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周りにいい人が集まる

これは 屋久島で72歳の登山家モーリーさんという方に伺った話です。

モーリーさんは、高齢者専用賃貸住宅に引っ越したと言いました。そこはマンションタイプで 100世帯以上の方々が暮らしています。大所帯ではありますが、入居者同士でお互いあまり関わらないという方が多く、関係が気薄な空気感があります。


そんな中、モーリーさんの周りには人が集まるのです。なぜ彼の周りにはこんなに人が集まるのか、楽しそうなのか疑問に思っていました。話を聞いていくうちに料理をお裾分けしあったり体が痛い時は湿布をくれたり、元気な人がゴミを代わりに外に出してくれたり、お互い【思いやり】をもって生活しているということがわかりました。  


登山中、「モーリーさんの周りの方は皆さん感じのいい方ばかりですね」と話すと、彼が『近所付き合いのコツ』を教えてくれました。

【過去の生活をひけらかさない】
【自慢をしない】
【いま現在の環境に合わせる】

彼は言いました。

「それぞれ歳をとって今まで様々な環境で暮らしてきたわけで、金持ちの人もいると思うし、会社で地位を築いた人もいると思う。そんな人ばかりでなく、ここに来たのには色々な事情を抱えた人もいると思う。だから私は過去の自慢をしたりしない。過去の生活の姿に合わせようとして、

「もっとこうして欲しい」
「どうしてこういうことをやってくれないんだ」
とかは言わない。ここにはここのやり方があるからさ。前の家の環境が良かったからって、それを押し付けるなんておかしいからね。それより、今の環境に合わせて生活をした方が楽よ。そしたら、私の周りのお友達もそういう考えの人が集まってきた。だから私の周りにいるのは皆良い人だし、気楽に付き合える人たちだよ」

聞いた話ですが、彼のマンションでは様々な内情がありました。入居者の意見の食い違いから言い争いをしてしまう人。新しい環境に慣れようと無理に人付き合いをして精神的に辛くなってしまう人。ありもしない噂話で盛り上がる人。自分の思い通りにならないので、結局馴染めず、マンションから出て行ってしまったという方も。


どんなに歳を取ろうと人間同士が関わると、必ずこういうことが起こるのだなと思いました。年齢は関係ないんですよね。学校や職場などにも通ずるものがあるのではないでしょうか。


『郷に入っては郷に従え』
こんなことわざがあるように、環境が変わっても、わがままにならず、流れに逆らわずにいる方が気楽に過ごすコツなのかもしれません。

何でも自分の思い通りになると思っている人ほど人間関係は上手くいっていません。なぜならば、他人はコントロールできないからです。それを無理にコントロールしようとするから摩擦がおきてしまう。これを読んでそのことに気づくことができたのならば、あなたは少し前進できるかもしれません。

悩んだって仕方がないよね

僕の理想は常に平常心であり、自然体でいられる人に憧れます。

そういう人を見るたびに

「この人の性格は素敵だなぁ」
「こんな人になりたいなぁ」と思うのです。

モーリーさんはあまり感情の起伏がないといいます。怒ったり、悲しんだり、くよくよしたり、喜んだり、そういう感情が過度に湧き上がってこないというのです。しかし、若い頃はそうではなかったと。

知人と意見の違いからぶつかり、嫌なことを言われれば怒り、悲しみ、ずっと頭の中でグルグルとそのことを考えてしまう。

そんな感情に揺さぶられる中で段々とそうならないように出来るようになったそうです。彼は自分自身のことを平常心に戻すことが上手い人だといいます。

では、どの様に【平常心】を取り戻すのか?聞いてみました。

「たとえ嫌なことが起きてしまったとしても、やってしまったことは変えられないから悩んだって仕方がないと思うようにしている。私は決して悩まないわけではなくてね。スイッチを切り替えるのが速いだけ。悩んでもね、これはいくら考えても仕方がないなとか、誰がやったって無理だなってことはすぐにスイッチを切り替えちゃう。だって、そこに囚われてずっと考えてても仕方ないでしょ?

その嫌なことが夢に出てきた時、起きてからも落ち込んでしまうのではなく、夢は夢の話。実際に起きているわけではないでしょ?
それは過去のことでも同じ。過去はもう変えられないんだからくよくよ考えない。どんなに嬉しいことがあっても浮き足立たない。浮かれているといつか落ちる時が必ずくるのだと肝に銘じる。原因は自分にある。そういう時は、自分が変わらないと環境も変わらないという気持ちで次は注意すればいいのさ」


モーリーさんは「悩んだって仕方ない」という言葉から心のスイッチの切り替えを素早くしていたのかもしれない。

この言葉はもう過ぎ去ったことなのに考えたり、悩んだりしても何も変わらないし、自分が辛いだけということをモーリーさんはよく理解しています。そうやって【平常心】を取り戻していた。

僕は旅で人生勉強をするなか、【平常心】の大切さを学びました。それは心がジェットコースターのように上がったり、下がったりするたびに動揺するのではなく、どんなに嬉しいことがあっても欲張らず、辛いことがあっても落ち込みすぎず、嫌なことがあっても怒らないということです。


どんなことがあっても事実を冷静にみることができることが、平常心で生きていく上で必要なスキルなのかなと思います。ネガティブよりもポジティブ。ポジティブよりも平常心が心と体にとっていいことだと僕は思っています。彼はそのことをよく分かっているように感じます。今まで繰り返し、繰り返し意識してきたのでしょう。それが自然に出来るようになるまで。



彼は「仕方がない」という言葉以外にも


嫌なことがあると部屋の一つしかない大きな窓から、


空を見上げて嫌なことを忘れるといいます。

"今"という瞬間に意識を向けて集中するということを自然にやっているようです。どんな時も自然体で平常心でいられる彼のようになりたいと思いました。

種子島で知り合い、屋久島へ一緒に渡航した

事実のまま伝える


モーリーさんは僕がとても尊敬している方のひとり。どんな方かというとまず精神面が素晴らしい。

『悩んだって仕方がないじゃない』それが口癖で、年齢も相重なって、とても説得力があります。

「モーリーさんの考え方、僕は好きなんですけど、昔から今と同じ様な考え方なんですか?」

と聞いてみました。

「違うわ。昔は融通が利かなくてね。ちょっとしたことで怒っちゃうことだってたくさんあったよ。今みたいな考え方になったのは 70年間も生きてきた経験。それと本から学んだ知恵ね。昔、職場で起きたミスを私に背負わされたことがあってね。私はミスなんかしてないのに、部長が私を責めたよ。長いものに巻かれるように会社の他の人たちも私を責め始めた。

それは辛かったわ。その時にね、上司の一人が『モーリーさんはやってない!だから大丈夫だよ。』と会社のみんなの前で言ってくれた。彼は周りに流されず、事実を装飾することなく話してくれた。その言葉に救われたよね。ちゃんと見てる人はいる。周りに流されずに味方になってくれる人はいるんだなと思った。烏合の衆じゃないけど、都合によって人は間違った方についちゃうこともあるよね」

モーリーさんも、僕のように今まで納得のいかないことはたくさんあったといいます。今でもそのことをふと思い出すことがあるそう。そういう思い出は、彼の様に50年も60年経っても頭に深く根付いて残っているのです。身近な職場や学校、友達同士でもそういうことはありますよね。


さて、ここで質問です。
モーリーさんの上司のように『正しいことは正しいと言える人』か『間違ったことも自分の都合で押し通す人』もし、あなたならどちらの人になりたいですか?  

あなたがもし後者を選んだとしたら心の中はモヤモヤしませんか?

後悔はありませんか?

ジャッジするあなた自身は後々このことを思い出し、辛くなったりしませんか?


それが積み重なっていけばいくほど、自らの首を絞め続けることになるということを覚えておいてください。

『事実を装飾なく伝える』ということが心の健康には大切です。屋久島の彼のように、その一言で救われる人もいるのです。


「あなたは間違えてないよ。私はわかってるよ」と一言声をかけてくれる人。そういう人になりたいと誓った屋久島の出会いでした。

こんな出来事を日本一周書籍にまとめています。


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