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アブストラクトの中に垣間見える人情流れるようなバーコード読み取り

前回の日記に記憶を引き出すために精神力が必要であるということを書いたが、いよいよその日の出来事を引き出すのが難しいのは自分の展覧会の設営や場所のオープンが迫っているからでそちらに精神力を大きく削がれており普段出来ることが出来なくなっている。
忘れ物が多いなど。

美野島に行き、ショーケース型冷蔵庫と冷凍ストッカーを坂本さん前田くんに手伝ってもらいながら2Fに運び込み、ショーケースはかなりの重量だったため運送屋さんが見かねて手伝ってくれたのはありがたかった。

現場であれこれやりくりし疲れてふらふらと自転車をこいでマヌクジラにたどり着くと八女のうなぎの寝床さんのイベントが行われていて、壁にかかる絵を気にしながらカフェラテを飲んでいるとマヌの西岡さんがこちらに来てくれ、色々話すうちにその絵が西岡さんのものであることが分かる。
師匠のUzoさんからも世に出すべき時が来たと言われたとのことで、マーク・ロスコを目指した当初の意気込みもちゃんと練り込まれ師匠の技法をきっちり踏襲しつつ八女でのリサーチまでそのイメージに反映されており、これは立派なコンテンポラリーアートと言えそうだった。
すでに東京のコマーシャルギャラリーで展示したいとか言い出しており、それはギャラリーが決めることなので話してみればいいと思うが、アブストラクトの中に垣間見える人情、情感というのはジャパニーズペインターに顕著に見られる特徴だと思っていて、そこもちゃんと踏まえられているのはさすが前衛芸術のコレクターであって人が行き来するコーヒー屋の温度感なのかもしれなかった。
そういったことは一言も言わず、いつもみたいに楽しく話しているとてっぺくんが現れ、西岡さんが去っててっぺくんがこちらに気づき、そこから彼の多岐に渡る仕事の話を聞くなどする。

夜は川端の琥珀館でアメリカンコーヒーをすすりながら我らの会社の行く末について話し、自転車で帰宅したはずだが、その途中マックスバリュに寄った。

深夜のマックスバリュで近頃レジ打ちをしている店員さんは年の頃60代あたりだろうか。
いったいどこの老舗喫茶店あるいはハイヤー運転手あるいは浪曲師だったのだろうという男性はいらっしゃいませこんばんはというただ一言の美声で、その穏やかさと洗練された接客態度を感じさせ何か自分が高尚なものを買った気にさえさせてくれる。
流れるようなバーコード読み取りと会計への動作にひとつの淀みも感じさせず、かといってせかせかと急がせるようなものではなく眠そうでつっけんどんな客との応対も常にゆったりと上品だ。
一日の最後に言葉を交わす人が日常との解離なく世俗から一段高いような雰囲気を作ってくれているのは本当にありがたく、一日の出来事を肯定されている気持ちになる。

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