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大河ドラマ「どうする家康」第21回雑感 ~絶望の籠城戦の中の希望~

籠城戦を続ける長篠城。

ここが武田方に落ちれば、岡崎、浜松を分断する上でも、また織田領の東美濃への攻略拠点としての楔ともなり、織田、徳川の分断をいよいよ招きかねない。
これは徳川家の存亡に関わる事態となろう。
徳川家康にとっては何がなんでも長篠城を死守しなければならない。

僅かな手勢で、大軍の武田軍相手に籠城戦を続け何とか持ちこたえているのは奥平勢である。

それにしても、籠城戦というのは非情というか実に厳しい戦いである。

特に守城側にとっては、まず大軍を相手にしないといけない。
城に籠もり、ひたすら耐える。
兵糧、武器も限りがある。
周りの情報は全く入ってこない。
味方が援軍を送ってくれるのか?
無惨に見捨てられるのか?
いつまで戦いが続くのか?
全く目標というかゴールが見えない戦いなのである。

人間は、見通しとか先行きがはっきりしていれば、かなりの困難は乗り切ることができるというが、何も将来を見通せない絶望の中では戦う気力を持ち続けることは不可能であろう。

そうした厳しい戦いを続けていくには、リーダーの覚悟と城兵の相互の信頼関係、そして絶望の中での希望をいかに見出すかだろう。

長篠城の城主、奥平信昌は、武田方に付いていたが離反、徳川方に付くにあたり、人質であった妻、弟らを勝頼に殺されている。
今更武田に降ることはない。
既に覚悟を決めているとはいえ、これは徳川の援軍の希望があってのことである。

外部からは全く情報は遮断され、孤立無援状態である長篠城では、武田軍と戦う以上に、不安と絶望、徳川への不信との戦いであったろうと想像する。

当然、そういう状況を攻城側は見逃さず、心理戦を仕掛ける。
デマを流したり、内応工作、調略を仕掛けたり、和睦を匂わせたり…
様々な工作によりますます守城側は疑心暗鬼になって追い詰められていく。
実にいやらしい戦いとなりがちなのである。

鳥居強右衛門は、自分を犠牲にしてまでも、「援軍は来る」というメッセージを長篠の仲間に確実に伝えた。
絶望の中で戦う者たちに、希望と勇気を与えた。
間違いなくヒーローである。

ドラマでは、一度は武田の言うとおり「援軍は来ない」と言ったものの亀姫の存在から思い直したと描かれていた。
実際は、想像を絶する絶望の中をひたすらに耐える仲間を純粋に思う、裏切れないという気持ちであっただろうと個人的には思っている。

後世「武士の鑑」と顕彰されたヒーローである

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