ビジネスとITの関係

電卓のような「道具」存在からビジネスの「舞台」へ

数十年前はコンピューターやITというものは全て研究者や専門家しか扱えない電算システムと呼ばれていた時代がありますが、この頃はITはあくまで道具であり経理などで使う電卓のような存在でした。1990年後半の10年はITなんてなくても企業は回るからと言っている方も多くいました。今もいるとしたら恐ろしいのですが・・。

いつしかそれが「ビジネスの根幹」の情報システムという形になり、企業そのものの存続に関わる重要な存在になりました。

この根幹の仕組みを支える部署が情報システム部という存在ですが、ビジネス側にとってはコストがかかる金食い虫という印象を未だに引きずっているそれは「道具の分際」だったころを知っている今や経営層にあたる年齢の方、またはその諸先輩方の背中を見て育った我々のようなミドル層は疑いもなしにITは情報システムの仕事だと思い込んでいます。どれだけ金を使えば気が済むのか?と。

しかし昨今のようなITが構成するデジタルな時代においてはもはや道具ではなく、「ビジネスの舞台」になっています。

これまでは企業の競合他社の位置づけは自社と同規模の企業の商品・サービス・製品を横目に見て戦えばよかったのですが、その同規模の企業が突然ビジネスの舞台であるデジタルを味方につけた途端にその競合他社ははるか遠い先の次元に行ってしまい、いつしかそういった企業は競合として競り合っていたのが懐かしいと言われるような状況になります。よって今相手にしている企業もこのVUCAの時代にデジタルトランスフォーメーションを得た企業は爆発的に成長する脅威があるという事です。

またデジタルの舞台においてその脅威を持つ企業はその規模を問いません。ベンチャーや小さな会社、中小企業も巨人に立ち向かう事ができます。実際に大企業がベンチャーをお手本にして商品・サービスを提供している例も多くあるのではないでしょうか。

そしてデジタルの舞台は地球上で全てつながっていて、他国が容易に参入してきますし、前述のギョウカイのキョウカイを超えてくる企業も同様に同じ舞台に参入して来ることができます。

このように競合他社の脅威がひしめき合っている先の見えない現実において、ビジネス側の人間はデジタルを前提にビジネスを考えなければならないという事です。いつまでも「ITとかデジタルってアレルギー」とか「IT部門、何やってるんだ!」とか「AIとかビッグデータでよろしくやってくれよ。」などとビジネス側がほざいているような企業は程なくして淘汰されるでしょう。

以前、私が仕事をしていて非常に驚いたと言いますか、ショックだったのは私の好きな食品系の商品のメーカーのチーフデジタルオフィサー(CDO)と呼ばれる方にお会いしたときに、「デジタルトランスフォーメーションってさぁ、うちは食品だから関係ないんだよ。やんなきゃいけないの?」という強烈な発言を冒頭で食らい、1時間のご面談だったところを、15分で退席させて頂きました。本当に日本では有名な企業なのに残念でなりません。このような内容の話は山ほどあるのでそれはまたの機会に。

デジタル○○室

企業は何となくデジタルという言葉を取り入れなければならないという漠然とした危機感があり、デジタル○○部、デジタル○○室というような部門や前述のCDO(チーフデジタルオフィサー)DXO(デジタルトランスフォーメーションオフィサー)というような役職が登場し、このデジタルに向き合う機能を設置している企業が5年ほど前からよく聞くようになってきましたね。当初はCIO兼CDOという位置づけが多く、デジタル○○も情報システムの人間が主体となっていた時代もありましたが、昨今はビジネス側のバックグラウンドをもった人たちがこの役割に従事しています。これは少なくともデジタルはビジネス側が主体となるべきであると気づき始めた企業と言えます。

おそらくですがあと数年したらこういった部門もビジネス部門そのものがデジタルの要素を当たり前のように考えられるようになり、消えていくのではないでしょうか。海外の方にデジタルXXディビジョンとかいう部署名を持った企業を知っていますか?と聞くと私のコンタクトした一般の企業ではあまり聞いたことがありません。これは海外の企業が既にデジタルを自分事として考えられるように成熟したのか、日本が進んでいてこの後に海外でもこういった部署が出来てくるのか、正直良くわかりません。

いずれにせよデジタル〇〇は過渡期に存在する部署だと思います。

スピードという単語、それに関連する単語

今を正しく生きている企業の経営層やデジタル○○であれば、真っ先にこの言葉を常に発しておられるのではないでしょうか?

スピード。日本語だと色々な意味をごっちゃにして「スピード感をもって」とか「スピードが遅い」という言葉を使っていますが、もはやあまりにもよく使われすぎていて背景化、常に聞こえる単語として説教されているとかさらっと流れて行くような単語になってしまっています。誰もがどんな時にも言い続けているから、聞こえてくるからでしょうかね。「宿題しなさい」「飲みすぎ食べ過ぎに注意」などと同じ類に。

とにかく企業にはこのスピードという言葉に関連するもの事を欲しています。

英語の単語ではSPEED以外にもその状態を表す単語は

SPEED、QUICKNESS、AGILITY、RAPID、FAST、SWIFTなど、たくさんありますが面白いと思ったのはこの単語はそれぞれ状態の意味合いがある事でした。日本語でも俊敏、機敏、迅速、高速、急速、とありますがどれも同じような意味にあると思いませんか?物事が動くときの状態を表しているように聞こえます。私は国語が得意だったわけでもないので、専門家の方から言わせれば違うわボケ、と言われてしまうかもしれませんね。

ただ英語の単語においてはいろんな意味合いがあると海外の友人から聞いたことがあります。

SPEED,AGILITY & QUICKNESS

この言葉はよくスポーツを本格的にされていた方なら知っているかもしれませんが毎年健康診断でメタボFと診断される私からするとほど遠い世界でした。辞書を調べても俊敏、機敏とか前述の言葉で訳されていてその意味合いはあまり書いていないのですが、SPEEDは物理的な速さの単位を表しており、QUICKNESSはAの状態からBの状態に移るSPEED感を言っているとか。対してAGILITYはAの状態に置かれたときに素早く判断をしてBまたはCの状態に遷移するSPEED感と言われています。

スポーツトレーニングにおいてもこのトレーニング方法って全然違うようで梯子を使ってチャカチャカ走っているシーン、よく映像で見たことがあるかと思います。QUICKNESSは筋トレとか走り込みになるんでしょうか。AGILITYは梯子の中から足がはみ出ないようにとか、ある法則のエリアにしか足を持っていけない、コーンを置いて右へ左へなど頭の判断とリンクしているようなトレーニングがあるようです。

ビジネスに必要なスピード

企業としては少なくともこのAGILITYを持っておかなければならないのではないでしょうか?このVUCAの時代に判断決定を素早く行い次の一歩を俊敏に出していく、色々な意味をもって使われている方も多いのかと思いますが、私はこれをビジネスアジリティと呼ぶことにします。



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