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パブリックドメイン小説の独自翻訳を行っています。パブーやKindleストアでも「イソノ武威」名義で電子書籍を販売中。

マガジン

  • ラファエル・サバチニ資料集

    ラファエル・サバチニ関連の断片的な試訳と雑文など。

  • ラファエル・サバチニの『ボルジアの紋章』(全三話)

    英国の作家ラファエル・サバチニによるチェーザレ・ボルジアを狂言回しにした中篇集『The Banner of the Bull』の独自翻訳

  • ラファエル・サバチニの『ボルジアの裁き』(全七話)

    英国の作家ラファエル・サバチニによるチェーザレ・ボルジアを狂言回しにした短篇集"The Justice of the Duke"(1912年初版刊)の独自翻訳

  • 翻訳古典小説無料版

    全文完全無料作品をまとめました。有料作品の無料試読分はそれぞれのマガジンでどうぞ。

  • The Lost King 失われし王 ルイ=シャルル Ⅰ

    『スカラムーシュ』『海賊ブラッド』のラファエル・サバチニ作の古典小説 The Lost King(初刊1931年)の独自翻訳。ルイ・ダヴィッドの弟子にして王党派の密偵でもある画学生ラサールは、バッツ男爵の指令により幽閉された少年王ルイ17世の誘拐を企てるのだが…

最近の記事

『The Life of Cesare Borgia チェーザレ・ボルジアの生涯』ラファエル・サバチニ著(1912年初版刊行)序文

序文 これは聖人たちの年代記ではない。悪魔の歴史書でもない。欲望にまみれた、絢爛たる時代。血によって赤く、白熱する激情によって青白く染められた時代。鋼鉄と色鮮やかな天鵞絨、まばゆい光と一寸先も見通せぬ影の時代。迅速な行動、無慈悲な暴力と高い努力の時代であり、鋭い対比と鮮やかな対照の時代。これは、そのような非常に人間的で激しい時代を生きた、非常に人間的で激しい人々の記録である。  今世紀という、冷静で、慎重かつ品行公正な――我々が自認する処によればであるが――立脚点から、こ

    • 覇者の愉悦~『ボルジアの裁き』より

      覇者の愉悦ⅰ  チェーザレ・ボルジアの権力と栄光は最盛期にあった。既に彼は裏切り者の傭兵隊長たちの始末を済ませていた。その者たちは反旗を翻し、一時は彼の動きを封じて覇道の歩みを遅らせたのみならず、その覇業を無に帰させしめる危険性すらあった。彼はシニガッリアに仕掛けた罠に鳥もちを塗り、そして――フィレンツェ共和国の書記局長マキャヴェッリの言葉を借りれば――楽しげな口笛を吹いて其処に彼らを誘い込んだのである。彼らが容易く誘い出されたのは、己の立場を誤解し、自分たちが猟師であり

      • 『スカラムーシュ』英国オリジナル版 第Ⅲ部 第ⅳ章 幕間狂言

        はじめに今年は英国で "Scaramouche" が刊行されてから丁度100年ということで、日本で翻訳刊行されたバージョンからはカットされている章、オリジナル版では第Ⅲ部第3章「議長ル・シャプリエ」と第4章「ムードンにて」の間にはさまっていた CHAPTER IV. INTERLUDE をざっと訳してみました。 オリジナル英国版についてはこちら↓ 第Ⅰ部 第1章の未訳部分についてはこちら↓ 第Ⅲ部 剣  第ⅳ章 幕間狂言 数日後、ル・シャプリエがアンドレ=ルイの許に返礼

        • サバチニ歴史夜話 タイランニサイド~シャルロット・コルデーとジャン・ポール・マラー

          THE TYRANNICIDE ~ Charlotte Corday and Jean Paul Marat  タイランニサイドとは、彼女の行為を表現するに際してアダム・ルクスにより用いられた言葉である。彼は彼女の最も崇高にして最も精神的な意味における恋人であった――なにせ彼は彼女と言葉を交わしたことは一度もなく、彼女は彼の存在を全く知らなかったので。  その霊的なる情熱は、自らの行いの帰結として護送車に乗せられ断頭台に向かう彼女を目撃した時、突如として彼を燃え立たせたので

        『The Life of Cesare Borgia チェーザレ・ボルジアの生涯』ラファエル・サバチニ著(1912年初版刊行)序文

        • 覇者の愉悦~『ボルジアの裁き』より

        • 『スカラムーシュ』英国オリジナル版 第Ⅲ部 第ⅳ章 幕間狂言

        • サバチニ歴史夜話 タイランニサイド~シャルロット・コルデーとジャン・ポール・マラー

        マガジン

        • ラファエル・サバチニ資料集
          13本
        • ラファエル・サバチニの『ボルジアの紋章』(全三話)
          7本
          ¥200
        • ラファエル・サバチニの『ボルジアの裁き』(全七話)
          11本
          ¥250
        • 翻訳古典小説無料版
          22本
        • The Lost King 失われし王 ルイ=シャルル Ⅰ
          10本
        • ラファエル・サバチニの『海賊ブラッド』
          36本
          ¥450

        記事

          ラファエル・サバチニの"The Strolling Saint 彷徨の聖者"

          続スカラムーシュ以外も、「翻訳予定には入れてないけれど紹介しておきたい作品」に関する記事を #未訳 タグでアップしていくことにしました。 “The Strolling Saint” by Rafael Sabatini (First Published 1913) 16世紀イタリア、ゲルフとギベリン(教皇派と皇帝派)のパルマとピアチェンツァをめぐる争いを背景にした青年の成長譚。1913年(大正2年)初版刊行。 サバチニはこの前年にチェーザレ・ボルジアの評伝"The Lif

          ラファエル・サバチニの"The Strolling Saint 彷徨の聖者"

          番外編 ジェレミー・ピットの恋

           セッジムーアのあの悲惨な夜以来、ピーター・ブラッドと運命を共にしてきたサマセットシャーの若き航海長ジェレミー・ピットの恋愛沙汰は、ブラッドのバッカニア(海賊)としての活動後期、五隻の船からなる船団を率いて様々な国籍が入りまじった千名を超える者達を配下とし、彼の技量と強運に服した部下達が厳しい規律に進んで従っていた最盛期の日々に起こった事件である。  ブラッドはつい先頃、リオ・デ・ラ・アチャでスペインのパールフリート(真珠交易船)に対して行った大成功の襲撃から戻ったばかりだ

          番外編 ジェレミー・ピットの恋

          海賊ブラッド短編集紹介

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          海賊ブラッド短編集紹介

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          サバチニと剣戟映画

           1920年代から1950年代の剣戟映画ブームに乗って、サバチニ作品は英米で多数映画化されています。  1916年に米国のスタジオで短編小説が映画化されたのを初めとして、"The Gates of Doom(1919年)"、"The Tavern Knight (1920年)"、他幾つかの短編を基にした作品を英国の映画会社が次々と製作。  1923年にはサイレント時代の名匠レックス・イングラム監督により『スカラムーシュ / Scaramouche』がラモン・ノヴァロ主演でハ

          サバチニと剣戟映画

          名誉革命とバッカニア達の時代

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          名誉革命とバッカニア達の時代

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          訳者あとがき

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          訳者あとがき

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          ラファエル・サバチニ 戯曲『The Tyrant』脚本序文

          序文  小説であれ演劇の脚本であれ、フィクションを執筆する者にはリアリティのある描写というものが要求される。それが掛け値なしの事実そのものである必要はないが、しかし少なくとも尤もらしさは必須であり、そのような説得力が欠けていれば興ざめになってしまうのだ。歴史研究者に関しては、このような制約は課せられていないように見受けられる。「フィクション」として差し出せばあまりにもご都合主義が過ぎるといわれ、軽蔑と共に拒絶されるものが、「実話」であるといえば、到底ありえない矛盾だらけの逸

          ラファエル・サバチニ 戯曲『The Tyrant』脚本序文

          『スカラムーシュ』英国オリジナル版第Ⅰ部第ⅰ章 共和主義者 冒頭

          はじめにラファエル・サバチニの代表作『スカラムーシュ』は英国で刊行されたオリジナル版とアメリカで刊行された短縮版の2バージョンが存在したのですが、流通量的には圧倒的に米国版が多く、現在では英国内で新たに刊行される際は米国版を底本としている模様。 海外で翻訳される場合の底本もほとんどが米国版で、日本で現在手に入る大久保康雄 訳と、加島祥造 訳はどちらも米国版が元になっており、恐らくこれまで英国オリジナル版が翻訳された事はないのではと思われます。 五年ほど前にこの件を知り、続

          『スカラムーシュ』英国オリジナル版第Ⅰ部第ⅰ章 共和主義者 冒頭

          Turbulent Tales 悪業物語

          Queen's Quorum クイーンの定員 ラファエル・サバチニの『Turbulent Tales 悪業物語(1946年初版刊行)』は、 エラリー・クイーンが1845年以降ミステリジャンルで刊行された個人短編集のうち、もっとも重要な106冊をセレクトした『Queen's Quorum クイーンの定員』の中で、 歴史ミステリ短編集の代表的一冊として挙げられています。 クイーンの評によると、 歴史的重要性(Historical Significance) 文体とプロットの独創

          Turbulent Tales 悪業物語

          ラファエル・サバチニの歴史夜話

          サバチニ歴史夜話は「歴史実話を極力創作要素を排して短編小説形式で描く」をコンセプトにしたシリーズ。とりあえず収録作品の概要だけ書き出しておきます。 The Historical Nights' Entertainment, 1st Series(1917年刊行) I. THE NIGHT OF HOLYROOD〜The Murder of David Rizzio ホリールード宮殿の夜 ~ダヴィッド・リッチオ殺害 スコットランド1566年、メアリー・ステュアートの秘書ダ

          ラファエル・サバチニの歴史夜話

          サバチニとボルジア家

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          ラファエル・サバチニの『Captain Blood 海賊ブラッド』Kindle版発売中です

          縦書き・ルビ付き・註へのジャンプ可 海賊ブラッド:His Odyssey(翻訳版) 「スカラムーシュ」のラファエル・サバチニ(Rafael Sabatini, 1875年4月29日 ― 1950年2月13日)による活劇小説の名作 "Captain Blood: His Odyssey (1922年原著初版刊行)"の独自翻訳。 1685年イングランド。アイルランド人医師ピーター・ブラッドは、モンマス公の乱に参加し負傷した患者を治療した責めを負い、自らも謀反人としてバルバド

          ラファエル・サバチニの『Captain Blood 海賊ブラッド』Kindle版発売中です