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「別れよう」 言った瞬間、自分で自分の心臓の裏側に、包丁を突き立てたような気になった。…
赤い血が目の前に溢れた。ぬぐってもぬぐっても消えない記憶。いや、忘れたくなかった記憶。…
「やめるな」 続けろ、と僕は思った。 「ずっとしてろよ。僕のことなんて忘れてるんだろ」 「…
辰川は不毛な上にも不毛は場所だった。少なくとも僕の人生の大部分において。リンとであった…
辰川二中は分校のような形式の中学だった。僕たちが子供の頃は辰川は今よりもずっと生徒数が…
「それじゃあ、裏切られたのは君だけじゃないのか」 右京さんの声はまだ怒っていた。でも、…
え、と言って右京さんは缶から口も顔も離して僕の方を見返った。僕の初恋の人だ。あまりにも、哀しい思い出の中に居た人だ。なぜ今現実の中に居るんだろうか。僕はその訳を知りたい。何とかして知りたい。 「いつの話しをしているんだい」 「中学の同級生ですよ。こいつはちっとも変わらない。このまんまです。昔からこのくらいきれいだった。ちっとも変わらない」 僕は静かな寝息を立てているリンの生え際を少しかき上げた。リンは僕の方を向いて眠っていた。 「どんな初恋だったんだい」 右京さんは、僕
「じゃあ結局もうすぐ三十じゃないか」 「日尾さん。もう寝ませんか。明日も仕事ですよ。着替…
「恥ずかしながら」 仕方なくそう言った。 「じゃあ決まり。うちに来てください。帰りは車で…
僕がそう話すと右京さんは爆笑した。これでもかというほど大爆笑した。公営住宅は壁が薄い。…
「君は嫌われ者だったよ」 「ひどい」 「酷いも何も、事実なんだから仕方ないだろ。君は学校中…
「お前が言うとみんな嘘に聞こえる。だいたいなんだよ、天女の羽衣って。そこからして嘘だろう…
「死ぬなら日尾に殺されたいのよ」 「僕はお前なんか殺すの嫌だね」 僕たちはそんな会話を交…
「おはようございます」 と言うとまばらな声がおはよう、と言ってくれる。 「今日もよろしくお願いします」 と言ってバックヤードに小走りしていると、リンはまだ職場にやってきてないようだった。この図書館のバイトにはタイムカードが無く、出勤したら名札をひっくり返すだけのありがたいシステムだ。一時間遅く出て来て一時間長く働いても、時給は変わらない。 遅刻というものは僕の職場では、何の意味も持っていなかった。だからリンも堂々と遅刻してきているのだろう。僕以外の二人のバイトも、そうや