雪松図1280

いわきりなおとの国宝漫遊記 第9回「円山応挙 雪松図屏風」の巻

◎リアル表現で日本画に革命
  円山応挙「雪松図屏風」、北三井家旧蔵

 漫画家いわきりなおとさんが、江戸時代中期から後期の絵師円山応挙筆の国宝雪松図屏風(6曲1双、左隻、北三井家旧蔵)を紹介します。
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 応挙は、同時代の伊藤若冲や曽我蕭白といった「奇想」の画家たちに比べ、真面目な絵を描く画家という印象です。現代の若冲ブームに対し、応挙の人気は地味です。しかし、これは現代人から見た評価で、応挙が生きた時代では評価が逆転します。

 応挙が登場する前は、格好良くとか、豪華に見えるといった伝統的な型に当てはめた様式美の絵が多く、琳派や狩野派などが主流でした。輪郭線を用いて影はなく、平面的でデフォルメした表現です。

 一方、「雪松図」に輪郭線はありません。陰影で木の丸みを見せ、金粉で雪の反射光まで表現し、立体的で奥行きを感じさせます。伝統的な日本画にリアルを融合させ、革命的な表現を生み出したのです。

 江戸時代の人たちには、画面から雪の中に立つ2本の松が飛び出てくるような驚きがあったことでしょう。現代でいえば、CGやバーチャルリアリティーが登場したときの驚きに似ているかもしれません。

 奇想の画家たちの絵が、型を重視した日本画の到達点であるのに対し、応挙の絵は江戸時代の最先端アート。近代日本画の源流で、現代と地続きなのです。それゆえ現代人にはよくある日本画に感じ、若冲の絵が新鮮に映るのです。
(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 
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