできない。本当に賭博にハマりきってしまっている人は、病気みたいなものでそう簡単には治らないから。だからサラとアデレイドは、これからもこの男2人に振り回され続けるし絶対苦労するぞ〜〜〜。と思ってしまった私。すごく現実的。笑

ただ、すごく納得したのは、人生そのものがギャンブルのようなものであるという作品のメッセージ!これはその通り。人生は、選択してみなければ、やってみなければ分からないことだらけ。だからもしかしたら、終盤のサラとアデレイド2人のナンバーで歌っていたように、結婚後にうまく旦那を調教してギャンブルを完全に辞めさせられるかもしれない。上手くいくかは分からないけれど、2人はそこに賭けてみることにしたということ。チャーミングな女性2人の前向きな賭けについては、とても応援したい気持ちにさせられた。

また、本編外の話にはなるが、みりおさんと望海さんの宝塚89期生コンビの共演を、退団後に見られたことにはやはり感動!カーテンコールでも垣間見えた、お二人の嬉しそうで楽しそうなお姿。こちらとしてもただただ嬉しく、心温まる瞬間だった。

ここから先、地方公演も含めて、無事に大千穐楽まで到達することを願う。

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