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ヨイショの男、惟光くん物語#1

今は今、

電子の板でよしなし言
あまたさぶらひける中、
一服な清涼剤になればと千年前に著作権が切れているので堂々と源氏物語の二次創作。という名の



振り切ったコメディを一作、投稿し奉りまする…



第一話、光と惟光


作者が鶴屋東館地下一階のアフタヌーンティールームに行くとそのカフェの一番奥で長烏帽子に直垂姿の高校生くらいの可愛い顔立ちをした男の子がぼ〜っとした顔でショートブレッドをかじっていた。

うん、テレビで見た葵祭とかいうお祭りの神輿だか御車だかの横に付いている…

いかにも貴族のパシり、って格好だ。

作者
「初めまして〜私、高校時代は漢和辞典がお友達の地味でぼっちな学生だった白浜です。あなたが…『そう』なんですね?」

???
「わかり易い格好で来てくれって言うから仕事着で来ました!取材に入っていいですよ」

作者
「解りました」
ICレコーダーのスイッチを入れる。

やあ、僕の名前は藤原惟光《ふじわらのこれみつ》、

ピッチピチの17才!



テキトーに自己紹介すると平安中期に生まれた中流貴族のせがれです。



って、おまえ藤原じゃん?

とゆー読者さんの心の声は聞こえてますよ。



ちっちっち。



平安中期の頃の藤原なんてねえ、

例えば朱雀大路の牛車の列に「藤原さんのお車は?」と呼びかければ従者のみんなが「うちの主に何か?」と立ち止まっていたくらい大勢いたんです!



僕の家は母が僕を妊娠中に親父が死んじゃって、兄貴は家族を食わせるために比叡山に入って坊さんになった…ってくらい暮らしは貧しかったんです。



もうすぐお産なのにどうすればいいの?

と困りきった母の元に飛び込んだのがとある貴族家の…



乳母兼ベビーシッター募集。

母子とも生活の面倒は見ます。



という口コミに縋って行った先が、



中流貴族の娘で当時15才の妊婦、桐壺更衣のご実家だったのです!



初めて桐壺更衣にお会いした母上は

あんなに可憐で儚げなお方がお産に耐えられるのだろうか?

と生活の心配なぞの俗を忘れる程の更衣の美しさを前に、一抹の心配を覚えた。



というのですが、それは3年後の更衣の早世で的中しまいます…



さて、僕が生まれて間もなく更衣は皇子さまをご出産なされますが、このお方こそが後に、



光源氏



と呼ばれる世に名高い貴公子にお成りあそばされる赤さまなのです。



光ががやくような美しい赤さま。と乳母はじめ、更衣に仕える下働きの娘までそう呼ぶものだから、



皇子さまは「光」と成り行きで名付けられました。



僕の名の惟光の「惟」を漢和辞典で引くと、「ふるとりにりっしんべんを付けて使者」と言う意味にも取れる、



光の使者。



という意味で僕は惟光と名付けられたのです。



作者

「なる程…光源氏があなたを誰よりも信用している訳は、お母さんの桐壺更衣の代から主従関係は出来上がっていたんですねえ」



惟光

「まあそういう事です。あ、紅茶をおかわりしましょうか?

ギャルソンさん、彼女にダージリンのオータムナムル(秋摘み)のミルクティーを」



作者

「そういう所はあんた貴族なんですね

(ー_ー;)」



従三位公卿になる男、藤原惟光の、理不尽あふれる貴族社会をヨイショでのし上がる物語は次回から始まる。

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