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いわきりなおとの国宝漫遊記 第7回「運慶作 制多伽童子」の巻



◎仏像をリアルに進化

 運慶作、制多伽童子 和歌山・金剛峯寺

 漫画家いわきりなおとさんが、国宝八大童子立像のうち制多伽童子(和歌山・金剛峯寺蔵)を紹介します。
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 有名な仏師と言えば、多くの人が運慶の名を挙げると思います。他の仏師とどこが違うのでしょう? 私は、仏像はどれも同じような顔だと思っていましたが、運慶の作品を見て、一目でその良さが分かりました。

 運慶仏は、現実の人間のような表情で、今にも動きだしそうな肉体表現がとてもリアル。ポーズや見た目がかっこいい。まるでヒーローのフィギュアのようです。

 運慶が活躍する前の時代は、京の仏師・定朝の作風が大流行していました。曲線を多用したなめらかなデザインです。仏具店にあるような、穏やかな仏様を想像してもらうと分かりやすいと思います。

 運慶は、定朝スタイルで止まっていた仏像デザインの流れを、「リアル」という新しい表現で進化させました。時代も貴族中心の平安時代から、武士中心の鎌倉時代となり、力強い運慶スタイルが受けたのです。

 1197年頃に作られた制多伽童子は、運慶の初期の作品。張りのある子供らしい肉付きに加えて、水晶の板をはめ込む「玉眼」の効果で瞳が輝き、生き生きとした印象を与えます。

 運慶仏の素晴らしさは、リアルと神々しさを両立させていること。現代人にも外国の人にも、誰が見てもかっこいい仏像の秘密なのです。(談)

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 制多伽童子は、東京国立博物館平成館で開催中の特別展「運慶」で展示している。11月26日まで。

(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 
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