vic isono

パブリックドメイン小説の独自翻訳を行っています。パブーやKindleストアでも「イソノ武威」名義で電子書籍を販売中。本サイト(http://sekichiku.mysite.com/honyaku/top.htm)

海賊ブラッド (26)ムッシュー・ド・リバロール

キャプテン・ブラッドは、トルトゥーガ島から出航した時点においても未だ不機嫌な様子であり、プティ=ゴアーブの湾で停泊した時にも尚、その不機嫌は続いていた。そのような気分のままに彼がムッシュー・ル・バロン(男爵)・ド・リバロールを出迎えたのは、五隻の武装帆船で構成された男爵の艦隊が、遂にバッカニア(海賊)達の船と並んで錨を下ろした二月中旬の事であった。航海に六週間を要した事について、このフランス人は悪

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海賊ブラッド (25)ルイ王

一方、ビショップ大佐がトルトゥーガ島制圧に乗り出す三ヶ月ほど前、その胸中に地獄を抱え込んだキャプテン・ブラッドは、冬の強風に先んじて岩に囲まれた港に姿を現したが、それは彼が出航する前日にポートロイヤルを発ったウォルヴァーストンのフリゲート艦が到着する二日前の事であった。

 その小じんまりとした停泊地で、ブラッドは彼を待ち受けていた自分の船団――小アンティル諸島沖で強風の為に分断された四隻の船と、

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海賊ブラッド (24)戦争

ポートロイヤルから5マイルの海上、既にジャマイカの海岸線も霞んで見える距離でアラベラ号は帆走を止め、曳航していたスループ船も共に停止した。

 キャプテン・ブラッドは強制的に迎えた客人をラダー(梯子)の上端まで案内した。二時間以上を死の不安に苛まれ続けていたビショップ大佐は、ようやく安堵の息をついた。そして恐れの潮が引いて行くにつれ、この不敵なバッカニア(海賊)に対する根深い憎悪が元通りに流れ始め

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海賊ブラッド (23)人質

ピーター・ブラッドは総督邸のポルチコ(柱廊式玄関)に入り、痛みと怒りに塞がれた目で、ポートロイヤルの広大な港を超えた向こう岸に隆起しているいくつもの緑の丘、更にその向こうにある陽炎に揺らめくブルーマウンテンの尾根を凝視していた。

 彼の到着を知らせにやっていた黒人下男の帰りで我に返ったブラッドは、この下男の後について館を通り抜け、裏手のピアッツァ(広場)に出ると、屋敷の影でビショップ大佐とジュリ

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海賊ブラッド (22)敵意

全世界の海軍の全艦船を停泊させてもあまり有るポートロイヤルの広大な港に、アラベラ号は錨を下ろした。右舷前方4分の1マイルには、どっしりとした砦の円塔[註1]がそびえ立ち、左舷後方二鏈(約370m)の距離には、ジャマイカ海軍の小艦隊を構成する六隻のマン・オブ・ウォー(武装帆船)が控えており、アラベラ号はほとんど囚人同然の趣があった。

 アラベラ号の真横、港を超えた向こうには、この堂々たる町を構成す

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