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時代の変わり目には家電も壊れる(2019.4.29.)

いよいよ平成も大詰めで、世間はどことなく年の瀬に似た落ち着きのないソワソワ感が漂っていて気持ち悪い。
毎年、大晦日に「今日が明日に変わるだけだというのに、なんだか気分一身とか、都合が良すぎるよな」と内心では思っている。でもそういうことを口に出してしまうと、日頃の嫌われ具合に拍車をかけるだけなので、黙っているが。

天皇陛下が退位され、皇太子が皇位を継承するのにかこつけて、「ついでだからあれこれと切り替えちゃえ」という感じが、いささかあざとく感じるのだ。
そんな世間の流れに冷ややかな目を向けていた罰なのか、昨晩、急に冷蔵庫が壊れてしまった。

冷凍庫は常温の密閉箱と化し、パン粉やらスパイスなど、冷凍の必要のないものの仮置場になってしまっている。
よくもまあこんな時代の変わり目に、計ったように壊れたもんだと感心すらしてしまうが、家電が壊れるのはいつも唐突で、無言のうちに壊れると決まっている。

かつては「ソニータイマー」なんて揶揄されたものもあったが、保証期間を越えたところでちゃんと壊れるならば、その正確さは賞賛されてもいい(さすがに1年は短すぎるか)。
「保証期間3年、期間を越えると7割ぐらいの確率で壊れます」といったら、結構信頼されたんじゃないかと思う。
僕は買おうとは思わないけれど。
というのも我が家の家電はやたらと寿命が長いのである。
今回壊れた冷蔵庫は今年で27年目。電子レンジは29年目だ。

消費電力とかサイズとか機能とか、買い替えを検討する理由はいくつもあったんだろう。でも、冷蔵庫は冷えればいいし(凍るのはもちろん)、電子レンジは温めたり、解凍できたりできればそれでいい。
その機能が生きているうちは、買い換える理由が僕にはなかった。

新しいものはどこかしら機能が改善されていたり、新しい機能が追加されたりしているのだろうけど、どうしても買い換えなきゃならないほどの変化ではない。
毎年、新しい製品が売り出さないと、開発者の存在理由がなくなってしまうとか、会社が回っていかないとか、そういう自己都合みたいな側面もあるんじゃないかと思う。特に家電業界では。

だって8Kのテレビとかって要ります?
そりゃ鮮明な映像を見られるなら、それに越したことはないかもしれないけど、ベテランになった女優さんの首のシワとか、目元とか、野球中継のボールの縫い目が見えたところで、それほど嬉しくもなければ、必要も感じない。
冷蔵庫の機能が新しくなっても、女優さんのシワもボールの縫い目も見えるようにはならないだろうけど、買い換えるほどではないかなと。

さりとて冷蔵庫のない生活はさすがに厳しいので、慌てて新宿の家電量販店に行ってきた。
しかし、ゴールデンウィークの混雑で、設置は最短で5月7日になってしまうと言われた。
ザ・お手上げ。
消費税が上がるわけでもないのに、改元だからって家電品を買い換える意味なんてないでしょうにねえ。
と心の中で悪態をつきつつ、新しい時代の幕開けから1週間ほどは冷蔵庫のない生活を送ることが確定した。

僕が生まれた時には、まだ我が家には冷蔵庫がなかったそうだから(僕は昭和39年生まれ)、奇妙な巡り合わせで新しい時代の始まりに、自分が生まれた頃の生活を疑似体験することになったわけだ。
その日に必要なものだけを買って、ちゃんと使って余らせず、きちんと食べる。若き日の母たちが日々体験していたことを、今の僕が体感するのは悪いことじゃなさそうだ。

と、ポジティブなことでも考えてなければやってられない。

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