2013年10月13日の日記


 今陸奥宗光のことについて猛烈に調べている。この熱がいつまで続くかはわからない。しかしとにかくやれるところまではやってみようと思う。今の私はさまざまな不安にとりまかれていておびえている。とにかく何か熱中することが必要なのだ。

 それにしても陸奥宗光という男は何なのだろう?長生きした分坂本竜馬よりもずっと外の世界を見て、ずっと波乱万丈の人生を生きているではないか。しかし竜馬とは違って何を目的としているのか、何を理想としているのかわからないところがある。私には彼が一種のリアリスト、マキャべリストのように見えることがある。…さらに踏み込んで言ってしまえば昭和初期における日本の暴走の遠因が、どうも陸奥宗光にあるように見えて仕方がないのである。…まだうまくいうことはできないが…


 まあこれは日記だ。日記には私自身のことを書くとしよう。…今日は何があったか?…朝からさばの塩焼き定食を食べ、コーヒーで頭脳をフル回転させ、返却する前にフローベール書簡に最後にもう一度だけ目を通した。…しかし朝は何をしていたかいまいち思い出すことができない。

 居間で本を読んでいると窓の外からみこしをかつぐ男たちの野太い音が聞こえてきた。太鼓をたたく音や笛をふく音もまじっている。景気のいい祭りの音で、思わず外に出て見物しにいこうかと思ってしまったぐらいである。
本当にあの笛の音は…なんというか人を行動にかりたてる魔法の音である。

 そういえば昨日、川原をランニングしている途中、高架下のダンボールハウスのそばで男が尺八だか笛だかを吹いているのを見た。サックスなどを吹いているのはよく見かけるが、日本の楽器を演奏しているのを見たのは初めてであった。あれは一体なんだったのだろう?祭りの関係者がたまたまあそこで練習していただけだったのだろうか?それともホームレスが祭りのために誰に頼まれずとも吹いていたのだろうか…?後者の方が文学的ではあるが、真相は闇の中である。

 昼はホットドッグだった。最高だった。小さめのコッペパンに裂け目をいれ、そこにトマトであえた玉ねぎをみじんぎりしたものをたっぷりいれる。そしてそこにゆでた太いソーセージをはさみ、かぶりつく。アメリカはろくでもない国だがひとつだけゆるぎない功績がある。…それはホットドッグを発明したことだ!というのは私の持論である。

 午後は少し昼ねしてから16時ごろから外出する。本を返して、陸奥宗光伝などを借りてからちょっと散歩したかったので川原まで歩く。まだどこかからか神輿の音は聞こえてきた。私は音だけを聞いて、むしろ実際に見るよりも膨らまされた神輿の姿を思い浮かべながら橋を渡った。どこか遠くで男たちが神輿をかついでいる。そしてそれを町の人間がやんややんやと騒ぎながら眺めている。そのことがなぜかうれしくてたまらなかった。西の空には薄くピンク色の帯ができていた。雲がないときにはそんな感じの色合いの夕焼け空となる。


 例の島に私は向かった。そこからさらに下におりて川原をしばらく歩いた。西の空はだんだんと黄色に近いオレンジ色にそまっていった。私が雲がいくらかあって、きらきらと輝く夕陽の方が好きだが、これはこれで悪くないと思った。石に囲まれたせせらぎに映る西日の色がなんだかとても神秘的であった。…野球場のベンチに座って少し夕陽を見ていた。

 その後帰宅した。風呂に入って鶏肉とカキフライと納豆を食べた。


 それからはずっと陸奥宗光研究に没頭していた。

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