見出し画像

*なーちゃん

これはZINE用に書いたものの最終的に掲載しなかった文章です。ZINEに関してはこちらをご覧ください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あの子は何してるのかな〜と時々気になるのは高1、高2で同じクラスだったなーちゃん。1年生の頃のクラスは女子十数人全員仲良いという不思議なほど平和なクラスで、2年生のクラスは綺麗に二分されていた。

1年生の時は席が前後で、私もなーちゃんも吹奏楽部に入ったからそれなりに仲が良かった。高校の吹奏楽部は初めて楽器を始める人も多いなかで私となーちゃんは楽器経験者。私はその環境が嫌で5ヶ月で退部しちゃったんだけどなーちゃんは部長になって最後まで楽しんでいたな。私は退部しても吹部の子と仲よくて文化祭での演奏の時に手伝い要員で参加させてもらうこともあった。高校の制服は女子はスカートとスラックスが選べる。学年でスラックスを履いていたのは3人ほど、内2人がうちのクラスだった。なーちゃんともうひとりの子。最初は珍しいから「スラックスかっこいいね〜」なんて声が聞こえるけど数日もすればそれは当たり前のように馴染んでた。

中高一貫校に高校受験して入った私は一年生時は外部から入学した生徒だけのクラスだった。それが2年生になり、内部進学生も外部生も交わったクラスになる。なーちゃん以外ほとんどが知らない内部生の中で、外部生の私はぼんやりとクラスを見ているとすでに女子は大体2つに別れていた。バリバリの運動部、言動も強い系のグループと帰宅部やオケ部などのどちらかといえばおっとり?系のグループ(二つのグループが仲が悪いわけではない)。帰る方向が一緒だったこともあって、私はおっとり系の子たちと仲良くなった。お昼を一緒に食べようと誘ってくれる。私は一人で食べたいときもあったけれど、教室にいると一緒に食べないといけないような感じがしたからそんな時は「あ、今日図書委員会あるんだ」と言って委員会室で本読みながら食べていた。もともと”グループに属する”ことが苦手なわたしは小学生の頃から特定の仲の良い子がいても、あらゆるグループを横断するようなタイプだった。それでもガツガツ運動系グループとは気は合わなそうだ。だからと言って帰宅部グループとずっといるのも嫌だ(←普通に一緒に帰ったり、休みの日に映画観に行ったりしてた関係性で仲がよかったけれど、ずっと一緒に行動するのが嫌だということね)。そんな毎日。
なーちゃんはよく授業を休むようになる。保健室にいたり、部室にいたり。4月中に修学旅行のグループを決めなければいけない。女子は2人か3人のグループを作る。一緒にいる時間はおっとり系の子たちとの方が長かったけれど、なーちゃんと同じ班になりたかった(その方が人数的に収まりがいいのもあった)。なーちゃんとは放課後一緒に帰るわけではなく特別仲がよかった訳ではないけど何も気を使わなくていい。ラインで「きーちゃん誰かと一緒になる?」って聞かれた時は「あ、なーちゃんと同じグループになるものかと思ってた」と返信したっけな。結局同じグループになる。なーちゃんは「修学旅行行きたくないなー」となんども言ってて、その度に「いや、なーちゃんいなかったら私班別行動の日男子4女子1になるから流石にしんどい」みたいなことを言い合っていた。

修学旅行中の私となーちゃんは他から見ると不思議だったと思う。クラス単位での行動の時は私はおっとり系のグループの子といたり、同じコースを回っていた他クラスの仲が良い子のところに行ったり。別行動。班行動の時はもちろん一緒で色んなこと話して楽しかった。男子4人に外で待っていてもらって、ガラス細工の工房でアクセサリーを眺めていた。ホテルに向かうバスの中、先生が部屋番号を言ったら返事をして手をあげて鍵を受け取る。私は寝てるふりをしてた。先生は私たちの部屋番号を呼ぶ。なーちゃんも返事をしなかった。「二人とも寝てるか、、、あとで渡すか」と言ってホテルについたときに渡された。「さっきバスの中で鍵配ってた時寝たふりしてたんだよね」となーちゃんに言うと、ははっと笑った後になーちゃんも寝たふりをしてたと言っていた。多分そういう所の気があった。ホテルについて部屋の乾燥がひどかったから湯船にお湯を溜めたり、タオルを濡らして部屋に加湿器のようにおいたりきゃっきゃした後、なーちゃんは別の部屋の友だちのところに行った。私は部屋でアニメ「ドリフェス」を見る。結局4日間そんな感じで一緒にいたり、別行動したりだった。居心地がよかった。

修学旅行後のなーちゃんは授業に出たり出なかったりで、それでも部活は毎日行ってたと思う。私も特になーちゃんに干渉することもなく、というかこれまでと変わらない関係性だった。

3年になって私となーちゃんは別クラスになった。数ヶ月経った後母から「なーちゃんいじめられてたの?あんた知ってたの?」と聞かれた。驚いた。確かに授業に出たり出なかったりだったけれど。いじめ?母が、なーちゃんのお母さんから聞いた話だと、体育の授業前に着替える時クラスの女の子にズボンを下げられることが何度かあったということだった。その光景は一回見たことがある。もともとなーちゃんはクラスで着替えることが少なかった。トイレで着替えるか、別のところで着替える子だった。まぁ嫌な人もいるよな、と思ってたから特に何かを言ったりはしなかった。そんななーちゃんが珍しく教室で着替えていた。そのズボンを下ろすことをした子は運動部の口が強いタイプで時々「なーのスカート姿見たいな〜」とねちっこく言う子。私から見れば「あーまたなーちゃんめんどくさいのに絡まれてんなー」と思ってた。私もその子に体育の授業中絡まれることがあった。私は典型的な運動が苦手な女子の走り方だから、それをいじられる。自分でも自分の走り方は気持ち悪いし、あいつ性格悪いなーと思いながら「うち超運動音痴なんだよね〜」と笑いながら交わしていたけれど、なーちゃんにとってはいじめだったのかわからない。私が見たのは一回だけだったけれど他にも何回かあったのかな。わからないけれど。身近なところでいじめがあったこともショックだったし、そのことに気がつかなかったこともショックだった。

高校を卒業した後に1年生で同じクラスだった女子でサイゼに集まった。浪人生の子もいたから、人が入れ替わり立ち替わり大体5人はいたかな。なーちゃんが本当に修学旅行行きたくなくてきーちゃんと同じ班でよかったわーと言ってくれた時は嬉しかった。なーちゃんは精神科のようなところに通っているそうだ。自分の性別に関して親がわかってくれないとか、学校のトイレは男女別だから駅にあるオストメイトトイレまで走らないといけないとかいつも通りのテンションでそんな話をした。誰かが「うちらがなーちゃん」ってちゃん付けするのも嫌?と聞いたらそれは嫌じゃないらしい。

なんとなく居心地がよかったなーちゃんとは連絡を取ってなくて、もう2年近く会ってない。元気かな。LINEのタイムラインを見るとなーちゃんがずっとしたかった勉強ができる大学に通っていることがわかる。あの時のなーちゃんには何もできなかったから、今のなーちゃんが元気だと良いなと願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?