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発明家

電車の中で

20代前半の頃です。その頃私は編み物を習っていて、その日も大きな荷物を肩に下げ、電車に乗っていました。
特急電車はやはり混んでいて、通路で立っていました。時刻はお昼過ぎ。
丁度後方から強い日差しが差し込んでいる頃。2人席の窓際に座っている男性のお客さんの後頭部に、まるでお茶の水博士のような円形の後頭部にその陽射しが直撃していました。年齢のせいか少々脂ぎった地肌がジリジリとしているようです。
私は、「なんだか焦げそうな....」気がして、ちょっと斜め後ろのカーテンを閉めました。するとー

「どうもありがとう。あなたが閉めてくれたんですね。」とその男性客は振り返り、他にも人はいるのに何故か、後方にいる私とわかったようでした。不思議です。
「ここに座りませんか?」荷物があったので、遠慮なく「はい、ありがとうございます。」
「座ってくれてありがとう。近頃は素直な人が少ないから、あなたのようにすぐ座ってくれると嬉しいですね。」「はぁ、どうも」

魚は寒いのか?

「ところで、魚はいつも水の中で、寒いと思いませんか?」「えっ!」
「僕はなんとか魚に服を着せてあげたいと思うんですよ。」
「魚に服を....ですか。」
「そうです。ずっと研究しているんです。今九大と共同研究してるんです。」
(しまった。私はちょっと変わった人の話し相手になるのかな?終点まで...)
その人は、これまで発明したもの、これから発明したいことなどを次々に話しています。

ようやく終点。
「では、今日はどうもありがとう。今からNHKで九大の連中と打ち合わせなんですよ。じゃ、」「そうですか。さよなら。」

奇遇

その翌日。「あっこの人❗️」
朝日新聞の福岡版に『街の発明家』として紹介されていました。大きな写真入りの記事です。内容も私に電車で話したことがありました。
(こんな奇遇なことがあるんだなぁ。)
きっと知らないだけで、その人の発明品を見たり買ったり、使ったりしているのかもしれません。だって、偶然ってありますから。ね!


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