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夏のハタ釣りで極上の清蒸(チンジャオ)を作る

需要のある魚を釣らねば



世の中は需要と供給で回っているのであって、欲しい人がいるからそれを作る仕事が成り立つ、というのを理解しないで自分の想い、情熱だけで、海で拾った流木でこけしを大量に作ったりすると、誰も欲しがらないどころか「これもう捨てていい?何に使うの?」などと鬱陶しがられるだけなので注意が必要です。

奥さんに似せて作ったこけし。心の底から嫌そうな顔をされた

と、これは釣りにもいえることで、需要のある魚を釣って帰らないと「え、またカマス?もう飽きたんだけど」みたいなことになり、釣りに行くこと自体が歓迎されない風潮が家庭内に広まり非常にマズイ。

需要のある魚を釣らねば。それは何か。

我が家で最も喜ばれる魚「オオモンハタ」

それは、ハタだ。海の底の方の岩の間などにいる根魚で、釣りのジャンルではロックフィッシュなどと呼ばれます。

超高級魚の「クエ」もスズキ目ハタ科でハタの仲間ですが、クエの旬はクエ鍋で知られるように冬。そして今は夏。あかんやないか、と思うのは早計です。

ハタ族は種類が多く、幸いなことに、自分が住む三重の南の方の岩礁帯の海では、夏が旬のオオモンハタやアカハタが陸っぱりから結構釣れます。

ハタ族のなかでも美人のアカハタ

以前、船釣りが趣味のお隣さんに頂いた立派なオオモンハタが美味すぎて家族全員腰を抜かし、しばし放心して以来、我が家でのハタ需要は高止まりしたまま推移。「あーまたオオモンハタが食べたいなあ」と時折り呟く奥さんの姿を目にして、これだ!と閃いたわけです。

夏のハタを釣って凱旋する。それこそが需要と供給のマッチングだ、と。

悪天候のがよく釣れる

夜中の港は少し怖い。馴染みの猫ちゃんが出迎えてくれた

てなわけで先日から下見を重ねてきたポイントへ、1日半のハタ釣りの旅に出かけたのでした。

海に着いたのが夜中の3時。こんな時間でも他県から来られた方たちが夜釣りをしています。夜空は小雨模様。馴染みの猫ちゃんもいる。こんばんわ。

暗雲と霧が立ち込める幻想的な朝マズメ

朝5時。夜明けの時間帯は朝マズメと言って魚の活性が高まり、最も釣れやすいチャンスタイムです。しかしあいにく厚い雲が垂れ込めて結構な雨が降っている。土砂降りと言っていい。

しかしこれまでの経験上、天候が悪い時ほど魚がよく釣れるものです。

釣り仲間によると、雨が海面に当たる音が小魚が跳ねる音に似ているから大きな魚が寄ってくるとかなんとか……。真偽の程は分かりませんが、穏やかに凪いでいる海より多少雨風のある海の方がよく釣れるというのは釣り人共通の意見です。

案の定……

ワーム丸呑み

雨の中ずぶ濡れになってワームを投げていると、いきなりガツンと本命のオオモンハタのアタリが。ハタは小型でも引きがとても強い。オオモンハタは遊泳力が高く、底より上の中層を泳いで貪欲に小魚を追いかけるので、ルアーやワームにもよく食いついてきます。

豊漁

その後天気も回復して、順調に釣果を伸ばします。狙った魚が狙った通りに釣れるのは嬉しいものです。

足元の岩の間に潜むアカハタも。強い引きだった

昼前にはすっかり抜けるような青空に。蝉たちがここぞとばかりにジージーと鳴きだし夏感満載。水面から飛び出したハタが頭上に舞い上がり太陽と重なった刹那「これぞ俺の夏休みっ!」と体が震えた。冷たいお茶をゴクゴク飲む。ウマイっ!

※根魚は成長が遅いので小さい子はリリースしました。大きくなったらまた会いましょう。

禍福は糾える縄の如し

しかし、好調だったおっさんに不幸が訪れるのは時間の問題でした。

世の中のおっさんは大抵調子に乗ると痛い目に遭うように設計されています。

年少の若者に「僕は最近チャーハンに凝っててね。実はチャーハンはパラパラよりもネチョネチョの方が美味いんだよ」とドヤ顔で語っていたら、実はその若者は有名中華店の料理長で、休日にはフリーのチャーハン講師もしているチャーハニストだった、とか、若い頃の体力と勘違いして高いところから飛び降りて足をぐねる、などその事例は枚挙にいとまがありません。

案の定……

何匹目かのオオモンハタを釣り上げた後に突然リールが回らなくなり、釣りの続行が不可能に。なんてことだ。今釣れてるのに!まだ初日の午前なのに!

仕方ない、ボロボロのリールだったしこの機会に買い換えよう!こういうのは勢いだ!と片道50分かけて釣具屋に。

新しく買ったシマノのミラベルC3000HG。軽さが売りのリール。メジャクラの鯵道5G S832FCと合わせてハタゲームにぴったりのライトタックルが完成

リールを買って戻ってきたら、午後からは嘘のように釣れなくなり、ハハハ、まあこんなもんだよ人生、全然平気、と強がりながら初日を終了。車の中でボソボソとカレーを食べて泥のように眠ります。夜は涼しくなり車中泊もずいぶん楽になりました。

独居老人の食事風景

翌朝も3時に起きて釣りを始めます。暗いうちはイカを狙ってエギを投げるも反応なし。夜明け頃からワームに変えてハタを狙うと昨日より良型のオオモンハタが早速ヒット。

ハタのほかに青物のシオ(カンパチの幼魚)、ワカシ(ブリの幼魚)も釣れた 。陸っぱりの釣りとしては上々
ひなびた漁港に響く蝉の声。夏の釣りだ。ポカリが美味い

釣ったハタで青蒸(中華風蒸し魚)をつくる

ハタは顔もハンサム

キロあたり2500円で取引されるというオオモンハタ。持ち帰ったのは多分合計3キロは超えているので下代で約7500円。ワハハ、得した。高級魚をタダでゲットした。人生はこのように卑劣に姑息にサバイブしていくものだ。

と下衆なことを言う者は阿呆です。大体タダではなく、高速代、ガソリン代、リール代、釣り具各種代などもろもろ諸経費を考えると大損こいているのです。ふるさと納税とかで買った方が絶対お得なのです。

それでも大漁大漁と喜ぶのが釣り人の狂った金銭感覚。恐ろしいこと。

ともあれこれで、中華風蒸し魚「青蒸(チンジャオ)」を作っていくのであります。いざ。

型のいいハタとネギを用意します。この料理はタレを吸ったネギが隠れた主役なので、これでもかというぐらい皿に盛ります
ネギの千切りの上に飾り包丁を入れたハタを乗せて、生姜とニンニクをぱらつかせます
網をしいた鍋に少量の水を入れて魚を盛った皿を置き、蓋をして10分蒸します
蒸しあがった魚に、さらに追いネギを盛って、オイスターソース、醤油、お酢を大さじ一杯ずつ回しかけます。最後に熱したごま油をジュワッとまわしかけて完成

もともと清蒸という中華料理には、主にアカハタが用いられるそうなので、真ん中にアカハタを据えて主役にしました。味は相変わらず間違いのない美味しさです。

アカハタはとても上品であっさりして柔らかい身ですが、個人的にはオオモンハタの方が旨味が濃く、身の弾力もあって好みでした。

その他の小品料理たち

メインのハタの中華蒸しができましたが、魚はまだまだあります。ということで、いくつか小品を作ってまいります。

この奇妙なものは・・・

この奇妙なものは何かといえば、ブリの胃袋です。正確にはブリの幼魚の胃袋ですが…。以前カゴ釣り名人の人に教えてもらったのですが、ブリの胃袋をよく洗って千切りにし、バターと塩胡椒で炒めるとそれはもう絶品なのです。

小さすぎて焼くとこんだけに。でもやっぱり美味い。焼肉のミノに似ている。酒飲みにはたまらないものです。

奥さんのリクエストでオオモンハタの刺身と・・・

シオとワカシの漬けも。

煮魚が好きな息子くんにはオオモンハタの煮付け。

全5料理。ヘトヘトです。

今回13匹ぐらい持ち帰りましたが、調子に乗って釣りすぎると、「え。。またオオモンハタ?もう飽きたわ。次は蛸が食べたい」とか言われるので要注意。消費者はいつだってワガママです。

さて、お盆が過ぎたらいよいよ秋のトップシーズンがやってきます。次は何を釣ろうかな。


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