見出し画像

文化人物録35(TOKU)

TOKU(ジャズフリューゲルホルン奏者・シンガー、2015年)
→管楽器奏者としてもシンガーとしても、日本ジャズ界を代表する存在。TOKUさんのフリューゲルホルンと歌声は柔らかいのに芯があり、まさにチェット・ベイカーのような無二の存在感を示している。実際にお会いした時も受け答えが丁寧で話もうまく、人気の理由がわかった気がした。

*フランク・シナトラのベスト・トリビュートアルバム発表

・シナトラの生誕100周年ということで、この節目にやるしかないと思った。初めてシナトラを聴いたのは大学1年生の頃だったが、その時はジャズに取り組むのは初めてだったこともあり、ムチャクチャスイングしてるなと思った。声やリズムが躍っていた。ジャズを感じさせてくれたのがシナトラです。

・シナトラの歌い方は、言葉を微妙にずらして歌っている点です。例えばI’ve got you under my skin なんかもそうです。毎回言葉の置き方やメロディを変えているし、しかも分かりやすい。マイルスデイヴィスもそうですが、当時のジャズメンはスタンダードを演奏する際、シナトラの曲を参考にしたはずです。

・シナトラのもう一つの特徴はディクション(歌唱の際の発音)の正確さです。発音がクリアなので、一つ一つの言葉が聴いている人に届く。言葉の微妙な違いというのは重要です。ナタリー・コールもライブで聴くと言葉の置きどころを意識し、微妙なリズムで歌っていましたね。

・シナトラはジャズだけでなくブルースも歌えますし、真のシンガーだと思う。シナトラが歌っていないスタンダードはないくらいで、僕もスタンダードを歌うときは必ず聴いている。というよりも、歌がシナトラに歌われることによってスタンダード化しているんでしょうね。My Way もフランス語の原曲を英語の詩で歌ったのはシナトラが初めてでした。

・自分が意識したのは、無理にシナトラに合わせるのではなく、オリジナリティを出すというか、あまりシナトラの歌い方を意識せずにやりました。ボーカルとトランペットの組み合わせというのはチェット・ベイカーですがチェットとかナット・キング・コールとか、マーク・マーフィーとか、いろいろ聴いたうえで自然に出るものを出した。できるだけ歌の中に没入して主人公になるようなつもりで歌いました。

・曲はMy Way と I’m A Fool To Want You 、それにStranger In The Night は必ず入れようと思った。ではどうアレンジするか。My Way は真逆に行こうと、ジブラさんにゲストで入ってもらった。クールにグルーヴしてましたね。その一方、 For Once In My Life などはテイストはほぼ一緒です。ビッグバンドの曲を入れたいというのもありました。

・エンディア・ダヴェンポートとは公式な共演歴はなかったのですが、セッションはやったことがあり、いつか共演したいと思っていた。飾らない人で歌も素晴らしかった。僕の音楽に広がりを持たせてくれました。今回のアルバムはいろんなゲストを呼んでますが、1曲ずつとっかえひっかえでやりたかった。シナトラがデュエットをたくさんやっていたので、羨ましかったんですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?