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東日本大震災から13年 いまだ続く課題  防災費 避難所運営 地震保険・・・ 問題山積み   

 2万2000人以上が亡くなった戦後最大の自然災害である東日本大震災の発生から11日で13年が経過した。地震発生時刻の11日午後2時46分、被災地で手を合わせ、黙とうをした。

 現地ではインフラの復興が進むものの、東京電力福島第一原発事故の影響により現在もなお約2万9000人が避難生活を送っている。遺族らは、今年元日に起きた能登半島地震にも思いを寄せる。

 東日本大震災は2011年3月11日午後2時46分に発生。三陸沖を震源とするマグニチュード(M)9.0の巨大地震だ。

  警視庁によると、今年2月末時点で全国の死者は1万5900人、行方不明者2520人に及ぶ。復興庁によると関連死は昨年末時点で3802人だった。

 避難者は、災害発生当初の推計47万人からは減少したもの、いまだ2万9000人。福島県については、7市町村県、2.2%で帰宅困難区域が残る。

 防潮堤の完成率は、岩手、宮城、福島3県合計で99.3%。災害公営住宅、道路、鉄道といったインフラの整備もほぼ完了した。

 被災した農地のうち営農再開可能な面積は、96%にまで回復。産業面については、製造品出荷額などの指標については回復しているものの、水産加工業の遅れが懸念されている状態だ(1)。

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決して十分ではない防災費


 2023年版の最新防災白書によると、2023年度の防災関連予算は約1兆6000億円で、これは前年度の約3兆円と比べてほぼ半減した数字。

 ただし、この数字はあくまで初期の速報値であり、今後補正予算や予備費を通じて増額される見通し。

  防災予算が最も多かったのは、1995年度で、阪神大震災の直後に急増して約7兆5000億円に達した。その後は減少していたが、2011年度の東日本大震災の後には、再び約4兆7000億円まで増加。

  そして、2024年度の能登半島地震を受けて、再度予算が増加することが予測されている(2)。

  防災や震災復興のために多額の予算が割り当てられてきたが、その使用が常に適切であったかについては疑問視されてきた。

  とくに、能登半島地震の被災者支援のために約47億円が一般予備費から支出されることになったが、予備費は国会審査を経ずに政府の裁量で使われるため、使用目的が問題視。

  一方、2024年度の防衛予算は約7兆9000億円と過去最高となる見込み。国家の安全と防災を守るための予算としては、どちらも重要な役割を持っているが、そのバランスや透明性については今後も議論がしていかなくてはならない。

 
避難所運営に欠ける女性の視点


 災害避難所についても、女性の視点がかけていることは問題視されている。過去の災害では、避難所の運営を担うメンバーはどうしても男性が多くなりがちだった。

  自治体などの地域自組織では、普段から男性は責任ある形ある立場になるのが当たり前とされ自然と男性は「運営」を、女性は「炊き出し」を性別役割的に固定されることは多かった。

 しかしながら運営に女性が加わらないと授乳専用スペースや男女別の更衣室設置といった問題が生じる(3)。

 日本では大規模な災害が起きると、学校の体育館が避難所に転用されるケースが多い。しかし、他の先進国ではこうした対応はあり得ない。

 トイレやシャワーは、移動のコンテナ式でスタッフによって清潔に保たれて、なかにはコインランドリーや子どもの遊具を備えた避難所も。食堂も、巨大テントで、キッチンコンテナで調理したばかりの料理を口にできる(4)。

 日本は「災害後進国」。この言葉を肝に銘じなければいけない。

地震保険 加入率6割 台湾、トルコは一部義務付け


 日本は過去多くの地震が発生しているのにもかかわらず、地震保険に加入率は6割程度にとどまる。

  地震保険は地震、噴火、津波やそれによる火災で家や持ち物に被害が出た時、特定の条件の下で保険金が支払われるもの。

 ただし、この保険は単独で加入することはできず、火災保険とセットで加入する必要がある。保険料は火災保険に上乗せして支払う。

  日本損害保険協会によると、火災保険に加入している人の中で地震保険にも加入している割合は全国平均で約69.4%であるが、過去に能登半島地震の被害を受けた石川県では約64.7%、最大震度5強の地震があった富山県では約63.5%と、平均よりも低かった(5)。

  一方で、他国では地震保険への加入を義務付けている場合も。たとえば、台湾では火災保険を契約すると自動的に地震保険にも加入する仕組みになっており、トルコでは公的な建物や村を除いて都市部などで加入が義務化されている(6)。

  しかし、対して日本の場合、損保会社が、利潤が織り込まれていない地震保険を勧める動機が乏しく、地震保険の加入率がなかなか増加していない。


(1) 西日本新聞「不明なお2520人」2024年3月11日付朝刊、1項

(2)西田直晃、岸本拓也「どうなってる?国の「防災予算」 災害大国の日本、この使い方で本当にいいのか 防衛費は過去最高だけど…」東京新聞、2024年1月12日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/302150

(3)大坪実佳子「「女性は1人で出歩かないで」への違和感 避難所、安全な環境作りを」朝日新聞デジタル、2024年1月9日、https://digital.asahi.com/articles/ASS196QZ6S19UTFL012.html

(4)榛沢和彦「「体育館を避難所にする先進国なんて存在しない」災害大国・日本の被災者ケアが劣悪である根本原因」PRESIDENT Online、2022年3月10日、https://president.jp/articles/-/55248

(5)高田奈実「地震保険の加入率に地域差 石川、富山が低い理由 東京は…」毎日新聞、2024年1月7日、https://mainichi.jp/articles/20240106/k00/00m/020/002000c

(6)日本経済新聞「地震大国、保険加入は35%」2024年2月24日、https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=123&ng=DGKKZO78729620T20C24A2PE8000

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