見出し画像

いろんな魚のひれ酒を飲み比べて喜ぶ

旅行に出かけてちょっとした旅館なんかに泊まると、夕食のオプションで「ひれ酒800円」とかがあったりして、旅の開放感から、いいね、ひれ酒、旅行ぐらいでしか飲まないもんね、ちょと高いけどせっかくだし、と調子づいて人数分頼むと、たいてい運ばれてくるのはちっちゃい器で、「え、少なっ」と悲しくなるものです。

それでも、まあこんなのは雰囲気雰囲気、となんとなくうやむやにしてきた結果、結局ひれ酒って美味いんか?値段と合ってるんか?実は雰囲気だけの奴じゃないんか?と、よく分からないまま、この歳まで生きてきてしまいました。ニンゲン、失格です。

ここはひとつ、ひれ酒と正面から向き合おう。ひれ酒について卒論が書けるぐらいになろう。

ということで、いろんな魚のひれ酒を作って飲み比べてみます。いざ。


3魚種のひれ酒をつくる

ということで早速ひれ酒づくりに取り掛かります。ひれ酒といえばフグあたりが定番でしょうか。果たして他の魚でも美味しいのでしょうか。

幸い自分は雑多な魚をこまごまと釣り帰って喜ぶ性癖があるので、魚のヒレには事欠きません。参加選手は以下の3名です。

エントリー① 真鯛
エントリー② オオモンハタ
エントリー③ イサキ

いずれも、出るところに出れば高級魚として尊ばれるお魚様です。煮て良し、揚げて良し、生食良し、と料理法を選ばない魚界のスーパーエリートたちです。

ひれ酒は1日にしてならず

さて、ひれ酒といっても一体どのようにつくるのか。なんとなく、切ったヒレを炙って日本酒に入れるぐらいのことは想像できます。しかし具体的に作れといわれると何から手を付ければいいか分からず途方に暮れてしまいました。早速Googleなんかで調べてみたところ、ざっくり以下の手順で事は進むようです。

①ヒレをキッチンペーパーに広げて貼り付ける
②最低3日ほど天日干しにする
③干したヒレを弱火でじっくり炙る
④日本酒は70℃以上の熱燗に。安い酒で十分
⑤熱燗に炙ったヒレを入れてフタをして蒸らす
⑥旨味が溶けだして酒が琥珀色に色づいたら飲み頃

だいたいこんな感じでした。ヒレの旨味成分であるアミノ酸などが溶け出す温度が70℃以上だそうで、日本酒はかなり熱々に燗をつけます。まあそんなに難しいものではなさそうなので、早速準備に取り掛かります。

3魚種のヒレをキッチンペーパーに貼りつける

まずは、各魚のヒレをキッチンハサミでチョッキンして、キッチンペーパーの上に広げて貼り付かせます。天日干しにするためです。

ヒレは尻尾、胸ビレ、腹ビレなどどこでも良いようですが、少し身もつけて切っておくと、後々炙った時により旨味が出やすいようです。

カンカン照りのなか天日干し

したらば、切ったヒレを天日干しにします。最低3日は干した方が臭みの元になる水分が抜け切って良いようなので、一旦ヒレのことは忘れて、車のオイル交換をしたり、電球を変えたりして暮らしに追われます。

たくさん集めたくなるヒレ

そうこうするうちに4日ほど経ちました。ヒレたちはすっかり水分が抜けてカサカサに。良い頃合いです。そしてなんかかわいいです。部屋に飾りたい。イヤリングやブローチにしても素敵かも。道で猫ちゃんとすれ違う時にサッと差し出したりして。その前にハエが寄ってきそうだけど。

包むと一気に漂う漢方感

さらに、万全の状態でヒレ酒を飲み比べできる日まで冷蔵庫で保管します。ヒレが混ざらないように魚の名前を書いておきました。漢方薬みたいや。

日曜夜、ヒレ酒決行の日

ヒレ酒飲み比べは週末と決めていました。なぜなら久しく日本酒を呑んでいないので、悪酔いして翌日の仕事をしくじり、取引先の信頼を損ない失職、虫歯の治療もできないぐらい暮らしが困窮し、結果前歯が全部ない独居老人になるのを避けるためです。

幸い日曜に息子くんと奥さんがお出かけして夜まで帰ってこないという奇跡のような一人時間が巡ってきたので、思うさま台所を散らかしつつ、ヒレ酒をつくり堪能します。いざ。

満を持して封印を解いたヒレ。左:真鯛、右:イサキ 中央:オオモンハタ

①真鯛のひれ酒

まずは真鯛から炙ります

一番手は王道の真鯛さんです。ヒレは弱火でゆっくりじっくりと炙ることで、香ばしさや風味が際立つそう。家庭用コンロだとすぐ焦げるので、網の上にキャンプ用ガスバーナーの火力を分散させる網を乗せて炙りました。それでも結構すぐ焦げる。

同時に、日本酒の熱燗も準備します。湯煎なら沸騰して火を止めたお湯に3分以上徳利を置きます。電子レンジなら500Wで1分ほどチンします。徳利がアチチです。

そしたら手頃な湯呑に熱燗を注ぎ、炙ったヒレを入れます。炙ったヒレがジュッと音を立てて日本酒に沈み、いやがおうにも期待感が高まります。適当な皿やアルミホイルでフタをして2~3分蒸らします。

アルミホイルを取ると、熱燗が琥珀色に色づいています。旨味です。旨味が具現化した色です。かなり贅沢にたくさんヒレを投入したので、琥珀色も濃いです。

肝心の味はというと、これはもうお酒というより、上品で芳醇なお出汁を飲んでいるよう。ふくよかな旨味が口に広がり、ついで熱燗のふわっとしたお酒の香りが鼻から抜け、「はあ~~~」とお風呂に入った時のような声が漏れ出ます。ヒレ酒ってこんなに美味いのか。

なんとなく予想はしていましたが、真鯛はやはり魚の王様。変なクセもなく、五角形グラフでいうと全部が5点満点のきれいな五角形になるようなバランスの良さで、誰もが「美味い!」という万人にオススメできるヒレ酒です。

合間合間に身がついた部分をかじるのも楽しい

②オオモンハタのひれ酒

さて、つづいてはオオモンハタのひれ酒です。これはひそかに一番楽しみでした。ハタ系の魚は火を通すと良い出汁が出て一層旨味が増す気がしているので、きっとヒレ酒も美味しいはず。

ちょっと小ぶりな尻尾と各種ヒレを炙ります。
真鯛よりも濃厚な琥珀色

真鯛よりもヒレの量は少ないにもかかわらず、濃厚な琥珀色になりました。それだけ旨味が強いのでしょうか。飲んでみると、真鯛よりも出汁成分があきらかに尖っています。ただ、全体のバランスでいうと、真鯛のほうが優れていて、「結構魚好きだわ俺」という人向けかもしれません。魚の出汁特化型のひれ酒でした。

③イサキのひれ酒

さあさあ、最後は釣ろうとしてもなかなか釣れない良いサイズのイサキ様です。イサキの塩焼きの時に、その皮目の香ばしさは経験済です。真鯛とおなじくバランス型だと予想されますが、果たして。

イサキのひれ酒

今回試したなかで一番大きな尻尾だったこともあり、どっしりと重厚感のあるヒレ酒でした。真鯛のバランスの良さをさらに増幅させたようなふくよかさ。お酒の量に対してヒレの量が多すぎたのかもしれませんが、もはや酒ではなく出汁です。これに塩ひとつまみ入れたら吸い物やん。

ということで、今回3魚種のひれ酒を飲み比べてみました。個人的には真鯛が一番オススメでした。

自分でつくると、ついふんだんにヒレを投入して、濃厚になる傾向があります。それが良いかどうかはともかく、ヒレを干したり炙ったりする行程も楽しいですし、魚種はもちろん、酒の温度やヒレの量を調整したりすることで味の変化を楽しめるのは、自作ならではです。

今後ももっといろんな魚で試してみたいです。多分ですが、炙った煮干しでも美味い気がします。要は出汁が美味い魚ならなんでもいけそうです。

おまけ:肴は小アジの南蛮漬け

今回、日曜夜のひれ酒にそなえて、早朝に小アジを20数匹釣って南蛮漬けをつくっておきました。旨い酒に旨い魚で最高のひとり家時間を楽しむためです。

朝釣れ小アジちゃんたちを
160℃の低温で7~8分じっくりと揚げ
お酢・みりん・しょうゆ・砂糖に、焼きネギ、玉ねぎ、唐辛子をいれた漬けダレに
揚げたそばから入れていく
冷蔵庫で1週間ほどもつ常備菜に

聞いた話では、マゴチのひれ酒がとびきり美味らしいので、夏が終わる前に釣って試したいものです。以上、ヒレ酒の夜でした。

▼釣りすぎている魚たちのいろんな顛末たちはこちら


この記事が参加している募集

釣りを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?