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ドラマの監修という仕事

2018年、当時運営していた店のウェブサイトの問い合わせにTBSさんからメールをいただいた。
新しくはじまるドラマの監修依頼の打診で、最初のメールには簡単な概略などが記載されていて、文末には「まだ出演者はお伝えできませんが、プライムタイム枠なのでそれなりの出演者の予定になっております」といったことが書かれていた覚えがある。

タイトルは、「義母と娘のブルース(仮)」とあった。

とにかくお話を伺わないことには、できるか否かもわからないので後日、助監督、関係者の方数名に日比谷の店までお越しいただき、監修という仕事内容について説明いただいた。
このとき、「監修料が・・・」と仕切りに気にされていたけれど、「これまで他の依頼もそうですが、ぼくはそこでやる、やらないは決めませんから。おもしろそうと思えるか、思わないかでしか決めません」とお伝えし、結局引き受けさせていただくことになった。

おもしろそうと思い引き受けたものの、初めて経験するドラマの監修は想像以上の大変さだった。
舞台の一つとなるベーカリー麦田の厨房レイアウトからその周辺の小道具の選定など、この辺りまでは自分の店づくりと同じでまだ楽しい。
その後、プロデューサー、助監督から準備稿データ(最終的な決定稿になる前の台本)と共に怒涛の勢いで質問や助言を求めるメールが届く。

S-○
パン屋の時間によっての様子です。
ご指導いただければと思います。

S-〇〇
売上に関して、商店街のパン屋としてはいかがでしょうか?

S-〇〇
〇〇ページ、亜希子さんの考察は正しいでしょうか?
より亜希子さんが優秀な人に見える工夫はできますでしょうか?

〇〇ページ
最初の亜希子のセリフ。○○に入る言葉というよりも、こんなニュアンスのセリフを作りたいのですが、アドバイスいただけますか?

〇〇ページ
晴美のセリフ。こちらの案をいただけますか。
猪本という子持ちの女性が好きという設定なので、そうゆうパンが良いかと。
なお、このシーンに出てくるものはモノとして見せたいです。

〇〇ページ
麦田のセリフ。
そもそもこんなことがあるかわかりませんが、
もし言えるとすると、どういうセリフになりますか?

〇〇ページ
亜希子のセリフ。専門店というならば・・・のくだり。
大丈夫でしょうか?商店街のパン屋であるならば、という観点で監修いただければと思います。

と、これはごく一部だけれど、具体的なものから抽象的なものまで毎話こんな感じで送られてくる。
おまけに連ドラだからとにかくスケジュールがタイトなため、準備稿データが届いたら急いで台本を読み、前後の文脈やセリフを考慮しながら助言をするけれど、当然一つひとつの質問などに対し返信は意図や理由、説明などを含むためかなりの長文になる。
はじまって早々に、こんなに大変なのか、これ続けることできるかな・・・と不安になったところへ、プロデューサーの飯田さんから返信が。

とても丁寧な考察ありがとうございます。
(中略)
監修の方で、これだけ丁寧にご対応いただいたことがあまりなく、正直とても感激しております。

この一言がモチベーションとなったけれど、本当に大変なのはここからだった。

つづく

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