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[短編小説]さくらのしたのぼくのかのじょ~「王様とロバの耳亭にて」シリーズ

ホラー、恋愛?もの。ちょいグロ注意。人間怖い系。夢野久作先生風モノローグ小説(独白体)。


こんにちは……あの、こども、小学生ひとり、だいじょうぶですか。ダメですか?おかあさん、ママは、弟のおむかえでようちえんなのです。すぐきます。ここでまちあわせって。前にもいちど来たことがあるからって……え、てんちょうさん、ちゃんとママとぼくと弟のことおぼえてた?よかったぁ。えへへ。それじゃあね、んーと、んーと、ホットミルク、ください!

……ねぇ、てんちょうさん、さみしい?ぼくとおはなしする?だって、このお店、ぜんぜんおきゃくさん来ないもん。ぼくもうミルクはんぶんのんだのに。もうすこししたら人くる?帰りのつうきんじかんになったら?ほんと?ほんとかな?

あのね、ほんとうはぼくがね、おはなししたかったの。だから、きいてね。ないしょね。

ぼくね、じつはうまれかわりなの。むかしはやたろう、っていうなまえだったの。それでね、やたろうはね、おとなりのおそのちゃんがすごくすきでね、でもとなりの村のしんせきのおうちにおよめに行くってきいてね。ころしちゃったの。すごくね、やだったんだぁ。だからころして、おうちのうらのお山のさくらの木の下にうめたの。それでね、いっぱいかなしくて、やたろうも近くのたきつぼに落ちてしんだんだよ。

でも、ぼくは生まれかわっちゃったんだ。それでね、もしかしたらおそのちゃんもいっしょに生まれかわってるかもしれないよね?だからぼく、さがしにいこうと思うの。はるになってさくらがさくでしょ?そしたらね、その木の下にさがしにいくの。さくらいっぱいあるから、ほんとうはどこにいるか、ぜんぜんわかんない、こまる……。でもね、さがすの。たぶん、いちばんピンクいろのやつなの。わかるの。それでね、ぼく、おそのちゃんにね、「こんどこそぜったい、ずーっといっしょにいようね」っていうんだぁ。

ね、ないしょにしてくれる?ほんと?うそついたらだめなんだよ、てんちょうさん、はりせんぼんのむんだよ。……うん、やくそく、してね。ぜったいだよ。のんでね。

あっ、ママ。うん、ぼく、いいこだった。ちゃんとまってたの。えらい?うふふ。もうかえるの?あのね、ミルクののこりもうちょっとなの。まっててね。んん……手をあわせて、ごちそうさまでした!

ね、てんちょうさん、ぼく、おうち帰るね!またね!さくらがさいたら、また来るね!

ねぇママ、今日のばんごはんなあに?あのね、ぼくね、ハンバーグがいいな!まぜるの、おてつだいするの!わったら中のチーズでるやつね!あれね、何だかなつかしいきもちになるんだぁ。


[おわり]

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