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ゲーマー歴35年のダンジョン紀行#11『マップ作製ソフトからダンジョンを見る。(2022年3月版)』


▼ローディング。テーブルに大きな紙を広げて。

 3月は半ばで急に温かくなり、関東では20℃を超える地域も出るほどでした。かと思えば、下旬には一桁の気温に戻ったりと、まさしく三寒四温の候でした。体調を崩して寝込む日もありました。”家の中でゲームをする”、と言うのも体調が万全であってこそ。特にボードゲーマーは人と向き合って遊ぶもの。時節柄に関わらず、常に体調には気を付けていきたいものです。

 当アナログゲームマガジンでは、アナログゲームにまつわる様々な事柄を掘り下げていく執筆陣が集まり、一ジャンルを詳しく解説する記事に始まり、攻略記事、ルールの記事、第一線でアナログゲームを制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語っているマガジンです。
 当記事は、異色のダンジョンコラムとして楽しんでもらえたら幸いです。

 ダンジョンと言えば、陰湿な洞窟や、迷いの森、或いは堅牢な城塞や、異次元の空間まで、現在においては様々なフィールドが存在しています。
 それらを作るRPG愛好家は、一体何を使ってその想像力を書き留めるのでしょうか。白い紙でしょうか、あるいは方眼紙、もしくはExcel?
 そこで注目するのが、ダンジョン作成用のアプリケーションツール(※コンピューターの演算機能を利用するもの。以下:ツール)です。いまやこの世には数えきれないほどのツールに溢れております。これらによって、ダンジョンはどのような種類に縛られるのか。そして、ツールによって、どのように想像力が補強されているのか。アナログなRPGを主眼にしつつ、さまざまなツールを見て行こうと思います。

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▼B33F:ローグ系ダンジョンの自動生成

 まず、ダンジョンを作成するツールとして、『rogue』系のダンジョンそのものを思い浮かべます。ダンジョンを”自動生成”するツールと言い換えてみましょう。
 その実態は、ランダムな部屋を、ランダムな通路で繋いだ一階層を無限に生成し続けるプログラムです。また戻る階段はなく、ひたすら奥へ奥へと進むダンジョンが作られます。与えられたリソース(体力やアイテム)を駆使しながら、ひたすらハック&スラッシュをする――まるでパズルを解き続けるようなダンジョンを作成するツールです。
 無限にダンジョンを作り続ける夢のようなツールではありますが……このダンジョンはこの形式のダンジョンしか作れません。マス目で部屋の広さ、通路が決まり、障害も報酬もランダムに配置され続けます。
 ひたすらハック&スラッシュを続けたい――そういった快感を求める人のダンジョンしか生み出すことができません。
 もちろん、ローグ系ダンジョンは長い間愛されているので、このダンジョンは素晴らしいものではあります。ですが、『多様性に溢れるダンジョン』を『作り出すツール』と言う観点で見ると、このダンジョンツールは難しい所があります。
 特に、堅牢な守りの城塞や、邪神を奉る教会など、人工の建物を背景としたダンジョンを作る際に、その不自然さは一目瞭然です。ダンジョンの部屋や通路に物語性がないため、ひと部屋ひと部屋に理由付けがなされません。(ランダム生成なのですから)このダンジョンには”物語性”が薄く、そこには”異質さ”が付きまとっているのです。
 ツールが進化し、そこもランダムながら生み出すことができたら……と想像は楽しいですが、残念ながらそのような夢のツールはありませんでした。

 もちろん、今回はダンジョン作成ツールとして、ダンジョンを作る人の目線で考えてみます。この”異質さ”を想像力の助けにして、【人間とは違う思考を持った何者かが作り出した場所】と考えてみるなどはできるでしょうか。例えば、魔界に住む魔物の住処とか……?

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▼B34F:疑似3Dダンジョン作成

 続いて、ウィザードリィ系列のダンジョンの作れる疑似3Dダンジョン作成ツールです。ダンジョン作成ツールを調べると、不思議と数がありました。(上記はダウンロードして触ることのできた、数例を挙げているにすぎません)
 この形式のダンジョンは、方眼紙のマス目のような地図があり、そのマス毎に、四方が壁かどうか、また扉か。床は落とし穴が無いか、イベントとして敵が出るか宝箱があるのかなど、設定を詰めていく形になっています。
 そのマス目を移動していくことで、向いている方向を示す”一人称視点”がゲームとしてはメインのプレイヤー画面になります。この点において、プログラム的な処理が楽しさの根幹をなしており、華麗なグラフィックを必ずしも用意する必要が無い、と言うのが一つポイントのように感じられました。
 (※だからと言って不要と言う訳ではもちろんありません。特に、一人称視点が美麗なグラフィックであればダンジョンへの没入感は高まります。ただ一方で、簡略化した場合は、壁が線のみで表されたりされており、そうだとしても十分に疑似3Dダンジョンの意味を成しているのが、このダンジョンツールのすごいところです)

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