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プロセスマップ

前職に居た時にGEからCEOがやってきた時に、幾つかのイニシアチブが同時に走り企業文化が大きく変わってゆきました。
その中で大きな役割を果たしていたのがシックス・シグマでした。
もう17−8年前の話ではありますが、私自身もGreen Beltのトレーニングを受けて幾つかのプロジェクトを走らせ完了させた経験があります。

社内の様々なプロセスを改革することで、品質をあげたり、業務効率を改善したり、果ては売り上げを向上させたりすることにつなげるのがシックス・シグマであり、プロジェクトを進める上で私も多くのことを学びました。

シックス・シグマは元々が工程改善の考え方であり、工程の中にある欠陥(Defect)を見つけ出して、その発生率をシックス・シグマ、つまり100万分の1まで下げることを目的としています。
その手法は統計と密接に関係していて、実験とデータ分析を繰り返しながら、欠陥発生をシックス・シグマのレベルまで下げることをします。

シックス・シグマには様々なツールがありますが、その中で私が今でも好んで使っているのがプロセス・マップです。プロセス・マップは業務の標準化のための分析から始まり、コーチングのツールとしても使える非常に便利なものです。

今回は、マネジャー向けのトレーニングで紹介しているプロセス・マップについて、わかりやすく実践的にシェアいたします。

システム思考 - インプットとアウトプット

プロセス・マップがどのようなものであるのかに触れる前に、プロセス・マップの考え方を理解するのに必要な基本的な考え方、システム思考について触れておきます。
…と言っても、それほどややこしい話ではありません。

システム思考の最も基本的な構造は、インプットとブラックボックスとアウトプット

上の図にあるように、左から真ん中のブラックボックスに何かを入れると右側から別の何かがアウトプットとして出てきます。システム思考の基本のキ、にあたる考え方がこれになります。
事象を機械のようにとらえ、ブラックボックスの中で何らかのアクション(加工であったり、編集であったり)が施されて、入れたものと別のものが出てくる、これを図式化しています。
ものづくりに当てはめて考えてみると、何かの機械(加工機でもオーブンでも)、あるいは人による特定の作業工程に材料を入れて(インプット)出てきたものがアウトプットという関係です。

実際には物作りや作業工程というものは、一つの作業では終わらず、作業の結果出てきたアウトプットが次の作業のインプットになってゆきます。
その状況を視覚化したものがプロセスマップとなります。

プロセスマップの書き方

より具体的にプロセスマップとはどのようなものであるのかを、イメージしやすい例を使って解説してみますね。以下の図は歯磨きのプロセスマップです。

歯磨きのプロセスマップ

4つのブラックボックスが縦に連結してる構造になっています。
各プラックボックスの左側にインプット、右側がアウトプットです。ブラックボックスの中に書かれているアクションを行うと結果としてアウトプットが出てくるようになっています。
このプロセスマップの最初のステップで言うと、インプットは使う前の綺麗な歯ブラシと歯磨き粉がインプットで、その二つを使って歯磨き粉を歯ブラシにつけるというアクションをおこなった結果、「歯磨き粉のついた歯ブラシ」がアウトプットになるわけです。
そして、アウトプットは次のステップに引き継がれるので、次のステップのインプットになっています。この流れがプロセスマップです。このようにして一連の作業がおわるまでのステップをつなげて表記し、それぞれのステップのインプットとアウトプットを明らかにします。

では、これを作るときの手順について説明しましょう。

  1. プロセスのステップを設定する
    歯ブラシのプロセスマップで言うと、「歯磨き粉をつける」「ブラッシングする」「口をゆすぐ」「片付ける」を特定することになります。

  2. インプット側を埋める
    各ステップで必要になるインプットを書き出してゆきます。インプットには有形のモノもあれば、「ブラッシング法」のようにノウハウや手順のようなものを入れることも可能です。

  3. アウトプット側を埋める
    次に各ステップのアウトプットとして出てくるものを書き出します。アウトプットの中には次のステップのインプットになるものが必ずありますが、全てが次のインプットになるわけではありません。

  4. 検証する
    最後にマップ全体におかしなところがないか、ちゃんとフローになっているかを確認します。一つ前のアウトプットの中に次のステップのインプットになっているものが含まれているか、ブラックボックスの中のアクション(特定の行動や作業)は明らかになっているか、などです。

作業の全体像を俯瞰してみるところからはじめ、次に詳細を見る段階で、インプットとアウトプットに注目しながら完成させると言うのが作成の流れです。

プロセスマップの活用法

シックスシグマにおいてプロセスマップは、ディフェクト(Defect=欠陥)がどこで発生するのかを見つけるためのツールになっています。
不良が発生しているのが工程の中のどのステップにあり、そのステップで出てくるアウトプットに欠陥があるとすると、そのステップのインプットに問題があると考えます。

実際のシックスシグマでは、問題を行う原因となっているインプットをクリティカルX(Critical X)と呼び、統計的な方法でそれを見出します。さらにクリティカルXを変数としてみて、どのように変化させるとアウトプットに良い影響を与えることになるのかを実験で確かめることを行います。
何回かの実験を通じて、不良発生を100万分の1とまで行かなくても大幅に改善できるクリティカルXの値を導き出したら、それが継続するように、管理計画(コントロールプラン)を作ってシックスシグマのプロジェクトは完了します。

プロセスマップは汎用性が非常に高いツールですので、私はこれをコーチングのツールに使うことを薦めています。
具体的には、以下の流れです。

1)コーチとコーチィ(コーチングを受ける側)でプロセスマップを共有します。
プロセスマップを一緒に作って、試行錯誤をしながら完成させるのが理想ですが、コーチィ側にアイディアがない場合もありますので、一般的にはコーチが既にあるものを用意するところから始めます。

2)コーチは、プロセスマップの流れを追いながら、各ステップのアウトプットが出ているかどうかをコーチィに聞いてゆきます。仮に出ていたとしてもその品質について本人が満足がいくものになっているか、最終的な成果物に対してインパクトを出すものになっているのかを問います。

3)アウトプットが出ていない、あるいは問題があると言うことであれば、インプットに注目します。結果を出すために何かが足りないのと考えるわけです。

4)インプットが全て揃っているのであれば、アクションの取り方に問題があることになりますが、アクションが適正に取れていないのは何らかのノウハウややり方(ハウツー)を知らないと考え、そこに対して手を打とうとしたほうがより具体的になるでしょう。

プロセスマップをコーチングに適用する例です

メーカーの製造プロセスの工程改善で主に使われるプロセスマップですが、流れがある作業であれば、サービスであっても社内のオペレーションであってもプロセスマップで表すことは可能です。
例えば、セールスのプロセスにも適用できますし、事務書類の承認フローなどにも応用が可能です。

同一部門で一つ作っておけば、その部門内で別のプロセスマップを作るときにも0から作らなくても、いくつかのプロセスステップやインプットやアウトプットは共通化できるものがあるはずなので、既存のプロセスマップのマイナーチェンジで対応できる場合も多く出てきます。

さて、簡単に作れるように書いてきましたけれど、複雑な作業プロセスになるとプロセスマップ作りはものすごく頭を使いますし、何度も何度も作り直してやっとまともなものができるような代物です。
なので、慣れないうちは比較的単純なもので作ってみるようにするか、最初に大まかなプロセスマップ(ハイレベル・プロセスマップと呼びます)を作り、その中のステップ一つずつを別々のプロセスマップ(サブ・プロセスマップと呼ぶこともあります)として作って行ったほうが良いかもしれません。

いずれにしても、暗黙知で何となくやっていた作業を見える化し共有するのにとても役立つのがプロセスマップです。
新入社員の効果的な教育にも使えますし、作ること自体はマネジャーやリーダーの良い論理思考トレーニングにもなります。
ぜひ、試してもらえたらと思います。

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