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下田最前線⑨人口減の時代の指標

 下田という地方の町のみならず、日本全体が人口減の時代だ。
 そんな中で、「発展」というか、目標値として人口増を掲げてきた行政は、ちょっと困り果てている。
 一昨年、下田市の総合計画審議会の中で、市側がどうしても人口増にこだわるあまり、統計を捻じ曲げてというか、曲解に近いような数値を出してきて、これを指標にできないかと言ってきた。
 僕は審議委員を務めていたのだが、さすがに同意しかねた。どう考えても、人口減の予想値が出ており、市長方針ですら、人口減時代の中の施策が、どんな分野においても前提となっている。
 しかしこれまで、高度経済成長期からずっと人口増を、国づくりの発展の基礎においてきた行政としては、方向転換がうまくできないのである。思考が硬直し、前に進むことができない。
 これが停滞を生み、地方の弱体化に拍車をかけてきたきらいすらある。
 では、どのような指標を持ったらいいのだろうか?
 その時は、予想値をそのままに明確な指標を立てられなかったが、後々、うつらうつら考え、また空き家バンクや移住促進というNPO事業の中で、にわかに注目するようになってきたのが、転入増という指標であった。
 下田で数十年ぶりに転入が転出を上回ったのは2年前のこと。
「これも、下田市とNPOの協働事業の成果だね!」と市の担当者と喜びあった。
 以来、少しずつ転入増が上回る月が『広報しもだ』で発表されるようになり(写真)、NPOスタッフ間で、社会事業の成果が上がった充実感を味わっている。しかもそれが今年に入って、たぶん半分以上の月で転入増が上回っているのだ。
 世界では、人口減と人口増、先進国と発展途上国の間で、人の行き来がさらに頻繁になっている。日本では、中国人を筆頭に、ベトナム人とネパール人が増えているという。
 まだ下田に外国人の波は大きくないが、それでも都市からの人の流入が目に見えて増えているのは、時代の流れなのだろう。
 転入増をこれからの市政の指標にするのはどうなのか。
 そのために積極的な施策と予算配分を行い、新しい町づくりや新事業、雇用の創出を考えるのだ。
 この20年間、動かなかった地方の小さな町でも、新しい胎動を感じつつある。

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