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知覚過敏

 今週は知覚過敏についてご紹介したいと思います。
 冷たいものを飲んだり食べたりするとキーン、甘いものを食べるとズキッ、このような経験をお持ちの方も多いかと思いますが、その原因は知覚過敏です。
 知覚過敏は、一過性の痛みと思われがちですが、実はむし歯の初期症状ともとてもよく似ているほか、歯が欠けたり、削れたり、酸っぱいものの摂り過ぎで酸蝕症になったりして歯が溶けてきている時にも起きる症状なので知覚過敏だといって放置すると危険です。気づかないうちに歯が傷んでいることもあるので、歯がしみると感じられたらすぐに歯科受診をするようにしてください。
 このしみる症状は、歯の表面を覆っているエナメル質が欠けたり、割れたり、削れたりして象牙質がむき出しになって刺激が神経に伝わることで起きる症状です。象牙質には象牙細管という細かい管が神経と繋がっていて冷たい、熱い、甘いなどの刺激がキーンという痛みとして感じられると考えられているそうです。


 ただ、象牙質がむき出しになっていてもしみない方がいらっしゃいます。象牙質の表面にスメア層(歯を削った際に出る切削片が、象牙質の象牙細管に詰まることによって形成される層)という層ができたり、唾液の成分などが結晶化(再石灰化)したりすると、歯の成分で管状の穴が塞がることで神経への伝達が遮断されることでしみるという感覚を感じなくなります。
 歯が削れるほど強く歯を磨いたり、夜中に歯ぎしりをしたりしているとスメア層や再石灰化層が剥がれ知覚過敏を引き起こすので、歯磨きの仕方や歯ぎしりをしているかなど歯科で調べてもらうようにしてください。いずみ中山歯科では、検診や歯磨き指導も行っていますので、歯がしみると感じた方はお気軽にスタッフまでお声がけください。
 知覚過敏の「しみる」という痛みを感じる原因は様々です。対策を講ずるためにも原因を知らねばなりません。さて、その原因ですが、普段の生活習慣で無意識に行ってしまっていることが原因になっていることも多々あります。次のようなことを行っている方は改善を検討していきましょう。
 1点目は歯ぎしりや食いしばり。歯ぎしりや食いしばりは歯に過剰な力をかけてしまい、歯のヒビ、欠け、咬耗、詰め物や被せ物の損傷の原因になります。ただし、どちらも無意識に行ってしまう行為なのでご自身では気づけません。口腔内にその痕跡があるかないか歯科医院で診てもらうようにしてください。
 2点目はゴシゴシ歯みがき。ゴシゴシと強い力で歯を磨いてしまうと逆に歯を摩耗させたり歯ぐきを痩せさせたりしてしまいます。どのくらいの力で磨けば良いか分からないという方は歯科医院で歯磨き指導を受けるようにしてください。
 3点目は歯みがき不足。歯みがきをしないことで歯につく歯垢(プラーク)の中にむし歯菌が作った酸が溜まってスメア層や再石灰化層を溶かしてしまいます。やさしく丁寧に磨くことを心掛けてみてください。
 4点目は酸性の飲食物。熱中症対策やスポーツ時の水分補給によく飲まれるイオン系飲料やスポーツドリンク、健康のためにと柑橘類やお酢ドリンク、酢の物はいずれも酸性度が高く全身の健康、体調管理にと思われても歯には悪い影響も出てしまいます。特にこれらを摂取後、あまり時間を空けずに歯を磨いてしまうと歯が擦り減りやすくなります。歯のためにも歯科医院で食事指導を受けてみてください。
 5点目はヤニ取り歯みがき。ヤニ取り歯みがきは研磨力が強く、ステイン除去機能が高いものがありますが、同時に研磨剤がたくさん入っていて歯まで削ってしまうこともあります。着色が気になる方はご自身で歯磨剤を選ばず、歯科医院で相談するようにしてみてください。
 最後6点目は口腔内の乾燥。持病の薬で口腔内が乾燥してしまうという方もいらっしゃるかと思います。薬の副作用で唾液成分が減ると、歯の再石灰化やスメア層の形成がスムーズに行えません。唾液の分泌を促す唾液腺マッサージなども詳しくお伝えできるので、歯科医院で指導を受けてみてください。
 このように知覚過敏の原因となる行動は日常生活に密接しているものが多くあります。軽い知覚過敏だとこれらの癖や生活習慣を改善するだけでも治ることがあります。歯がしみると感じたら、まずは歯科医院に相談して、少しでも知覚過敏のリスクを軽減できる行動を心掛けるようにしましょう。
 さらに、知覚過敏の「しみる」という痛み症状はむし歯の初期症状のほか色々な歯の病気の初期症状にも似ているので、その原因を特定しなければなりません。しみるという知覚過敏の症状は歯の神経で起きる炎症の初期症状にも似ているので、すぐに「「知覚過敏です」と診断するのは難しい症状です。
 診察でもレントゲン検査でもはっきりとした原因が分からない場合、問診で確認した生活習慣の問題を改善し再石灰化を促して自然治癒を待つこともあります。また、試しに無色透明のコート剤で歯を覆って知覚過敏の症状が治まるか経過観察します。
 知覚過敏であれば先に述べた知覚過敏のリスク(6点)に気付いて歯みがきや飲食物に気を付けるだけで自然治癒することもあります。
 コート剤を塗布してしみる症状が治まれば、歯の内部の炎症は軽く、外部からの刺激によって症状が起きていることが確認できます。
 コート剤を塗布しても症状が治まらなければ歯の内部で比較的強い炎症が起きている可能性も想定して治療に当たる必要があります。この場合は象牙質をレジンという歯科材料で覆ったり、古い詰め物をはずして詰め直したりして、考えられる原因に対して軽い治療から順に試していき、最終的には神経を抜いたり抜歯したりすることが必要になることもあります。
 知覚過敏は「歯がしみるだけ」とお思いの方も多くいらっしゃるかもしれませんが、実は知覚過敏ではないことも多々あり、色々な原因を確認しながら治療を進めていくため、すぐに治るというケースばかりではないことをお知り置きください。


 知覚過敏の症状があると歯ブラシの毛先が当たっても痛いという方もいらっしゃり症状のある歯の周辺の歯みがきを避けてしまうこともあるかと思います。しかしこれでは知覚過敏の症状を改善させるには逆効果です。歯についた歯垢(プラーク)を取り除かないと中に棲むむし歯菌が作る酸で歯を覆っているスメア層や再石灰化層を溶かしてしまい、知覚過敏の症状が助長させてしまうことがあります。
 しみてしっかりと歯みがきができない時は、適切な歯みがき方法を教わって実践してみてください。いつの間にか症状が落ち着いてくることもあります。
 また、一時的に歯ブラシをソフトタイプに替えたり、それでもつらい時は歯間ブラシやフロスなどの補助用具だけは続けたり、それもつらい場合はガーゼで拭くなどして少しでも清潔を保つようにしましょう。
 知覚過敏の症状がつらい時はコート剤を塗って症状を抑えてから歯みがきできるようにするなど歯科医院では様々な対策を講じることができるので知覚過敏の症状がつらく歯みがきがしにくい方はまずは歯科医院を受診するようにしてください。
 いずみ中山歯科でもコート剤の塗布など知覚過敏への処置や歯みがき指導を行っていますので、歯がしみるとお感じの方はお気軽にスタッフまでお声がけください。
 これまで知覚過敏は、「歯がしみるだけで歯の中で炎症は起きていない」と考えられていましたが、最近は「しみるという症状があるということは神経が興奮しているのだから軽度で自然治癒するような症例でも歯の中に何らかの炎症が起きている」と考えられるようになってきたそうです。こう考えることで知覚過敏に即効性のあるコート剤を塗って刺激を遮断してもしみる症状が消えるまでに数週間かかることがあることも説明がつくとのこと。
 軽度の知覚過敏で主に象牙質への刺激で痛みが出ている場合、刺激を遮断したとたんに痛みは消えるはずですが、実際にはしみる症状がしばらく続くことがあります。歯科での治療で即効性を期待していた患者様は落胆されるかもしれませんし、治療が上手くいかなかったのではと心配になられるかもしれません。知覚過敏はほんの軽い病気だと思われている方も多くいらっしゃるかと思いますが、治癒までには時間が掛かることも多々あります。すぐに効果が出ないことで歯科への不信感にも繋がってしまいますが、知覚過敏といっても歯の内部では炎症が起きているということを知っていただいて、治療には時間が必要であることを認識していただければと思います。
 ただ、しみる症状の原因をつきとめられれば、逆に病気の悪化を早期に防ぐことができるとも言えます。歯がしみると感じたら、まずは歯科医院に連絡して診てもらうようにしてください。しみる症状は本当の知覚過敏かもしれませんし、歯ぎしりなどで歯が痛んでいるのかもしれませんが、しみるという症状は歯の異常のサインなので放置しないようにしてください。

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