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チーム・ビルディングなんて簡単だ!

人事の仕事をやっていると、チーム・ビルディングをやってほしいと良く頼まれます。
チーム・ビルディングは組織開発の入り口であり基本かもしれませんが、自分たちでやろうとすると心理的なハードルが高いのか、知識がないからなのか、難しいものだと考えている人が結構多いようです。

おそらく「なんらかのノウハウが必要なアクティビティをする」と思っているからでしょう。そのやり方を知らない自分達だけではできないと考えて、それらの手法に詳しい人や外部のファシリテーターに依頼するようです。
本当は外部に頼まず自分達でチームビルティングができることが望ましいんですけれどね。

しかし、よくよく考えるとチーム・ビルディングはそれほど難しいものではありません。凝ったことをやろうと思えばキリがないですけれど、基本的な考え方とやり方がわかっていれば、誰にでもできるものですし、短時間だったとしても十分な効果があります。

このnoteでは、チーム・ビルディングの目的、考え方ややり方、簡単な例、そしていつ行うのが適切なのかについてまとめてみました。

WHY - なんのためにやるのか

チーム・ビルティングはなんのためにやるのでしょうか?
いろいろな言い方ができると思います。
お互いのことを知る。関係性を作る、あるいはよくする。目標やビジョンに対して皆が共通の理解をする。強い組織を作る。助け合いの精神を培う…などなど

ですが、砕けた言葉で一言で言うならば「仲良くなる」に尽きると思います。
文字通り、チームを「組み上げる」のがチーム・ビルディングなので、仲が悪くてそれぞれがバラバラに仕事をしていたり、足の引っ張り合いをしたりと言うことがないようにしたいわけです。

強みを認め合うとか、生産性を高めるとか言われていますけれど、それは仲良くなって一緒に仕事をするようになったかなり先に訪れる結果であって、チーム・ビルディングの目的そのものではありません。

目的については、仲良くなるためだくらい軽く握っておく程度が良いです。
と言うのも、「チーム・ビルディングしたんだから」とかある意味での儀式のようになって一発で終わってしまわないようにするためです。一回のチーム・ビルディングはあくまでのきっかけにすぎません。そこから協働が始まりその中で関係性ができてゆき、関係性が考え方を変え、行動や言動の質を変え、最終的には結果を出すことになるという、ダニエル・キムがいう成功の循環がやっと回り始めるのです。

ダニエル・キムの成功の循環モデル

また、重すぎる期待効果を置くと、チーム・ビルディングの設計も重たくなり、参加する側にとっても重たくなってしまいます。軽い気分で参加できるようにしましょう。

WHAT - 何をするのがチーム・ビルディングなのか

では、何をやるのがチーム・ビルディングになるのでしょうか?
これもシンプルに「何をやれば仲良くなれるのか」と考えれば色々と出てくるのではないでしょうか。

たぶん、仲良くなるために仕事のディスカッションをしている人はそんなにいないと思います。よほどそれぞれが仕事に対して共通の熱い想いでも持っていない限りは。逆にそれがまだできてないからチーム・ビルディングをすることになっているはずですし。

仲良くなるための第一歩はお互いのことをよく知ることではないでしょうか。
つまり、その人の考え方やその背景にある経験、それらを評価するのではなく理解すると言うことです。

ここで「考え方を知る」と言っても、何かのトピックに対してどう思うかを聞くのではなく、その人自身の在り方や信念・価値観を聞いてゆくことになります。信念・価値観というと深くて重いように感じるかもしれませんが、ストレートにそれを聞くわけではなく、話している中身からそれらが感じ取れるように聞くということになります。
そんな対話を生み出すためには必要に応じて、「人それぞれ違いや個性があります。話してくれる人がどんな人で何を大切にしているのかを探るように話を聞いてください。もちろん質問をしてもらって構いません」と前置くのも良いかもしれません。

HOW - どうやるか

もうちょっと具体的に、どんなことをやれば仲良くなるためにお互いを知るようなことができるかというのを考えてみましょう。

お互いがまだよく知り合ってない時に、自分のことを積極的に開示するのは人によってはハードルが高いかもしれません。なので、できるだけ自然にその人のありのままが出てくるようなことを行うのが効果的です。

日系企業ではあまりやらないかもしれませんが、外資ではチーム・ビルディングと称して様々なアクティビティをやります。よくあるのが数日間連続の終日会議の中日あたりに半日ぐらいたっぷり時間をとってチームでやるアクティビティを行い、その後に懇親会をくっつけるパターンです。
それは、ゲームであったり、スポーツであったり、オリエンテーリングであったり、ピクニックであったり、みんなで料理を作ったりとかです。
当然ですが、そういう場では仕事の話はしませんし出てきません。それとは全く関係ない話題が出てきたり、その人ならではのこだわりや想いが自然に表出するようなイベントを組むのです。そう、体面を気にせず、夢中になってしまうことで思わずその人の「素」が出るようなことを。

私の会社では、アジア各国が集まるミーティングでこんな風にバブルサッカーやってました

こんな具合に半日も取ってチーム・ビルディングを行うのは、忙しい人たちからの抵抗に合うかもしれないですね。いい息抜きになってその後の集中力が増しますし、強烈な思い出として残るので、それだけの時間かける価値は十分にあるのですが。

簡単かつ短時間に行いたいということであれば1時間程度でできるアクティビティが良いでしょう。いくつも方法はありますが、ここでは一つだけご紹介したいと思います。自己紹介をちょっと捻ったようなものですので、誰にでもできてしかも楽しくて盛り上がるものです。

カタルタというカードを用意します。
これをめくりながら自己紹介を順に行ってゆきます。8人ぐらいのチーム・ビルディングであれば1時間あれば十分できると思います。

カタルタを使った超簡単なチーム・ビルディング
準備:できれば円卓、できなければ一つの大きなテーブルを囲んだ車座に座ります。
1)最初に「これから自己紹介をしてもらいます。普通の自己紹介と違ってちょっとゲーム的な要素を入れます。」と伝えます
2)「自己紹介で話していただきたいのは、まずお名前、そして出身地(どこからきたか)、今どんな仕事をしているかですが、それに加えて「私の○○○*について」を加えて話をしてください。お一人だいたい3分ぐらいです」
         *ここの中身についてはこのコラムの外に書き出しています
3)と言って、ホワイトボードのようなものに、話してもらいたい四項目を皆に見えるように書き出しておきます。
4)「ひと通り話に区切りがついたら、これから配るカードを一枚めくってください。めくると何か書かれています。それを読んで、そこからさらに話を続けてみてください。カードに書かれているのは、接続詞のように話を続けるための言葉です。例えば「ところで」とか「すると」とかですね」
5)皆が理解した様子を確認したら、「それではこれからカードを配ります。まだ開いてみないでください。話し始めて区切りがついたところで初めて開いてみます。ちょっと戸惑うことがあるかもしれませんが、ゲームですから気軽に行きましょう。あ、そうそうカードは3枚配りますので、区切りがついたら一枚めくって続けて話し、それも区切りがついたらまた一枚という具合に計3回、カードを使って話をつなげることをしてもらいます」と伝え、カードが伏せられた状態で一人当たり3枚ずつカードを配ってゆきます。
6)「みなさん、カードは行き渡りましたか?3枚ありますか?はい、ではどなたから行きましょうか?では、□□さんから行きましょう。□□さんの両隣の方ジャンケンしてください。勝った方の方に順に回っていきます。順番は決まりましたか?では始めましょう」
7)このようにして、一人ずつ順番に話していってもらいます。話終わったら拍手するように促したり、「自分の番で何を話す考えるのではなく、話している人がどんな人なのか何を大切にしてそうなのかを聞くようにしてください。話終わってからの質問もありです」と伝えておくとよりスムーズでしょう。

これは私のオリジナルですが、おそらくカタルタの説明書の中に同じようなことが描かれてると思います

このような自己紹介から発展させたようなチーム・ビルディングは、自然な流れでできるのが良いところです。ゲーム的な要素を入れているので楽しめますし。
「チーム・ビルディングをこれからやります」というと構える人もいると思いますので、単に「自己紹介」とした方が心理的なハードルも下がると思います。

大切になってくるのは何について話してもらうか、ですね。
ディスカッションにならず、相手のことを評価したり値踏みすることにならないようなもの。人によってそれぞれ違っていて当たり前なものとそこからエピソードが広がりやすいものにしておくと良いでしょう。そんなに難しく考える必要はありません。
例えば、以下のようなものです。
・好きな食べ物(最近食べて美味しいと思ったもの)
・私のルーチン
・好きな映画、あるいは小説(ストーリーがあるもの)
・最近買ってよかったと思っているもの

仕事の上での信条とかでも良いのでしょうけれど、ちょっと重めなのでここは軽く話しやすいものが良いでしょう。そういうのはもうちょっとお互いを知り合ってからやった方が効果的です。
進行役からいくつかテーマをあげてその中から皆が良いと思うものを一つ選んでもらうということでも良いかと思います。

テーマが決まったら、それについて短くまとめて語ってもらうのではなく、ストーリーやエピソードとして語ってもらうようにします。テーマ自体はできれば好きなものとかよかったこととかポジティブなものが良いでしょう。そしてなぜそれが良いと思ったのかの理由まで語ってもらってください
実は理由のところにその人の価値観が透けて見えますし、聞いている側も共感がしやすくなるからです。共感は仲間意識をうみ、その人を知っている、自分を知ってもらっていると感覚から信頼関係を育むことにつながります。

まとめるのではなくストーリーとして語ってもらえるようにします

WHEN - いつやるものなのか

さて、チーム・ビルディングについてその目的、考え方、そして簡単なやり方の例をお伝えしてきました。
最後に、チーム・ビルディングはいつやるのが効果的なのかについてもお伝えしておこうと思います。
やるべき状況というのは、三つあります。

一つ目は、チームが新しく立ち上がる時です。
プロジェクト・チームが結成されたとき、それぞれはお互いのことを知らなかったり、これから何が始まるのだろうと不安があったりするかもしれません。
そんな時に、一緒に仕事をする仲間のことを知る機会を持つことは必須になってくると思います。ご紹介した自己紹介の発展形のものが役に立つと思います。

二つ目のパターンは、メンバーに入れ替えがあった時です。
既にいたメンバーはお互いについてよく知っていますが、新しいメンバーはその中に入ってゆくのには簡単ではないかもしれません。敷居を低くするためにも、お互いのことをよりよく知る機会を設定するのは、効果があります。今まで十分知り合っていると思っていたメンバーの意外な面を知ることもできるかしれません。

三つ目のパターンは、チームの置かれた状態に変化が起きた時です。
プロジェクトが暗礁に乗り上げたり、外的な要因などで、それぞれが孤立してバラバラに仕事をしているような状況になってしまっている時に、チームとしてリコネクトしたり、ボンディングを確かめ強めるために行います。

例えば、昨今の新型コロナウィルスの感染拡大でリモートワークが常態化してしまったような場合、今までのように会って話をしたりとしたりということができなくなってしまい、それぞれが孤立しているような感覚を持ってしまうことがあったり、関係性が断絶して皆が勝手に動いてしまっていたりということが起きてしまった時に、チーム・ビルディングをやってみるのです。
例えば「私の自慢のリモートワーク快適グッズ」とか「リモートワークになってから新たに始めたこと」とかを共有するだけでも、その人がどんな人が思い出したり、あるいは意外な一面を発見できたりすることになり、チームの関係性が修復されます。

*  *  *

いかがでしたでしょうか?
目的や基本的な考え方さえわかっていれば、チーム・ビルディングはそれほど構えたり準備をしなくても簡単にできてしまうものです。

鍵は、「いかにして楽しめるようにするか」ですね。
皆が少し笑顔になれ、お互いを知り合えるような時間を作ることができれば、それだけで仲良くなれる素地はできています。

そして、チームは1日にして成らずと覚えておいた方が良いでしょう。チーム・ビルティングのセッションはあくまでもきっかけを提供しているだけです。
最も大切なことは、そこからお互いがお互いに興味を持ち、関係性を時間かけて育んでゆくことということなのですから。

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