読書『針がとぶ』吉田篤弘著

吉田篤弘さんは私が好きな作家さんの1人です。
他の作家さんの作品ではなかなか出会えない不思議な空気感、余韻の残る読了感が好きです。
この作品は、7つの物語が収録されていますが、それぞれの物語が、思わぬところで繋がり合っています。ひと通り読んでからも理解が不十分な気がして、すぐに2回目を読み始めてしまいました。初回は通勤時に少しずつ読みましたが、2回目は一気読みです。
ところが、本作品内に3回も出てくるキーワードがまだよく分からず、、、。さらに3回目に(笑)
具体的には翻訳家の彼女(叔母)の日記に出てくる「彼のポケットから覗いていた極彩色」の「小さな布きれ」の部分です。「極彩色の布きれ」を持つ彼とは誰なのかが分からず、最初はバリカンかと見当をつけて読み直したが何か違う。手書きでまとめた人間関係やキーワードを眺めながら、作品をパラパラとめくっていたら、自分の読み間違えに気付きました。老眼のためか、叔母の日記にある彼についての記述「鳥の生まれ変わり」の部分を「島の生まれ変わり」と読み間違えていたことに(笑)。日記には「彼は鳥の生まれ変わりだったのだと。いまさらながら気づいた」とあり、そういえば、彼女がかつて一緒に暮らしていた絵描きが後々描いた「自画像」が「白い鳥」であったではないか、と。
繰り返し読んだことで、初回では気づけなかった登場人物の様々な接点にも気付き、この物語を存分に楽しみました。

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