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 甘いものが食べたくて、だけど家になにもなかったから近くの自販機で甘い飲み物を買うことにした。
 夜、家を出るときに感じる非日常な感覚。シンとしたマンションの廊下を灯すオレンジの光。夜に玄関の扉を開くたび、なぜかホテルに泊まっているような気持ちになる。ホテルの廊下を満たしている静けさに似ているのだとおもう。エレベーターの駆動音が昼間よりも響く。
 自販機で温かいカフェオレを買った。カフェオレが飲みたい気分になったから軽率にそれを選んだけれど、そのせいか、眠れない。

 深夜帯に外に出るとき、いつもすこしだけどきどきする。ひとがいない商店街を煌々と照らす白い蛍光灯。ひとも車も通らない静けさ。目に見える景色ぜんぶじぶんだけの世界になったかのような、特別な気持ちになれる。わたしはびびりなのであまりその空間に長居ができないのだけれど、安全なら夜の散歩などしてみたい。むかしから憧れがある。

 もうずいぶん旅行をしていないな、とおもう。ひとり旅の、自由で行き当たりばったりで孤独な非日常を感じたい。知らない土地を歩き、知らない電車に乗り、知らない景色を見たい。ホテルの廊下や部屋を満たしている静けさを感じたい。いま暮らしている家だってとても静かだし、街にもまだまだ知らない場所や景色があるのだけれども。

 ベッドで横になってもまったく眠れず、とうとう眠ることを諦めて、いまこうして文章を打っている。
 ことしの秋は、どうやらさみしい。
 さみしい、と感じるだけの余裕ができたのだなぁともおもう。
 さみしいと、なんだか無性になにかを食べたいとおもってしまう。さみしさは永遠に続く空腹だ、とこういうときによりつよく感じる。とくにお腹が空くわけではない。ただなにかを食べたい。なにかを埋めたい、が正しいのかもしれない。ふしぎだ。食欲の秋ってそういうこと?

 朝になれば穏やかに晴れて、そのころには眠れるだろうか。もういっそのこといちにち起きて睡眠調整をしたほうがいいかもしれない。
 秋のあたたかい日があるうちに、身近な非日常を感じたいな。