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「スター・ウォーズ:エピソード5 帝国の逆襲」のタイムライン

昨年6月の『「スター・ウォーズ:エピソード4 新たなる希望」のタイムライン』からコツコツ進めて来たものがまとまりました。1980年公開(日本では1981年)の「帝国の逆襲」のタイムラインを辿ります。古い作品ですが結末までのあらすじ全て書いてますのでご注意下さい。

エコー基地内の「警告シールがある扉」の中にワンパが閉じ込められており
侵入した帝国軍が開けて襲われる一連の未公開シーンがあります。
このエピソードは短編アニメ「フォース・オブ・デスティニー」でも描かれています。

前作の砂漠とは大きく異なる氷の惑星で物語が開幕。撮影地はノルウェーです。
反乱軍兵士となったルークは中佐になっており、時間経過を表しています。正史の設定ではヤヴィンの戦いから3年目。ソロは何だかんだ反乱軍と行動を共にしていたようですが、賞金稼ぎに狙われていい加減借金返済のため離脱を表明。これをめぐるレイアとのやり取りでお互い素直になれない二人の距離感が描かれます。

冒頭のトーントーンのストップモーションにはゴーモーションという動く物体のブレを再現する技術に加えて、空撮映像に合成するなど当時としては超絶的な特撮技術が用いられています。ILMはまさに魔法の工房でした。

N64「帝国の影」のホス戦は大興奮した世代です。
SWBF1&2のウォーカーアサルトも最高。

ホスの戦いにおける帝国軍の目的は、反乱同盟軍の基地が対航空攻撃のために展開しているシールドを発生させている設備の破壊です。ゆっくり動くものはシールドを通過できるためウォーカーで領域に入り、同時に歩兵を運んで侵攻しています。

ホスの戦いを経て、中盤は「洞窟」というシチュエーションを舞台にキャラクターたちがそれぞれの内面と向き合う様子が描かれます。旧約聖書のヨナ書や古事記の根堅州国訪問に描かれるような英雄たちのイニシエーションのフェイズです。
一方、皇帝の前に奴隷として傅くベイダーは、ルーク抹殺の命令に対して別の手段を提示。以降の展開の伏線となります。

パルパティーンのビジュアル修正に際して台詞も変更されている。
ヨーダとルークの師弟像には「姿三四郎」の影響も感じられる。

明確化されていませんが、ルークのダゴバでの修行は短く見えますが、かなり長期間に及んだと推測します。カットバックするソロとレイア達のベスピン星系への移動の様子は、ファルコンのハイパードライブが故障したままであることからとても時間が掛かっていると考えられるためです。ボバ・フェットの報告により帝国軍が先回りできたのもそれが理由でしょう。
スター・ウォーズはテンポを優先しているせいか作品内の時間経過が若干解りづらいところがあります。

うちの子供には8歳頃に公開順で見せましたが衝撃を受けてました。
やっぱり公開順に観るのが一番オススメです。

監督を依頼したのはルーカスの恩師アーヴィン・カーシュナーでした。脚本はSF作家リイ・ブラケットが初稿を執筆。しかし彼女が癌で亡くなってしまったためルーカスが引き継ぎ、最終的に「レイダース」のローレンス・カスダンがまとめます。

ランド役のビリー・ディー・ウィリアムズは前作には居なかった初のアフリカ系アメリカ人俳優として重要なキャラクターを演じました。またボバ・フェットをはじめ今も愛される賞金稼ぎ達など多様なキャラクターが新たに追加。
雪原で繰り広げられるウォーカーとスピーダーによる派手な地上戦や、パペットとは思えない重みのある芝居を見せるヨーダなど、今作もビジュアル面の見所が多い作品となっていますが、何よりも画期的だったのは物語の途中で映画が終わるという事でした。ファンはその後3年待つ事になります。

製作関係者の数人しか知らなかったというダース・ベイダーの正体については、ルーカスがどの時点で設定を固めたのかは諸説有り現在も不明確です。
個人的には本作制作段階の思いつきではなく、ルークのキャラクター像がもともとアニキン・スターキラーから生まれた事に加えて、神話学や宗教学に影響を受けていた第1作草稿の段階から「父親殺し」の神話アーキタイプをサーガに盛り込もうとしていた可能性は大きいのではないかと推測します。

追記②:
「スター・ウォーズ ウェブログ」の記事によると、初稿ではリィ・ブラケットがアナキンを霊体として登場するとしていたものを、第二稿でルーカスがベイダーの正体として父親にしたとのことで、事実なら1978年の春頃〜に決定となります。

追記①:
「アート・オブ・スター・ウォーズ」シリーズの著者として知られるフィル・ショスタク氏のミスバスター投稿を発掘しました。

『「ダース・ベイダー」はドイツ語(もしくはオランダ語)の「暗黒の父親」からというのは間違い』という投稿ですが、これによれば『新たなる希望』の初期草稿における「ベイダー将軍」というキャラクター名候補リストの一つが「ダース・ベイダー」の起源であり『帝国の逆襲』の2稿の段階でルークの父親という設定が与えられたとのことです。ちなみに「ダース(Darth)」はオランダ語でもドイツ語でも意味をなさないとのこと。個人的には「ダース」に関してはルーカスはキャラクターや特にドロイドの名前など音の響きで決める傾向があり、単にそうした由来なのではないかと推察します。「Dark Lord of the Sith(シスの暗黒卿)」を略して「Darth」という設定もあるようですが、それについては現在はレジェンズの枠にある2003年のゲームが発祥の後付けのようです。(追記ここまで)

1997年の特別篇に際しての追加修正としては、クラウド・シティの都市景観の差替えが大きかったと思います。個人的にはオリジナルのマットペイントはいまいち出来が悪く書き割り感が強かったので特別篇での改修で一番好きな部分です。
ちなみに2015年発売のゲーム「バトルフロント」では詳細にクラウド・シティが造形されており、プレイして以降は映画におけるキャラクターの移動距離やそれぞれの位置関係など何となく土地勘を伴って見れるようになってしまいました。

更に2004年のDVD発売では新三部作との整合を取るため皇帝にまつわる変更と、ボバの声もテムエラ・モリソンに変更されました。

ベイダーの皇帝とのやりとりはルークとの対決時の台詞と対応する形に。

細かい部分では「知ってたさ(I know)」のカットでソロの衣装が違っていたのが修正されています。修正前のそれは「何度も撮り直した」や「名セリフはリハーサルのアドリブ」などの証言に繋がる貴重なミスだったかもしれません。

80年代に話を戻しますがこの作品を経てルーカスとスピルバーグの黄金時代へ。
次は「エピソード6 ジェダイの帰還」のタイムラインを辿ります。


主な参考文献はこちら


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